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第5球「新チーム 二」
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「おーい京子ー! 今日合奏だから早くしないとー!」
「あ、ゴメン、奈津美。今行く!」
約10分間に及んだ死闘は、背中に楽器ケースを担いだ奈津美の一声によってあっさりと幕引きとなった。
「とにかく、アンタに蓮きゅんは渡さないから!」
「うるせぇ、さっさと行けや」
最後にそう言い残すと、京子は奈津美を追いかけ走り去っていった。嵐のような女だ…。
「クッソ、なんか練習する前から無駄に疲れた…」
アイツは相葉京子。あの日ドッジボールで泣かせてから目の敵にされている。
「恋愛小説とかなら普通俺とのフラグが立つとこなのに、なんで蓮の方なんだよ…」
頭をかきながらそう呟くが、時計を見るとすでにそんなことを言っている余裕はないことに気づき、慌ててグラウンドへと走って行った。
「あ、やっと来た」
「オイ、遅えぞ!」
「わりぃ蓮、ギン。またアイツに捕まっちまって」
「またやってたのかよ……」
ギンにまで呆れられる。あの嵐女め……。
「もうすぐ来週の紅白戦のメンバー発表だってさ。特に僕たち1年生にとっては、ベンチ入りをかけた大事なアピールの場だから頑張らないと」
先週の夏の県大会準決勝にて、俺たち南武学院高校は敗退した。それにより今の3年生たちは引退となり、今日が新体制での初練習というわけだ。
「今年の2年生は13人しかいないからな。1年でも5人はベンチ入りできるってわけだから、紅白戦にむけて気合い入れてかねぇとな」
そう話すギンはいつもより頼もしく見えた。ギンは昔からデカかったが、高校に入ってからよりいっそう鍛え上げられた肉体は、もはや喧嘩を売ったら殺されそうなレベルにまで仕上がっていた。
「あ、岡野先生来たよ」
蓮の指す方向からは、無精ひげをうっすらと生やした中年男性が、やる気なさそうにあくびをしながら歩いてくるのが見えた。あんなんでも我が野球部の顧問だ。手には何やらプリントのようなものを持っている。
「おーい、お前らー! 部室の掲示板に貼っとくから見とけよー!」
それだけ言い残すと岡野は帰っていってしまった。
「相変わらずやる気有るのか無いのかわかんねぇな…」
「試合中とかは人が変わったようなんだけどね」
俺は、ギンと蓮が少し呆れたように話しているのを遮るように被せて言った。
「そんなことより、掲示板!早く見に行こーぜ!」
「あ、ゴメン、奈津美。今行く!」
約10分間に及んだ死闘は、背中に楽器ケースを担いだ奈津美の一声によってあっさりと幕引きとなった。
「とにかく、アンタに蓮きゅんは渡さないから!」
「うるせぇ、さっさと行けや」
最後にそう言い残すと、京子は奈津美を追いかけ走り去っていった。嵐のような女だ…。
「クッソ、なんか練習する前から無駄に疲れた…」
アイツは相葉京子。あの日ドッジボールで泣かせてから目の敵にされている。
「恋愛小説とかなら普通俺とのフラグが立つとこなのに、なんで蓮の方なんだよ…」
頭をかきながらそう呟くが、時計を見るとすでにそんなことを言っている余裕はないことに気づき、慌ててグラウンドへと走って行った。
「あ、やっと来た」
「オイ、遅えぞ!」
「わりぃ蓮、ギン。またアイツに捕まっちまって」
「またやってたのかよ……」
ギンにまで呆れられる。あの嵐女め……。
「もうすぐ来週の紅白戦のメンバー発表だってさ。特に僕たち1年生にとっては、ベンチ入りをかけた大事なアピールの場だから頑張らないと」
先週の夏の県大会準決勝にて、俺たち南武学院高校は敗退した。それにより今の3年生たちは引退となり、今日が新体制での初練習というわけだ。
「今年の2年生は13人しかいないからな。1年でも5人はベンチ入りできるってわけだから、紅白戦にむけて気合い入れてかねぇとな」
そう話すギンはいつもより頼もしく見えた。ギンは昔からデカかったが、高校に入ってからよりいっそう鍛え上げられた肉体は、もはや喧嘩を売ったら殺されそうなレベルにまで仕上がっていた。
「あ、岡野先生来たよ」
蓮の指す方向からは、無精ひげをうっすらと生やした中年男性が、やる気なさそうにあくびをしながら歩いてくるのが見えた。あんなんでも我が野球部の顧問だ。手には何やらプリントのようなものを持っている。
「おーい、お前らー! 部室の掲示板に貼っとくから見とけよー!」
それだけ言い残すと岡野は帰っていってしまった。
「相変わらずやる気有るのか無いのかわかんねぇな…」
「試合中とかは人が変わったようなんだけどね」
俺は、ギンと蓮が少し呆れたように話しているのを遮るように被せて言った。
「そんなことより、掲示板!早く見に行こーぜ!」
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