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5 同級生に声かけを

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澄也の予想通り津島は周りから完全に避けられている。こそこそと津島の入学の経緯を話していたり、澄也との組みあいの話をしているぐらいならばまだいいが、どこそこの悪い連中と連んでいるだの、ヤバい薬に手を出してるだの、女を取っ替え引っ替えして風俗に落としているだの尾鰭のつきまくった嘘っぽいものもある。

そのどれもが噂に過ぎない。

大体そんなわかりやすい「ワル」ならば推薦なんて通るわけがない。

もともとが閉鎖的な学校なのだ。
幼いころからのディープな付き合いの中にいきなり知らない学生を放り込んでも馴染むのは困難だ。

しかも津島は、強かった。
周りを圧倒するほどの絶対的な強さを示した。

人間が神に近づくのを恐れるように、いきなり降ってわいた害虫のように津島は遠巻きにされていた。

それに困ったのは教師陣で、推薦で入ってくるような生徒が辞めてしまっては大変ととある生徒に津島と仲良くしてほしい、とお願いをしたのだった。

「津島、授業に出よう」

目の前のベンチでねそべって全く動かない津島に根気よく話しかけているのは、馬越(まこし)陽太郎だ。陽太郎という名に反してそこまで明るくて元気というわけではないが、まじめでお人好しで、気遣い屋さんという愛すべき男だ。

「授業なんか出ても仕方ねぇだろ」

もう学ぶことなど何もないと言いたげな津島はギロリと馬越を睨みつけた。
その眼力だけで町にいるごろつきなら走って逃げ去るような迫力がある。
が、馬越はまったく意に介さずに、「頼むよ、この通り」と眉を下げて津島を拝んでいる。

数回に一回は津島のほうが馬越をかわいそうに思うのか、授業に出席することもあった。

堂々と席で眠っている津島を見る。
ベンチから教室の机に居眠りの場所が変わっただけじゃないかと思う。
観察している限り雨の日にはいい昼寝場所がないのか、比較的教室にいることが多い。

馬越と俺は仲が良く、一緒にいることが多かった。
馬越は教師陣に頼まれているから、と津島を見つけると律儀に声をかける。

必然的に俺も津島と会話することが増えた。
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