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Episode.3
告白
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数週間後。私は葵の脅迫から暗くなった。そして、カタクリの色がだんだん薄れていく。
「栗ちゃん?」
照花が私に話しかけても、私の耳には届いていない。私が数週間前まで笑顔で入れたのは、桐生くんの笑顔があったからだ。
屋上、園芸同好会活動場所。桐生くんは私が数週間前から屋上に来ないことに疑問を浮かべていた。廊下などですれ違っても目すら合わせてくれないから。
「……」
桐生くんは無言で空を見上げる。
ーー雨が降りそうだな。
とでも思っていそうな表情をする。
階段の踊り場。鈴蘭と照花が話し合っていた。
「なんか、数週間栗ちゃんの元気がないの……」
照花が鈴蘭に私の現状を伝える。
「キリーも、暗い表情なんだよね……なんか、遠くを眺めているような……」
鈴蘭も桐生くんの現状を伝える。2人が考え込むと
「2人を、合わせてみよう……絶対に来てと念押して」
鈴蘭が作戦を立てる。
「分かった」
照花も手伝うことになった。
1年X組。私は机に顔を突っ伏したまま、ため息を吐く。
「栗ちゃん……今日、絶対に屋上に来てよ! あの花壇があるところに……絶対だよ?」
照花が屋上に来ることを念押す。それはXI組でも
「キリー、今日も屋上に行くでしょ? 活動しないで待っといて」
鈴蘭が桐生くんに言う。桐生くんは園芸同好会でいつも被っている麦わら帽子をバスケットボールみたいに回している。
「「分かった」」
私と桐生くんは、同じタイミングで返事した。
放課後。私は色褪せ始めているカタクリを持って、数週間ぶりに屋上に向かう。屋上のドアを開けると
「片栗!?」
桐生くんの声が聞こえた。
「桐生くん……」
私はなぜか、ビックリしていた。桐生くんがここにいることは当たり前なのに。
「なんで、数週間も来なかった?」
桐生くんが話しかける。
「照花が『絶対にここに来て!』って言ってて」
私は桐生くんの問いかけを無視する。
「俺はスーちゃんに同じこと言われた気が……」
桐生くんは鈴蘭のことを『スーちゃん』と呼んでいる。すると、私はいきなり、両腕を掴まれた。掴まれた時に分かった。葵だ。私はカタクリのドライフラワーの入った木鉢を落としてしまった。木鉢は陶器の花瓶の如く、割れた。しかし、カタクリのドライフラワーはまだ咲いていた。葵は私を後ろに吹き飛ばして、カタクリの花のあるところを踏み潰して桐生くんに近づく。
「天竺!」
桐生が、ちょうど葵がカタクリのドライフラワーを踏んだところで叫ぶ。これは後で知ったことなのだが、桐生くんは『花を好きな人に悪い人はいないよ』という亡き祖母の言葉が聞こえたらしい。
「天竺……俺が入学式にあげた白いゼラニウムの花言葉教えるよ」
桐生くんは続けて
「『私はあなたの愛を信じない』花を、ドライフラワーを踏み潰す天竺にはピッタリだろ」
桐生くんは、白いゼラニウムの花言葉を葵に伝える。葵は桐生くんが自分を好きじゃないと悟ったのかその場から逃げていった。私は葵が踏み潰したカタクリを抱く。潰れていて綺麗ではなくなっている。
「カタクリ……」
私はカタクリを抱きながら、涙を流した。
「片栗……」
桐生くんが話しかける。私は泣き顔にまま、桐生くんを見る。
「これ……」
新しいカタクリのドライフラワーを入れた木鉢をくれた。
「これは、俺のカタクリ……」
桐生くんはカタクリのドライフラワーが植えられた木鉢を置く。
「カタクリの花言葉は『初恋』」
すると、複数の花びらが風と共に吹いた気がした。
「え!?」
私はさっきの光景とカタクリの花言葉に、驚きを隠せなかった。
「俺は花のカタクリも片栗も好きだ」
