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続・ケモノはシーツの上で啼く

3.柴尾の誕生日

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 その日は柴尾にとって特別な日だった。
 前日、柴尾は二十四歳になった。

 週末は斎賀に誕生日のお願いを聞いてもらう約束をしていたので、自然と朝から上機嫌になる。
 ところが、狩りに行く予定の者が熱を出したため、柴尾は急遽狩りに出ることになった。

 柴尾は体を動かすのが好きだ。狩りでは魔族を何匹も仕留め、自然と気持ちが高ぶってくるのを感じた。
 朝から気分が高まっていたのもあるが、狩りに出てさらに気分が高揚した。

 適度な疲労を携えて、狩りの仲間と共に夕方には屋敷に戻る。斎賀への報告は怪我をした者に任せた。

 狩りに出かけたせいで昼間は斎賀と一緒に過ごすことができず、早く会いたかった。

 しかし、夕食の時間になっても、斎賀は姿を現さなかった。

 子供たちに訊ねると、少しばかり寄り合いに出てくると言って出掛けたらしい。きっと、怪我をした者を治癒するために、出掛けずに待っていたのだ。

 屋敷に戻っても斎賀に会えず、少し残念な気持ちになった。
 不在であれば仕方がない。柴尾は斎賀を待ちながら、子供たちと一緒に時間を過ごした。



 そして、斎賀が屋敷に戻ったのは、子供たちを部屋に戻し、屋敷の戸締りをする少し前になる時刻だった。

 静まり返った夜に玄関から聞こえた音に気付き、部屋に戻ってくる斎賀を廊下で迎えた。
 その姿を見て、柴尾はとんでもなく驚いた。

「え!? 斎賀様、髪が……!」

 耳をぴんと立て、瞬きも忘れ斎賀を見た。
 胸元まであった長い銀髪が、短くなっていた。

 襟足より少し下くらいの長さで切り揃えられた銀髪を見て、柴尾は唖然とした。
 玲華の言いつけもあり、斎賀はずっと出会った頃から髪を短くすることがなかったからだ。

「母上がしばらく来ないというものでな。切っても構わないだろう」
 ふっ、と斎賀は笑んだ。その顔は、ずっと切りたかった髪をようやく切れたとばかりに、満足気だ。

 短くなった分、銀の髪は斎賀が動くとさらりと揺れた。
 綺麗な首筋が見えて、どきりとする。ますます人を魅了してしまうのではないかと思えた。

「首が涼しく感じるのに慣れないが、すっきりした」
 短さを楽しむように、斎賀は毛先を摘まんだ。

「とてもお似合いです……」
 柴尾は、ぽうっとした表情で見惚れた。

 元々、斎賀の美しさは年齢を感じさせないものがあったが、髪を切ったことでさらに若返った。その分、大人の色気が少し減った。

「短いと、さらにお若く見えるんですね。まるで、二十代みたいです!」
 柴尾は大絶賛した。

「………」
 斎賀の表情が、何故か苦いものに変わる。

「やはり伸ばすことにする」

 きっぱりと告げられ、柴尾はきょとんとした。
 褒めたのに、気に入らなかったようだ。

「すっかり遅くなって悪かった。寄り合いに理容師のご婦人が来ていて、話の流れで髪を切ってもらうことになってな。こんな時間になってしまった」

 斎賀が帰るのを待ち侘びていた柴尾は、すぐにでも部屋に行きたいくらいだった。
「戸締りをしたら、すぐにお部屋に行ってもいいですか?」

「シャワーを浴びるから、部屋で待っていてくれ」
「はい」
 満面の笑みで返事すると、柴尾は尾を振りながら急いで戸締りに向かった。
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