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そしてケモノは愛される

9.インバスの熱

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「とりあえず、その状態は辛いだろ。一度出しとけ」
「ふえっ!?」

 穂積は手を拭くための布を放り投げた。
 目の前ですることに最初は嫌な顔をした志狼だったが、辛い状況に我慢できなかったのか、診察台に腰掛けると自身に手を伸ばした。

 見られたくないという意志の表れなのか、目を閉じて顔を穂積から逸らす。それでも熱を持った部分は穂積からよく見える。

 指を絡め、志狼は自身に軽く上下させた。指の腹で先端を擦ると体を震わせる。
「っん、ん、……あっ」

 もっと自慰行為を見ていたかったが、すでに張りつめていた志狼は抑えきれない声を漏らしながらすぐに達した。

 志狼は恥ずかしそうに濡れた手を布で拭く。
 他人の自慰行為なんて初めて見たが、相手が男でも案外興奮してしまうものなんだなと、穂積は思った。

 十代のように若すぎもせず、程よい筋肉がついた体だ。胸は当然、平らだ。穂積が大好きな、大きなおっぱいは付いていない。
 それなのに、妙に色気を感じた。

「お前、剣士にしては細くないか? そんなんで魔族と戦えてるのか?」
 さり気なく志狼の体をじろじろと眺め、穂積は訊ねる。

 剣士にしては腕も細い。敵を倒すには、それなりの力が必要だ。腕ももっと筋肉を付けた方がいい。

「俺は素早さでカバーしてんだよ。昔はもっと痩せてたんだ。これでも、ファミリーに来てから肉ついた方」
 斎賀のおかげと言わんばかりに、志狼は柔らかい笑みを浮かべた。

 ふぅん、とだけ穂積は呟いた。
「それじゃ、早速始めるか。たらいの中に座って、腰を前に出して足を広げろ」

 穂積の指示に、慌てて志狼はたらいの中にちょこんと座った。
 たらいの後ろに手を付き体を安定させると、足を外に出す。だが、足を広げることには躊躇いがあるようだ。

「もじもじすんなっ」
「わぁぁっ」

 穂積が無理矢理に足を開けさせると、志狼は恥ずかしさのあまり泣きそうな顔になった。体を支えるために後ろに手をついているので、穂積のすることを阻止しようがない。

「男がこれくらいで騒ぐな」
「男とか関係ねえよっ」

 無防備な姿を晒し、志狼が文句を言う。今志狼ができるのは、睨むか口ごたえしかないのだ。

 始めるぞ、と穂積は声を掛ける。志狼は緊張して、ピタリと動きを止めた。

 こんな治療は初めてだが、ようするにインバスの体液を体の中から出してしまえばいいということだ。それほど難しいことではない。

 ただ、男の尻に指を入れるのはさすがに穂積も初めてで、最初が妙に緊張した。

「い、挿れるぞ」
 奥の窄まりに充てた指を、ゆっくりと押し入れる。女とは違う狭さと圧迫感があるが、意外にすんなりと指は奥まで入っていく。

「……っ」
 インバスの体液のせいか、それともインバスにすでに犯されたせいか。穂積の太い指を、志狼の体は難なく呑み込んでいく。

「どうだ? 痛かったら言えよ」
「……ん」
 志狼はこくりと頷いた。

 見えないものを掻き出すのは難しい。
 とりあえずは中を弄ってみるかと、穂積は中で指を蠢かした。

「……っ。あっ」
 びくりと志狼の体が震え、たらいの湯がちゃぷんと跳ねる。

 耳朶をくすぐる声に、穂積の方が驚いた。
 どうやら、迂闊に中を弄るのは良くないようだ。

 体内を傷つけないよう、穂積はゆっくりと指を動かす。女にする時でさえ、ここまで丁寧にすることはない。

 探り探りだが、体液を掻き出すことを意識しながら指を抜き差しすると、たらいの湯の中に白い粘液が滲み出てきた。
 それはまるで男の欲望のようで、男に犯された男を相手にしているような気分になる。

 妙に興奮して、穂積の心は再びざわざわと騒ぎ出した。
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