上 下
52 / 58
「首無し魔王」対「悪役令嬢」

超兵器の復活

しおりを挟む
 闇夜を切り裂く蒼き軌跡。ワイズマン家の空飛ぶ船は加速し、一線に魔王が逃げ込んだ王都郊外へと飛んだ。
「追いついたぜ。一時《いっとき》、街で休んでたのが嘘みてぇだ!」
 年甲斐もなく大声をあげて騒ぐガストン。彼のバタバタさせていた手足にヒンヤリとしたものがつけられた。見るとメイドが金色こんじきの腕輪、足輪を取り付けているのだった。輪にはそれぞれ文字のようなものが彫り込まれている。
「なんだ、こりゃ?」
「はしゃぎすぎの老人には手枷と足枷を――」
 オリヴィアが喋りはじめ、ガストンは驚いて彼女の顔を見る。
「――と、そういうわけではないのでしてよ。これから、ワイズマンの家宝をあなたに託さねばなりません。本当は私が自分で成し遂げたいのです。でも、あいにく私は立ち回りは得意ではありませんの。よろしくお願いいたしますわ」
 オリヴィアが喋り終わると同時に、ガストンが立っていた大理石の床が抜け、真っ暗な穴が出現した。
 叫びをあげながら落ちていくガストン。しかし、落ちるにしたがって穴の底は緑色の光で照らされて、落下速度は弱まっていった。
 ガストンはふわりと金色の小さな椅子に腰掛ける形で着地した。立ち上がろうとすると座面だけががついてくる感触があり、目で確かめようとして後ろを振り向くと、そこに見たことのある顔があった。機械仕掛けの美少年、イースである。
「飛行制御と火気管制は僕が担当しますので、格闘戦はよろしくお願いします」
 彼は右手をあげ、笑顔で挨拶した。
「よろしくって言われてもな、どうよろしくすりゃいいんだ。だいたいこれは何なんだ?」
 ガストンは意味がわからない。不安にかられて右手を伸ばすと、そこに長年馴染んでいるものの感触を感じた。オリハルコン製の槍である。
 そのとき、頭上からオリヴィアの声が響いた。
「はい。よくできました。それで、いつもどおり戦っていただきます。作戦が長時間に及ぶ場合は座って安めもしますわ。大丈夫。難しいことはうちの子がやってくれますから。槍に専念してればよろしいのです」
「だから、これはなんだって聞いてんだよ!? 何かの道具らしいけどよ」
 手足につけた装飾品じみたものを打ちつけてガストンは言う。
「おやめになって、それは制御用の精密部品です」
 言い方は優しかったが強い語気でオリヴィアは言った。そろそろ短気な性分が表に出てきたようだ。
「ガストン、あなたは、当家の家宝である超兵器、巨大機械人形『ダンガル』の操縦席にいるのですわ。あなたが見たものをダンガルが見る。あなたが動けばダンガルも動く。そういうことですわ」
「意味わかんねえよ…」
「巨大機械人形は星の世界の産物です。この世界には似たものがありませんの。動かしてみるしかございませんわ」
 オリヴィアがそう言うと、ガストンの目の前にあった壁が薄れ、空が映し出された。足がふらふらとして落ち着かない。見てみると金色の脚があった。これがダンガルの脚ということか。そして脚の間に魔王の姿があった。ダンガルは魔王の直上にいた。高所恐怖症がぶりかえしてきてガストンは思わず両脚をしっかとつけ、自分の肩を抱える。その動きはそのままダンガルの動きとなった。
「切り離します」
 メイドが小さく言う。その声とともに、銀色の宇宙船から金色の機械人形は切り離され、ガストンの悲鳴と、イースの笑い声とともに魔王めがけて落下していく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

処理中です...