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やっぱりおかしい。
遥はここ数日の幼馴染の言動を思い起こして、ベッドの上で仰向けになった。
夏用の薄い掛け布団は足元にたたんだまま、用無しの体だ。
風呂に入っている間もなにかもやもやとしたものが頭のなかに浮かんで、断片的にシーンとして浮かんでは消える。
いつもならばあんなに喜び勇んで通っていた道場に行っていない。
得意なはずの体育のバスケではただ突っ立ってボールを目で追うだけ。お昼の学食もいつもならば、女は黙ってご飯大盛りと言いながら顔馴染みのおばちゃんと軽く雑談までしているというのに、今日はダイエットしている女子ぐらいしか食べないだろうというサンドイッチセットをちまちま齧っているだけだった。
しかも、どんなごはんでも炭酸ジュースを飲んでいたのに、今日は水を飲んでいた。
どうにもいつもと違いすぎる。
さすがに鈍感でなにごともあまり気にしないたちの彼方ですら、「あいつなんか変なもの食べたんじゃね? 大丈夫か?」などと言っていたし、俺の他にも茜がいつもと違うと、感じている人間はたくさんいる。
一番訳を知っていそうなのが、幼馴染の俺と彼方であるため両手で足りないぐらいの女子生徒に「茜なんかあった? いつもより元気ないっていうか……なんか変よね。なんか話聞いてる?」などと聞かれる。
逆にその理由があるなら俺が知りたい。
茜に直接聞いてみたものの、「いつもとなんにも変わりないです。なにか不都合がありました?」なんて言われて閉口した。
その敬語まがいの話し方からしてすでに変だ。
なんなんだよ一体。
俺みたいにわかりやすく金髪に髪を染めているのならば周りだってそうかイメチェンしたのか、と言うような納得具合だったが、茜の場合はどうにも変だ。
大体イメチェンするってだけなら、茜だってそう言うだろう。
しかしなにもないってのは何なんだ、絶対変なのに本人だけはかたくなにいつもと変わりないと言って澄ましている。
どこが変って、いつもならば女の子らしく振る舞うことなどほとんどない。
なにより大きな胸がコンプレックスだといっていたようにその胸をどう周りの目から誤魔化すかと言うことを考えて、体操服だって大きめ、ブラは喜び勇んで胸を小さく見せるものを買っていたし、何なら先日は「このブラを開発した人に金一封あげて欲しい。どうしたらいいんだろ、やっぱこういうときはファンレターが一番いいって言うし、企業当てにお手紙書こうかな」何と言って文具屋でレターセットを購入していた。
そのぐらい茜にとっては大きな胸というのは頭を悩ます大きな要因であったのに、ここ最近はそれを誇るように胸を張って歩いている。
ぽいんぽいんと揺れる胸を見てしまうのは男のサガだが、見ていて何か、こう。茜はこんな女じゃねーだろと。
運動好きの割にすこし猫背気味だとは思っていたが、そんなところにまで気を配っていたのか、と逆に気がついたぐらいだ。
端的に言えば胸を張って、妙に薄着で、なよなよした雰囲気、といえばいいのか。
快活な様子でもなくなった茜には変な男がうようよ寄ってきていて、今のところはものめづらしさか彼方が毎日一緒に帰ってきている様で変なことにはなっていない様だが。
茜の周囲に対する警戒心がかなり薄くなっている。
ふぅ、とため息をつき部屋の電気を消す。
茜はあんなやつじゃ、ない。なかった。どうしたんだよ。何があった。
意識して呼吸を整えてていき、す、と遥の意識は夢へと消えた。
「おーい! 遥ぁ!」
寝る前に考えていたからか、茜が夢に出てきた。
茜のこと好きすぎかよ。
遥は夢を夢と認識するタイプの人間だ。
遥がイメージしやすいからか、家のダイニングキッチンにいる。
その女の呼ぶ遥の名前がはっとするほど懐かしいイントネーションで、なるほど、遥の名前の呼び方も変わってしまっているのだなと、今更ながら気づいた。
「……お前、茜か?」
目の前に現れたのは豪華なスカート(いや、ドレスと言うべきか)身に纏った、金髪の外国人だ。
明らかに遥かに対して気安い様子で、「あ、わかるー? さすが持つべきものは幼馴染よね! まだなーんにも説明してないのにわかっちゃうなんて。 っつても彼方は全然気づいてくれないけどー。あいつは授業中に寝てるからその間に話できるかと思ったら全然ダメ~。あいつマジで霊感とかそういうのゼロだよね。役に立たねー」と息をするように彼方に対する不満を口にする。
話し方から、話題の内容まで遥のよく知っている茜のものだ。
