40 / 53
40.勘違い④
しおりを挟む
「………。え!?」
衝撃が走り、大樹はみどりを見た。
凄まじい勢いで、記憶が過去に戻る。
確かに、付き合ってもいいと言われただけだ。
みどりのそれまでの振る舞いのせいで、付き合いなさいと言われたものだと途中から思い込んでいた。
大樹がそう思い込んでしまったくらいだから、伊沢もそう思い込んでしまったのではないか。
しかも、勘違いした大樹が押す形で、付き合う方向に流れてしまった。
「………」
自分の勘違いに今更ながらに気付き、大樹は黙り込む。
急に不安が襲ってきた。
伊沢を見ると、話しかけてくる女たちに丁寧に対応を続けていた。
確かに、いつも求めるのは大樹からだ。好きだと思われていると感じることもあるが、伊沢から表すのは常にではない。
大樹が勘違いして誘導したせいで付き合うことになり、恋人になったから好きなのだと思い込んでいるだけだとしたら―――。
それとも、迷ってくれるくらいには、大樹のことを気にしてくれていただろうか。
四年も付き合っているのに、伊沢の気持ちが急に信じられなくなった。
「俺、どうしよう……」
大樹が小さく零した言葉は、周りの声に消されてみどりには聞こえなかった。不安そうに見つめられ、みどりはどうかしたのかと首を傾げる。
大樹はふらりと席を立つと、みどりを残して女性陣に囲まれた伊沢の元に近づいた。
大樹に気付いた伊沢が、不思議そうに見返す。
「どうかしたのか?」
伊沢がそう思うほど、大樹は表情に出ていたようだ。
「帰ろう」
大樹は女性陣の隙間から腕を伸ばすと、伊沢の腕を掴んだ。
腕を引っ張り、輪の中から連れ出す。突然お目当ての男を攫われた女性陣が、驚きの声を上げた。
伊沢を連れて席に戻ると、みどりに挨拶した。
「ごめん、みどりさん。帰るね」
「いいわよ。また会いましょうね」
みどりは笑顔で見送ってくれた。
状況を分かっていない伊沢は、大樹とみどりを交互に見る。
引き出物の紙袋を持つと、大樹は伊沢の手を引いたままレストランを出た。
レストランはビルの中にあったため、ビルの廊下へと出た。オフィスビルの一階なので、日曜日だと廊下にはまったく人の姿がない。
「急にどうしたんだ?」
立ち止まった大樹に、もう一度伊沢が訊ねた。
大樹は掴んだ伊沢の腕を離さずに、振り返った。
「ねえ。俺のこと好き?」
思い込みからくる、偽物の恋だったらどうしよう。
心に襲い掛かった不安は消せず、伊沢の気持ちを確かめたくなる。
「なんだ。結婚式にあてられたのか?」
結婚式の幸せな空気に酔っているのだと、伊沢は思っているようだ。
「好きじゃなかったら、こんな関係になってないだろう」
はっきりとした言葉で言わないことが、余計に大樹を不安にさせた。
衝撃が走り、大樹はみどりを見た。
凄まじい勢いで、記憶が過去に戻る。
確かに、付き合ってもいいと言われただけだ。
みどりのそれまでの振る舞いのせいで、付き合いなさいと言われたものだと途中から思い込んでいた。
大樹がそう思い込んでしまったくらいだから、伊沢もそう思い込んでしまったのではないか。
しかも、勘違いした大樹が押す形で、付き合う方向に流れてしまった。
「………」
自分の勘違いに今更ながらに気付き、大樹は黙り込む。
急に不安が襲ってきた。
伊沢を見ると、話しかけてくる女たちに丁寧に対応を続けていた。
確かに、いつも求めるのは大樹からだ。好きだと思われていると感じることもあるが、伊沢から表すのは常にではない。
大樹が勘違いして誘導したせいで付き合うことになり、恋人になったから好きなのだと思い込んでいるだけだとしたら―――。
それとも、迷ってくれるくらいには、大樹のことを気にしてくれていただろうか。
四年も付き合っているのに、伊沢の気持ちが急に信じられなくなった。
「俺、どうしよう……」
大樹が小さく零した言葉は、周りの声に消されてみどりには聞こえなかった。不安そうに見つめられ、みどりはどうかしたのかと首を傾げる。
大樹はふらりと席を立つと、みどりを残して女性陣に囲まれた伊沢の元に近づいた。
大樹に気付いた伊沢が、不思議そうに見返す。
「どうかしたのか?」
伊沢がそう思うほど、大樹は表情に出ていたようだ。
「帰ろう」
大樹は女性陣の隙間から腕を伸ばすと、伊沢の腕を掴んだ。
腕を引っ張り、輪の中から連れ出す。突然お目当ての男を攫われた女性陣が、驚きの声を上げた。
伊沢を連れて席に戻ると、みどりに挨拶した。
「ごめん、みどりさん。帰るね」
「いいわよ。また会いましょうね」
みどりは笑顔で見送ってくれた。
状況を分かっていない伊沢は、大樹とみどりを交互に見る。
引き出物の紙袋を持つと、大樹は伊沢の手を引いたままレストランを出た。
レストランはビルの中にあったため、ビルの廊下へと出た。オフィスビルの一階なので、日曜日だと廊下にはまったく人の姿がない。
「急にどうしたんだ?」
立ち止まった大樹に、もう一度伊沢が訊ねた。
大樹は掴んだ伊沢の腕を離さずに、振り返った。
「ねえ。俺のこと好き?」
思い込みからくる、偽物の恋だったらどうしよう。
心に襲い掛かった不安は消せず、伊沢の気持ちを確かめたくなる。
「なんだ。結婚式にあてられたのか?」
結婚式の幸せな空気に酔っているのだと、伊沢は思っているようだ。
「好きじゃなかったら、こんな関係になってないだろう」
はっきりとした言葉で言わないことが、余計に大樹を不安にさせた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
SuperHero準「乳首が感じるSuperHero物語」
ryuuza
BL
ゲイ向けヒーロー凌辱小説。男の乳首フェチに特化した妄想エロ小説です。ゲイ向けですが、女性の読者も大歓迎です。ただし、話が進むにつれて表現が過激になっていきます。スカトロ、フィストあり。要注意です。基本、毎日19時に投稿しています。
とろけてなくなる
瀬楽英津子
BL
ヤクザの車を傷を付けた櫻井雅(さくらいみやび)十八歳は、多額の借金を背負わされ、ゲイ風俗で働かされることになってしまった。
連れて行かれたのは教育係の逢坂英二(おうさかえいじ)の自宅マンション。
雅はそこで、逢坂英二(おうさかえいじ)に性技を教わることになるが、逢坂英二(おうさかえいじ)は、ガサツで乱暴な男だった。
無骨なヤクザ×ドライな少年。
歳の差。
年上が敷かれるタイプの短編集
あかさたな!
BL
年下が責める系のお話が多めです。
予告なくr18な内容に入ってしまうので、取扱注意です!
全話独立したお話です!
【開放的なところでされるがままな先輩】【弟の寝込みを襲うが返り討ちにあう兄】【浮気を疑われ恋人にタジタジにされる先輩】【幼い主人に狩られるピュアな執事】【サービスが良すぎるエステティシャン】【部室で思い出づくり】【No.1の女王様を屈服させる】【吸血鬼を拾ったら】【人間とヴァンパイアの逆転主従関係】【幼馴染の力関係って決まっている】【拗ねている弟を甘やかす兄】【ドSな執着系執事】【やはり天才には勝てない秀才】
------------------
新しい短編集を出しました。
詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる