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そしてケモノは愛される
14.ちょっかい
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「いてて」
消毒を塗布され、志狼が小さく呻く。
いつものように閉院間近になって、足の脛を魔族に切りつけられたと言って志狼は病院へ立ち寄った。
傷が深ければ斎賀に治癒魔法をかけてもらう方がいいが、病院で手当てできる範囲の怪我だ。
診察台の上に座り怪我をした足を台に乗せたまま、志狼は消毒で濡れた足にふぅふぅと息を吹き掛ける。
「消毒ってなんでこんなに沁みるんだよ。魔族に斬られた時より痛い」
「良薬は口に苦し、みたいなもんだとでも思え」
「うぅ。なんか違う気がするけど、言いたいことは分かる」
消毒の後は傷薬を塗り、志狼の足に包帯を巻いていく。
「薬が乾けば包帯は外していい」
「ありがと、穂積先生」
時々おっさん呼びされるようになったが、治療の時はちゃんと先生と呼ばれる。一応まだ、医者として尊敬はしてもらえているようだ。
「斬られた場所が悪ければ歩けなくなるぞ。気をつけろよ」
「うん。気をつける」
素直な返事が返ってくる。
包帯を巻き終えると、志狼はズボンの裾を戻した。
穂積はイスから立ち上がると、ふと志狼に訊ねた。
「いつもこのまままっすぐ帰ってるのか?」
訊ねられた意味が分からず、志狼が首を傾げる。
「お前もいい歳なんだから、夜遊びとかするだろ。仲間と酒飲みに行ったりとか」
以前に比べれば随分話をするようにはなったが、それも病院へ来た短い時間だけだ。いつか、酒を酌み交わしながらゆっくり話をしてみたりしてみたいものだと、穂積は思った。
穂積が飲みに行くというと、大概は魅力的なお姉さんが接客をしてくれる店だが、たまには男同士でゆっくり語らえる店でもいい。
「皆はたまに出掛けてるけど、俺はそういうのは苦手で……。それに、斎賀様が遅くまで俺たちのために色々してくれてるのに、遊んでるなんてできないよ」
どうやら穂積とは違い、たくさんの女の子と遊ぶのは好きではないらしい。
「……もしかして、童貞か?」
「はあ!? な、なんでそういうことに……っ」
志狼は顔を真っ赤にする。
気になり過ぎて、いきなり話を飛躍させてしまった。
「別に、経験くらいあるし……っ。馬鹿にすんなよな。ただ、女遊びとかそういうのが苦手ってだけだ」
「ふぅん……そうか」
年齢的にも経験がないことはないと思っていたが、穂積の知る志狼は何よりも斎賀一択だ。そのせいで、意外にも思えた。
それに、無理矢理に抱いた時の反応は、性行為に慣れた様子は見受けられなかった。インバスの体液の影響もあっただろうが、快感に慣れていないように思えたのだ。
思い出したら、またあの淫らな反応が見たくなった。
「むらむらしてきた」
穂積がぽつりと呟くと、え?と志狼が訊き返す。
診察台に座る志狼の後ろの壁に、穂積は手を置いた。まっすぐな視線が見上げてくる。
「また、したくなった」
今度は直接的に言うと、一瞬ぽかんとした顔をしてから、見上げる志狼の眼が見開かれた。
身じろぎしようとしたのを、咄嗟に両手で封じる。
「えっ。な、なんで……!?」
穂積は志狼の耳を唇で噛んだ。びくりと耳が震える。
「ちょ……っ。お、おかしいって。俺、男だよ」
「男でも出来るって分かっただろ」
「わ、分かった……けど、そういうことじゃなくて」
現役は引退したが、ハンターをしていたのでまだまだ穂積も力がある。志狼は抵抗しようとするが、それを許さなかった。
「いいか、志狼。この世で愛し合えるのは、男と女だけじゃない。獣人と人間、獣人と鱗人、そして男と男もだ。すれてないのもいいが、お前は世間に疎すぎる」
志狼の耳元で囁く。
斎賀と愛し合うことだってあり得るのだと、伝わっただろうか。
志狼の瞳が一瞬揺らいだ。
抵抗が緩んだ隙に、穂積は志狼のズボンの腰紐に左手を掛ける。簡単に結ばれたそれは、引っ張ればすぐに解けてしまう。
「わ、わぁっ」
緩んだズボンを前にくつろげると、下着が現れる。穂積は左手を這わした。
「えっ。ほ、ほんとに……わっ」
慌てる志狼に、いいだろ、と耳元で囁く。
もうすっかりやる気のスイッチは入ってしまった。あとは志狼を気持ちよく高め、その気にさせていくだけだ。
下着の中には手を入れず、布の上から中心に触れる。
この前は掻き出すことが目的で一切触れることがなかったが、直接触れればどういう反応を見せるのか、本当はそこに触ってみたいと思っていた。
「……っ」
布越しに触れられたそこが、ぴくりと反応するのが分かった。
「……どう…せ、挿れられたらそれでいいんだろ」
志狼が声を震わせる。
見ると、穂積に動きを封じられているせいか、悔しそうな表情を浮かべていた。
「お前、悲しいこと言うなよ……」
ただ性欲処理に突っ込めたらいいだけのように言われ、穂積は残念な溜め息をつく。
そういう行為は好きではあるが、大きなおっぱいのお姉さんを好きな穂積が、それだけの為に好き好んで男を抱くと思っているのか。
事後のあっさりした態度からはそのように見えなかったが、こんな自虐的なことを言うなんて、この前抱いたことで傷つけてしまったようだ。
志狼も気持ちよくなっていたからいいと思っていたが、勇猛にハンターとして活躍している男らしい志狼からすれば、自尊心を傷つけられたようなものだ。
気持ちよくといっても、たらいで動きづらい状態での無理矢理の行為には違いないけれども。
だが、そんな言い方をされたことには、勝手ながら穂積も納得がいかなかった。
「そうじゃないって証明してやる」
消毒を塗布され、志狼が小さく呻く。
いつものように閉院間近になって、足の脛を魔族に切りつけられたと言って志狼は病院へ立ち寄った。
傷が深ければ斎賀に治癒魔法をかけてもらう方がいいが、病院で手当てできる範囲の怪我だ。
診察台の上に座り怪我をした足を台に乗せたまま、志狼は消毒で濡れた足にふぅふぅと息を吹き掛ける。
「消毒ってなんでこんなに沁みるんだよ。魔族に斬られた時より痛い」
「良薬は口に苦し、みたいなもんだとでも思え」
「うぅ。なんか違う気がするけど、言いたいことは分かる」
消毒の後は傷薬を塗り、志狼の足に包帯を巻いていく。
「薬が乾けば包帯は外していい」
「ありがと、穂積先生」
時々おっさん呼びされるようになったが、治療の時はちゃんと先生と呼ばれる。一応まだ、医者として尊敬はしてもらえているようだ。
「斬られた場所が悪ければ歩けなくなるぞ。気をつけろよ」
「うん。気をつける」
素直な返事が返ってくる。
包帯を巻き終えると、志狼はズボンの裾を戻した。
穂積はイスから立ち上がると、ふと志狼に訊ねた。
「いつもこのまままっすぐ帰ってるのか?」
訊ねられた意味が分からず、志狼が首を傾げる。
「お前もいい歳なんだから、夜遊びとかするだろ。仲間と酒飲みに行ったりとか」
以前に比べれば随分話をするようにはなったが、それも病院へ来た短い時間だけだ。いつか、酒を酌み交わしながらゆっくり話をしてみたりしてみたいものだと、穂積は思った。
穂積が飲みに行くというと、大概は魅力的なお姉さんが接客をしてくれる店だが、たまには男同士でゆっくり語らえる店でもいい。
「皆はたまに出掛けてるけど、俺はそういうのは苦手で……。それに、斎賀様が遅くまで俺たちのために色々してくれてるのに、遊んでるなんてできないよ」
