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しおりを挟む「それは……」
きちんと聞いていたつもりだけれど、よくわからない。
レーシーは眉を寄せた。
「もちろん未来視で見たのよ」
そうそう、クララの得意な魔法は未来視だった。
「王子って魔人だったの?」
普通の人間が四十年前と同じ姿でまた現れるなんてことはありえない。
考えられることとすれば、王子は人間ではなくって魔人だった、という話になってくるだろう。
魔族の血が混ざっていれば人間よりもはるかに長い時間を生きることが可能だ。
これまでの経験則から王家というのは割にやらかしてることが多い。
だから、王族の血に魔族の血が混入していて長寿になっているんだ、と言われても驚きは少ない。
「さぁ知らない」
さして興味もないんだろう。
王子が魔人であろうとなかろうとクララの中でただの路傍の石と同じ扱いになっている。
あろうとなかろうと別段どうでもいい存在。
自分で排除するまでもない小物。
「未来視で見えたのは、私が心臓を刺されて……心臓が止まるところよ」
クララは思い出すのか、心臓のあたりを無意識にかばいながら話をしている。
そりゃかわいそうだと思う。
頭のおかしい王子様に刺されて死んでしまう未来を視ただなんて、驚いて動揺するのもわかる。
「だからって私の心臓を使うなよ。しかも無断で!」
「だって死にたくないんだもん。ちょっと刺されないといけないから、心臓貸して~なんて言いに来て素直に貸してくれるわけがないことぐらい私にだってわかる」
だからレーシーが寝てる間に拝借したのよ。
レーシーと私の血液の形が同じなのは前から知ってたし、封印してても解除できると思ってた。
「どうにかしなさいよ」
確定された未来が分かるのだからどうにでもしようがありそうなものだ。
「……わかってるでしょ? 未来視は《確定》 変えられない未来しか見せない。だから私があのいかれた王子に心臓を刺されるのは確定してるのよ」
「……そうだけど……って違う、それにしても私の心臓返しなさいよ、その心臓が止まったら私どうなんのよ!」
レーシーはその確定事項に意義を唱える。
いくら死にたくないからって、血のつながった姉弟子を陥れようとするなんて。
そんな概念がクララには存在しないだろうけども!
「え? あーだから、ロクがいるじゃん、って」
クララは急に説明がめんどくさくなったのか、話しながらも子供っぽくいじいじと高級そうなカーペットの毛足を足先で嬲っている。
「ロクがいるからなに?」
「心臓無くなっちゃったらレーシーがロクから魔力もらえばいいだけじゃんって言ってんの。もー、んなこといちいち説明させないでよね。何となくニュアンスで全部わかってほしいんですけど~いちいちあれは何でこれはなんでって昔と変らないよねーレーシーはー少しは自分の頭で考える癖つけたら?」
確かにクララの考えることはレーシーには思いつかないことが多くて、小さいころは「なんでなんで?」といろいろレーシーに教えてもらっていた気がする。
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