遥はここ数日の幼馴染の言動を思い起こして、ベッドの上で仰向けになった。
夏用の薄い掛け布団は足元にたたんだまま、用無しの体だ。
風呂に入っている間もなにかもやもやとしたものが頭のなかに浮かんで、断片的にシーンとして浮かんでは消える。
いつもならばあんなに喜び勇んで通っていた道場に行っていない。
得意なはずの体育のバスケではただ突っ立ってボールを目で追うだけ。お昼の学食もいつもならば、女は黙ってご飯大盛りと言いながら顔馴染みのおばちゃんと軽く雑談までしているというのに、今日はダイエットしている女子ぐらいしか食べないだろうというサンドイッチセットをちまちま齧っているだけだった。
しかも、どんなごはんでも炭酸ジュースを飲んでいたのに、今日は水を飲んでいた。
どうにもいつもと違いすぎる。
さすがに鈍感でなにごともあまり気にしないたちの彼方ですら、「あいつなんか変なもの食べたんじゃね? 大丈夫か?」などと言っていたし、俺の他にも茜がいつもと違うと、感じている人間はたくさんいる。
一番訳を知っていそうなのが、幼馴染の俺と彼方であるため両手で足りないぐらいの女子生徒に「茜なんかあった? いつもより元気ないっていうか……なんか変よね。なんか話聞いてる?」などと聞かれる。
逆にその理由があるなら俺が知りたい。
茜に直接聞いてみたものの、「いつもとなんにも変わりないです。なにか不都合がありました?」なんて言われて閉口した。
その敬語まがいの話し方からしてすでに変だ。
なんなんだよ一体。
俺みたいにわかりやすく金髪に髪を染めているのならば周りだってそうかイメチェンしたのか、と言うような納得具合だったが、茜の場合はどうにも変だ。
大体イメチェンするってだけなら、茜だってそう言うだろう。
しかしなにもないってのは何なんだ、絶対変なのに本人だけはかたくなにいつもと変わりないと言って澄ましている。
どこが変って、いつもならば女の子らしく振る舞うことなどほとんどない。
なにより大きな胸がコンプレックスだといっていたようにその胸をどう周りの目から誤魔化すかと言うことを考えて、体操服だって大きめ、ブラは喜び勇んで胸を小さく見せるものを買っていたし、何なら先日は「このブラを開発した人に金一封あげて欲しい。どうしたらいいんだろ、やっぱこういうときはファンレターが一番いいって言うし、企業当てにお手紙書こうかな」何と言って文具屋でレターセットを購入していた。
そのぐらい茜にとっては大きな胸というのは頭を悩ます大きな要因であったのに、ここ最近はそれを誇るように胸を張って歩いている。
ぽいんぽいんと揺れる胸を見てしまうのは男のサガだが、見ていて何か、こう。茜はこんな女じゃねーだろと。
運動好きの割にすこし猫背気味だとは思っていたが、そんなところにまで気を配っていたのか、と逆に気がついたぐらいだ。
端的に言えば胸を張って、妙に薄着で、なよなよした雰囲気、といえばいいのか。
快活な様子でもなくなった茜には変な男がうようよ寄ってきていて、今のところはものめづらしさか彼方が毎日一緒に帰ってきている様で変なことにはなっていない様だが。
茜の周囲に対する警戒心がかなり薄くなっている。
ふぅ、とため息をつき部屋の電気を消す。
茜はあんなやつじゃ、ない。なかった。どうしたんだよ。何があった。
意識して呼吸を整えてていき、す、と遥の意識は夢へと消えた。
「おーい! 遥ぁ!」
寝る前に考えていたからか、茜が夢に出てきた。
茜のこと好きすぎかよ。
遥は夢を夢と認識するタイプの人間だ。
遥がイメージしやすいからか、家のダイニングキッチンにいる。
その女の呼ぶ遥の名前がはっとするほど懐かしいイントネーションで、なるほど、遥の名前の呼び方も変わってしまっているのだなと、今更ながら気づいた。
「……お前、茜か?」
目の前に現れたのは豪華なスカート(いや、ドレスと言うべきか)身に纏った、金髪の外国人だ。
明らかに遥かに対して気安い様子で、「あ、わかるー? さすが持つべきものは幼馴染よね! まだなーんにも説明してないのにわかっちゃうなんて。 っつても彼方は全然気づいてくれないけどー。あいつは授業中に寝てるからその間に話できるかと思ったら全然ダメ~。あいつマジで霊感とかそういうのゼロだよね。役に立たねー」と息をするように彼方に対する不満を口にする。
話し方から、話題の内容まで遥のよく知っている茜のものだ。
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