桐生くんは、私に告白した。
「わ、私も……」
私も同じ気持ちだ。
「栗ちゃん?」
照花が私に話しかけても、私の耳には届いていない。私が数週間前まで笑顔で入れたのは、桐生くんの笑顔があったからだ。
屋上、園芸同好会活動場所。桐生くんは私が数週間前から屋上に来ないことに疑問を浮かべていた。廊下などですれ違っても目すら合わせてくれないから。
「……」
桐生くんは無言で空を見上げる。
ーー雨が降りそうだな。
とでも思っていそうな表情をする。
階段の踊り場。鈴蘭と照花が話し合っていた。
「なんか、数週間栗ちゃんの元気がないの……」
照花が鈴蘭に私の現状を伝える。
「キリーも、暗い表情なんだよね……なんか、遠くを眺めているような……」
鈴蘭も桐生くんの現状を伝える。2人が考え込むと
「2人を、合わせてみよう……絶対に来てと念押して」
鈴蘭が作戦を立てる。
「分かった」
照花も手伝うことになった。
1年X組。私は机に顔を突っ伏したまま、ため息を吐く。
「栗ちゃん……今日、絶対に屋上に来てよ! あの花壇があるところに……絶対だよ?」
照花が屋上に来ることを念押す。それはXI組でも
「キリー、今日も屋上に行くでしょ? 活動しないで待っといて」
鈴蘭が桐生くんに言う。桐生くんは園芸同好会でいつも被っている麦わら帽子をバスケットボールみたいに回している。
「「分かった」」
私と桐生くんは、同じタイミングで返事した。
放課後。私は色褪せ始めているカタクリを持って、数週間ぶりに屋上に向かう。屋上のドアを開けると
「片栗!?」
桐生くんの声が聞こえた。
「桐生くん……」
私はなぜか、ビックリしていた。桐生くんがここにいることは当たり前なのに。
「なんで、数週間も来なかった?」
桐生くんが話しかける。
「照花が『絶対にここに来て!』って言ってて」
私は桐生くんの問いかけを無視する。
「俺はスーちゃんに同じこと言われた気が……」
桐生くんは鈴蘭のことを『スーちゃん』と呼んでいる。すると、私はいきなり、両腕を掴まれた。掴まれた時に分かった。葵だ。私はカタクリのドライフラワーの入った木鉢を落としてしまった。木鉢は陶器の花瓶の如く、割れた。しかし、カタクリのドライフラワーはまだ咲いていた。葵は私を後ろに吹き飛ばして、カタクリの花のあるところを踏み潰して桐生くんに近づく。
「天竺!」
桐生が、ちょうど葵がカタクリのドライフラワーを踏んだところで叫ぶ。これは後で知ったことなのだが、桐生くんは『花を好きな人に悪い人はいないよ』という亡き祖母の言葉が聞こえたらしい。
「天竺……俺が入学式にあげた白いゼラニウムの花言葉教えるよ」
桐生くんは続けて
「『私はあなたの愛を信じない』花を、ドライフラワーを踏み潰す天竺にはピッタリだろ」
桐生くんは、白いゼラニウムの花言葉を葵に伝える。葵は桐生くんが自分を好きじゃないと悟ったのかその場から逃げていった。私は葵が踏み潰したカタクリを抱く。潰れていて綺麗ではなくなっている。
「カタクリ……」
私はカタクリを抱きながら、涙を流した。
「片栗……」
桐生くんが話しかける。私は泣き顔にまま、桐生くんを見る。
「これ……」
新しいカタクリのドライフラワーを入れた木鉢をくれた。
「これは、俺のカタクリ……」
桐生くんはカタクリのドライフラワーが植えられた木鉢を置く。
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すると、複数の花びらが風と共に吹いた気がした。
「え!?」
私はさっきの光景とカタクリの花言葉に、驚きを隠せなかった。
「俺は花のカタクリも片栗も好きだ」
桐生くんは、私に告白した。
「わ、私も……」
私も同じ気持ちだ。
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