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  リリアン視点

 クランセン伯爵領は広い。
 広さだけなら並みの侯爵家より断然広い。
 だが、そのほとんどが荒れ地だ。
 荒れ地は何も育たない土地とされていたが、私は葡萄の栽培に成功した。
 まあ、神様の揚げ足取りみたいなもんだったけど。
 でもそれをきっかけに荒れ地でも育つ作物を探す。
 葡萄が育つ荒れ地はもうだいぶみつけた。ワインを量産するには十分だ。
 他にも育つ可能性のあるものはリンゴやミカンなどの果物。だけど、ミカンは温暖な気候でないと育たないかもしれない。
 そしてイチゴやスイカ。
 神様はもしかしたら果物と野菜の分類が出来ない人だったかもしれない可能性。
 とにかく帝国には無い苗が多いから他国から取り寄せないと。
 それに人手だ。
 荒れ地の開墾は重労働。
 奴隷を使うしかない。
 奴隷制度はなじめないけれど、犯罪者や借金はどの世界にもある。
 それらの人の更正の手段の一つと考えなくては。
 犯罪奴隷は刑期が終わるまで。
 借金奴隷はお金を返し終わるまでが奴隷期間だ。
 期間が終われば平民として生きる。
 だけど一度奴隷に落ちた者への世間の反応は厳しい。
 新しい職にもなかなか着けず、また犯罪を犯してしまうのはざらだ。
 クランセン領はこれから常に人手が足りない状況になるだろう。
 元奴隷達もここに残り定住するかもしれない。
 その場合、元からの住民とのいざこざや差別は避けられない。治安も荒れるかもしれない。
 クランセン領はわりとのんびりした人が多い。
 それは良い事なのだけど、今後の人口増加を考えると内政を整える必要がある。
 私がこの世界に干渉することで起こる歪みは出来るだけ迷惑をかけないように修正していかなくてはいけないと思う。
 クランセン伯爵も本来変化を好む人ではなかったはず。私が巻き込んでしまった。
 私が現れなければいつまでも亡くなった元妻を想って老人のような生活をしていただろう。
 あんなに若くてイケメンなのに勿体ない。
 私が一人で観賞するのも勿体ない。
 次の社交シーズンには私がプロデュースしてエスコートしてもらおう。
 レイモンド様に見せつけ…いけないけない。レイモンド様は関係ない。
 研究所は国立だけあって立派な建物が用意されていた。
 事務的な事は中央からの役人が取り仕切るけど、研究員は以前から私の元で農産物を作ってくれていた農家の人達を呼び寄せた。
 こんな事を研究する人なんて今までいなかったから誰を研究員にするのも自由だ。
 農家のおじさん達は少々戸惑っていたけれど役職を貰えるのは嬉しそう。
 そんなこんなで研究は進み、あっという間に二年が過ぎた。
 研究は順調だったがめちゃくちゃ忙しく、社交界に顔を出す暇はなかった。
 とにかく人手が足りない。
 隣国からの移民も受け入れ人口は約二倍になり税収は二倍以上になった。
 予想どおり治安は悪化した。
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