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ケモノはシーツの上で啼く Ⅰ
14.朱貴との再会
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靴職人に依頼していた靴が完成する頃になった。
休日、柴尾は志狼と一緒に靴を受け取りに、北の隣町まで出かけた。
せっかく隣町まで行くので美味しいものを食べて帰ろうということになり、到着は昼食時間に合わせた。
町に着くと、二人は一番に靴職人の店を訪れた。
仕上がった靴は、二人とも満足のいく出来だった。これならば、ファミリーの皆にも薦められる。
そして靴の修理についての相談を職人としてから、二人は店を出た。
「知り合いがいるから、ちょっと寄り道してもいいかな」
大通りに出ると、柴尾は志狼に訊ねた。
「柴尾、顔が広いんだな。いいよ」
志狼には雑貨屋で時間を潰してもらうことにして、柴尾は大通りに面した宿屋のドアを開けた。
「いらっしゃい……あれ」
カウンターにいた赤い髪の青年が、柴尾を見て驚いた。
「こんにちは」
「柴尾!」
出会ってまだ二回目だというのに、朱貴は久しぶりに友人と会ったかのような笑顔を見せた。カウンターの中からいそいそと出てくる。
「朱貴さん。この前はありがとうございました」
礼を言うと、何故か朱貴に不満そうな表情を向けられた。
「何だよ。堅っ苦しいなぁ。それに、朱貴でいいよ。俺のが年下だろ。まぁ、俺も呼び捨てにしてるけどな!」
朱貴が笑うので、柴尾は頷いた。
「で、どうしたんだ?」
訊ねられ、柴尾はポケットから小さな容器を取り出した。
「先日もらったこれ……。せっかく応援してくれたけど振られてしまったので、使うこともないから返しに来た」
朱貴が目を丸くする。
「告白、したのか?」
「うん」
柴尾は苦笑した。
結果は見事に予想通りだ。
「失恋はしたけど、お傍で想い続けるよ」
何とも言えない表情で、朱貴が柴尾を見つめた。
「そっか……」
呟いた後、朱貴は柴尾の手を押し戻した。手の中に容器を握りこまされる。
「やる! お守り代わりに、肌身離さず持ってな」
「朱貴……」
お守りという言葉に、手の中の容器を大事そうにぎゅっと握った。
「振られてしまったのに、そんな期待するような気持ちでいていいのかな」
「いいんじゃねーの。想うのは勝手だし」
斎賀と似たようなことを言っているが、随分言い方が軽い。柴尾は少し笑った。
朱貴は両腕を組むと、にやりと笑う。
「何なら、いざという時のために練習相手になってやろうか?」
「え」
驚いて朱貴を見返した。
「柴尾っていいカラダしてるしさー。何かやってんの?」
朱貴の視線が、柴尾の上から下へ向かって移動する。
「僕はハンターだ」
「どーりで」
朱貴は頷いた。
「獣人はしつこ…… 長持ちって言うけど、試したことねーんだよな」
「き、気持ちだけいただいておくよ」
慌てる柴尾の反応を見て、朱貴はぷっと噴き出した。
「まぁ、柴尾は見るからにそういう奴じゃねーもんな」
休日、柴尾は志狼と一緒に靴を受け取りに、北の隣町まで出かけた。
せっかく隣町まで行くので美味しいものを食べて帰ろうということになり、到着は昼食時間に合わせた。
町に着くと、二人は一番に靴職人の店を訪れた。
仕上がった靴は、二人とも満足のいく出来だった。これならば、ファミリーの皆にも薦められる。
そして靴の修理についての相談を職人としてから、二人は店を出た。
「知り合いがいるから、ちょっと寄り道してもいいかな」
大通りに出ると、柴尾は志狼に訊ねた。
「柴尾、顔が広いんだな。いいよ」
志狼には雑貨屋で時間を潰してもらうことにして、柴尾は大通りに面した宿屋のドアを開けた。
「いらっしゃい……あれ」
カウンターにいた赤い髪の青年が、柴尾を見て驚いた。
「こんにちは」
「柴尾!」
出会ってまだ二回目だというのに、朱貴は久しぶりに友人と会ったかのような笑顔を見せた。カウンターの中からいそいそと出てくる。
「朱貴さん。この前はありがとうございました」
礼を言うと、何故か朱貴に不満そうな表情を向けられた。
「何だよ。堅っ苦しいなぁ。それに、朱貴でいいよ。俺のが年下だろ。まぁ、俺も呼び捨てにしてるけどな!」
朱貴が笑うので、柴尾は頷いた。
「で、どうしたんだ?」
訊ねられ、柴尾はポケットから小さな容器を取り出した。
「先日もらったこれ……。せっかく応援してくれたけど振られてしまったので、使うこともないから返しに来た」
朱貴が目を丸くする。
「告白、したのか?」
「うん」
柴尾は苦笑した。
結果は見事に予想通りだ。
「失恋はしたけど、お傍で想い続けるよ」
何とも言えない表情で、朱貴が柴尾を見つめた。
「そっか……」
呟いた後、朱貴は柴尾の手を押し戻した。手の中に容器を握りこまされる。
「やる! お守り代わりに、肌身離さず持ってな」
「朱貴……」
お守りという言葉に、手の中の容器を大事そうにぎゅっと握った。
「振られてしまったのに、そんな期待するような気持ちでいていいのかな」
「いいんじゃねーの。想うのは勝手だし」
斎賀と似たようなことを言っているが、随分言い方が軽い。柴尾は少し笑った。
朱貴は両腕を組むと、にやりと笑う。
「何なら、いざという時のために練習相手になってやろうか?」
「え」
驚いて朱貴を見返した。
「柴尾っていいカラダしてるしさー。何かやってんの?」
朱貴の視線が、柴尾の上から下へ向かって移動する。
「僕はハンターだ」
「どーりで」
朱貴は頷いた。
「獣人はしつこ…… 長持ちって言うけど、試したことねーんだよな」
「き、気持ちだけいただいておくよ」
慌てる柴尾の反応を見て、朱貴はぷっと噴き出した。
「まぁ、柴尾は見るからにそういう奴じゃねーもんな」
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