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「首無し魔王」対「悪役令嬢」
超兵器の復活
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闇夜を切り裂く蒼き軌跡。ワイズマン家の空飛ぶ船は加速し、一線に魔王が逃げ込んだ王都郊外へと飛んだ。
「追いついたぜ。一時《いっとき》、街で休んでたのが嘘みてぇだ!」
年甲斐もなく大声をあげて騒ぐガストン。彼のバタバタさせていた手足にヒンヤリとしたものがつけられた。見るとメイドが金色の腕輪、足輪を取り付けているのだった。輪にはそれぞれ文字のようなものが彫り込まれている。
「なんだ、こりゃ?」
「はしゃぎすぎの老人には手枷と足枷を――」
オリヴィアが喋りはじめ、ガストンは驚いて彼女の顔を見る。
「――と、そういうわけではないのでしてよ。これから、ワイズマンの家宝をあなたに託さねばなりません。本当は私が自分で成し遂げたいのです。でも、あいにく私は立ち回りは得意ではありませんの。よろしくお願いいたしますわ」
オリヴィアが喋り終わると同時に、ガストンが立っていた大理石の床が抜け、真っ暗な穴が出現した。
叫びをあげながら落ちていくガストン。しかし、落ちるにしたがって穴の底は緑色の光で照らされて、落下速度は弱まっていった。
ガストンはふわりと金色の小さな椅子に腰掛ける形で着地した。立ち上がろうとすると座面だけががついてくる感触があり、目で確かめようとして後ろを振り向くと、そこに見たことのある顔があった。機械仕掛けの美少年、イースである。
「飛行制御と火気管制は僕が担当しますので、格闘戦はよろしくお願いします」
彼は右手をあげ、笑顔で挨拶した。
「よろしくって言われてもな、どうよろしくすりゃいいんだ。だいたいこれは何なんだ?」
ガストンは意味がわからない。不安にかられて右手を伸ばすと、そこに長年馴染んでいるものの感触を感じた。オリハルコン製の槍である。
そのとき、頭上からオリヴィアの声が響いた。
「はい。よくできました。それで、いつもどおり戦っていただきます。作戦が長時間に及ぶ場合は座って安めもしますわ。大丈夫。難しいことはうちの子がやってくれますから。槍に専念してればよろしいのです」
「だから、これはなんだって聞いてんだよ!? 何かの道具らしいけどよ」
手足につけた装飾品じみたものを打ちつけてガストンは言う。
「おやめになって、それは制御用の精密部品です」
言い方は優しかったが強い語気でオリヴィアは言った。そろそろ短気な性分が表に出てきたようだ。
「ガストン、あなたは、当家の家宝である超兵器、巨大機械人形『ダンガル』の操縦席にいるのですわ。あなたが見たものをダンガルが見る。あなたが動けばダンガルも動く。そういうことですわ」
「意味わかんねえよ…」
「巨大機械人形は星の世界の産物です。この世界には似たものがありませんの。動かしてみるしかございませんわ」
オリヴィアがそう言うと、ガストンの目の前にあった壁が薄れ、空が映し出された。足がふらふらとして落ち着かない。見てみると金色の脚があった。これがダンガルの脚ということか。そして脚の間に魔王の姿があった。ダンガルは魔王の直上にいた。高所恐怖症がぶりかえしてきてガストンは思わず両脚をしっかとつけ、自分の肩を抱える。その動きはそのままダンガルの動きとなった。
「切り離します」
メイドが小さく言う。その声とともに、銀色の宇宙船から金色の機械人形は切り離され、ガストンの悲鳴と、イースの笑い声とともに魔王めがけて落下していく。
「追いついたぜ。一時《いっとき》、街で休んでたのが嘘みてぇだ!」
年甲斐もなく大声をあげて騒ぐガストン。彼のバタバタさせていた手足にヒンヤリとしたものがつけられた。見るとメイドが金色の腕輪、足輪を取り付けているのだった。輪にはそれぞれ文字のようなものが彫り込まれている。
「なんだ、こりゃ?」
「はしゃぎすぎの老人には手枷と足枷を――」
オリヴィアが喋りはじめ、ガストンは驚いて彼女の顔を見る。
「――と、そういうわけではないのでしてよ。これから、ワイズマンの家宝をあなたに託さねばなりません。本当は私が自分で成し遂げたいのです。でも、あいにく私は立ち回りは得意ではありませんの。よろしくお願いいたしますわ」
オリヴィアが喋り終わると同時に、ガストンが立っていた大理石の床が抜け、真っ暗な穴が出現した。
叫びをあげながら落ちていくガストン。しかし、落ちるにしたがって穴の底は緑色の光で照らされて、落下速度は弱まっていった。
ガストンはふわりと金色の小さな椅子に腰掛ける形で着地した。立ち上がろうとすると座面だけががついてくる感触があり、目で確かめようとして後ろを振り向くと、そこに見たことのある顔があった。機械仕掛けの美少年、イースである。
「飛行制御と火気管制は僕が担当しますので、格闘戦はよろしくお願いします」
彼は右手をあげ、笑顔で挨拶した。
「よろしくって言われてもな、どうよろしくすりゃいいんだ。だいたいこれは何なんだ?」
ガストンは意味がわからない。不安にかられて右手を伸ばすと、そこに長年馴染んでいるものの感触を感じた。オリハルコン製の槍である。
そのとき、頭上からオリヴィアの声が響いた。
「はい。よくできました。それで、いつもどおり戦っていただきます。作戦が長時間に及ぶ場合は座って安めもしますわ。大丈夫。難しいことはうちの子がやってくれますから。槍に専念してればよろしいのです」
「だから、これはなんだって聞いてんだよ!? 何かの道具らしいけどよ」
手足につけた装飾品じみたものを打ちつけてガストンは言う。
「おやめになって、それは制御用の精密部品です」
言い方は優しかったが強い語気でオリヴィアは言った。そろそろ短気な性分が表に出てきたようだ。
「ガストン、あなたは、当家の家宝である超兵器、巨大機械人形『ダンガル』の操縦席にいるのですわ。あなたが見たものをダンガルが見る。あなたが動けばダンガルも動く。そういうことですわ」
「意味わかんねえよ…」
「巨大機械人形は星の世界の産物です。この世界には似たものがありませんの。動かしてみるしかございませんわ」
オリヴィアがそう言うと、ガストンの目の前にあった壁が薄れ、空が映し出された。足がふらふらとして落ち着かない。見てみると金色の脚があった。これがダンガルの脚ということか。そして脚の間に魔王の姿があった。ダンガルは魔王の直上にいた。高所恐怖症がぶりかえしてきてガストンは思わず両脚をしっかとつけ、自分の肩を抱える。その動きはそのままダンガルの動きとなった。
「切り離します」
メイドが小さく言う。その声とともに、銀色の宇宙船から金色の機械人形は切り離され、ガストンの悲鳴と、イースの笑い声とともに魔王めがけて落下していく。
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