どうやら穂積とは違い、たくさんの女の子と遊ぶのは好きではないらしい。
「……もしかして、童貞か?」
「はあ!? な、なんでそういうことに……っ」
志狼は顔を真っ赤にする。
気になり過ぎて、いきなり話を飛躍させてしまった。
「別に、経験くらいあるし……っ。馬鹿にすんなよな。ただ、女遊びとかそういうのが苦手ってだけだ」
「ふぅん……そうか」
年齢的にも経験がないことはないと思っていたが、穂積の知る志狼は何よりも斎賀一択だ。そのせいで、意外にも思えた。
それに、無理矢理に抱いた時の反応は、性行為に慣れた様子は見受けられなかった。インバスの体液の影響もあっただろうが、快感に慣れていないように思えたのだ。
思い出したら、またあの淫らな反応が見たくなった。
「むらむらしてきた」
穂積がぽつりと呟くと、え?と志狼が訊き返す。
診察台に座る志狼の後ろの壁に、穂積は手を置いた。まっすぐな視線が見上げてくる。
「また、したくなった」
今度は直接的に言うと、一瞬ぽかんとした顔をしてから、見上げる志狼の眼が見開かれた。
身じろぎしようとしたのを、咄嗟に両手で封じる。
「えっ。な、なんで……!?」
穂積は志狼の耳を唇で噛んだ。びくりと耳が震える。
「ちょ……っ。お、おかしいって。俺、男だよ」
「男でも出来るって分かっただろ」
「わ、分かった……けど、そういうことじゃなくて」
現役は引退したが、ハンターをしていたのでまだまだ穂積も力がある。志狼は抵抗しようとするが、それを許さなかった。
「いいか、志狼。この世で愛し合えるのは、男と女だけじゃない。獣人と人間、獣人と鱗人、そして男と男もだ。すれてないのもいいが、お前は世間に疎すぎる」
志狼の耳元で囁く。
斎賀と愛し合うことだってあり得るのだと、伝わっただろうか。
志狼の瞳が一瞬揺らいだ。
抵抗が緩んだ隙に、穂積は志狼のズボンの腰紐に左手を掛ける。簡単に結ばれたそれは、引っ張ればすぐに解けてしまう。
「わ、わぁっ」
緩んだズボンを前にくつろげると、下着が現れる。穂積は左手を這わした。
「えっ。ほ、ほんとに……わっ」
慌てる志狼に、いいだろ、と耳元で囁く。
もうすっかりやる気のスイッチは入ってしまった。あとは志狼を気持ちよく高め、その気にさせていくだけだ。
下着の中には手を入れず、布の上から中心に触れる。
この前は掻き出すことが目的で一切触れることがなかったが、直接触れればどういう反応を見せるのか、本当はそこに触ってみたいと思っていた。
「……っ」
布越しに触れられたそこが、ぴくりと反応するのが分かった。
「……どう…せ、挿れられたらそれでいいんだろ」
志狼が声を震わせる。
見ると、穂積に動きを封じられているせいか、悔しそうな表情を浮かべていた。
「お前、悲しいこと言うなよ……」
ただ性欲処理に突っ込めたらいいだけのように言われ、穂積は残念な溜め息をつく。
そういう行為は好きではあるが、大きなおっぱいのお姉さんを好きな穂積が、それだけの為に好き好んで男を抱くと思っているのか。
事後のあっさりした態度からはそのように見えなかったが、こんな自虐的なことを言うなんて、この前抱いたことで傷つけてしまったようだ。
志狼も気持ちよくなっていたからいいと思っていたが、勇猛にハンターとして活躍している男らしい志狼からすれば、自尊心を傷つけられたようなものだ。
気持ちよくといっても、たらいで動きづらい状態での無理矢理の行為には違いないけれども。
だが、そんな言い方をされたことには、勝手ながら穂積も納得がいかなかった。
「そうじゃないって証明してやる」
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