上 下
70 / 123
ケモノはシーツの上で啼く Ⅰ

14.朱貴との再会

しおりを挟む
 靴職人に依頼していた靴が完成する頃になった。
 休日、柴尾は志狼と一緒に靴を受け取りに、北の隣町まで出かけた。

 せっかく隣町まで行くので美味しいものを食べて帰ろうということになり、到着は昼食時間に合わせた。
 町に着くと、二人は一番に靴職人の店を訪れた。

 仕上がった靴は、二人とも満足のいく出来だった。これならば、ファミリーの皆にも薦められる。
 そして靴の修理についての相談を職人としてから、二人は店を出た。

「知り合いがいるから、ちょっと寄り道してもいいかな」
 大通りに出ると、柴尾は志狼に訊ねた。
「柴尾、顔が広いんだな。いいよ」

 志狼には雑貨屋で時間を潰してもらうことにして、柴尾は大通りに面した宿屋のドアを開けた。

「いらっしゃい……あれ」
 カウンターにいた赤い髪の青年が、柴尾を見て驚いた。

「こんにちは」
「柴尾!」
 出会ってまだ二回目だというのに、朱貴は久しぶりに友人と会ったかのような笑顔を見せた。カウンターの中からいそいそと出てくる。

「朱貴さん。この前はありがとうございました」
 礼を言うと、何故か朱貴に不満そうな表情を向けられた。

「何だよ。堅っ苦しいなぁ。それに、朱貴でいいよ。俺のが年下だろ。まぁ、俺も呼び捨てにしてるけどな!」
 朱貴が笑うので、柴尾は頷いた。

「で、どうしたんだ?」
 訊ねられ、柴尾はポケットから小さな容器を取り出した。
「先日もらったこれ……。せっかく応援してくれたけど振られてしまったので、使うこともないから返しに来た」

 朱貴が目を丸くする。
「告白、したのか?」
「うん」
 柴尾は苦笑した。

 結果は見事に予想通りだ。
「失恋はしたけど、お傍で想い続けるよ」

 何とも言えない表情で、朱貴が柴尾を見つめた。
「そっか……」
 呟いた後、朱貴は柴尾の手を押し戻した。手の中に容器を握りこまされる。

「やる! お守り代わりに、肌身離さず持ってな」

「朱貴……」
 お守りという言葉に、手の中の容器を大事そうにぎゅっと握った。
「振られてしまったのに、そんな期待するような気持ちでいていいのかな」

「いいんじゃねーの。想うのは勝手だし」
 斎賀と似たようなことを言っているが、随分言い方が軽い。柴尾は少し笑った。

 朱貴は両腕を組むと、にやりと笑う。
「何なら、いざという時のために練習相手になってやろうか?」

「え」
 驚いて朱貴を見返した。

「柴尾っていいカラダしてるしさー。何かやってんの?」
 朱貴の視線が、柴尾の上から下へ向かって移動する。

「僕はハンターだ」
「どーりで」
 朱貴は頷いた。

「獣人はしつこ…… 長持ちって言うけど、試したことねーんだよな」
「き、気持ちだけいただいておくよ」

 慌てる柴尾の反応を見て、朱貴はぷっと噴き出した。
「まぁ、柴尾は見るからにそういう奴じゃねーもんな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お人好しは無愛想ポメガを拾う

蔵持ひろ
BL
弟である夏樹の営むトリミングサロンを手伝う斎藤雪隆は、体格が人より大きい以外は平凡なサラリーマンだった。 ある日、黒毛のポメラニアンを拾って自宅に迎え入れた雪隆。そのポメラニアンはなんとポメガバース(疲労が限界に達すると人型からポメラニアンになってしまう)だったのだ。 拾われた彼は少しふてくされて、人間に戻った後もたびたび雪隆のもとを訪れる。不遜で遠慮の無いようにみえる態度に振り回される雪隆。 だけど、その生活も心地よく感じ始めて…… (無愛想なポメガ×体格大きめリーマンのお話です)

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

永遠の快楽

桜小路勇人/舘石奈々
BL
万引きをしたのが見つかってしまい脅された「僕」がされた事は・・・・・ ※タイトル変更しました※ 全11話毎日22時に続話更新予定です

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

処理中です...