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   リリアン視点

 ふふふっ、久しぶりにレイモンド様がお休みもらえたから今日はデート。
 学生時代に連れて来てもらったカフェ。
 レイモンド様覚えてくれてた。
 ここで将来の不安とか仕事について相談に乗ってもらったんだよね。
 今と変わらず笑いもしないし口数も少ないけど、ちゃんと聞いてくれるし、的確な答えをくれる。
 私が困っている時は必ず助けてくれる。
 パーティーにも久しぶりに誘われた。
 ドレスを一緒に選びにブティックに。
 レイモンド様は相変わらず淡い色合いのドレスが好きみたい。
 クリーム色か若草色か…淡い若草色にしよう。
 ちょっと大人っぽく見える。
 靴は濃い緑にしてヒールは…。
「それは高すぎるのではないか?」
 レイモンド様の言葉に店員は、
「レイモンド様の身長がお高いのでこのくらいのほうがバランスがよろしいかと存じますが。」
「いや、リリアンはすぐ転ぶからもう少し低いものにしなさい。」
「えーっ。」
「うふふっ、ではこちらにしましょうね。」
 そう言って低いほうにされた。
 でもこっそりウィンクして高いほうのも包んでくれていた。商売上手ね。
 食事は二人で侯爵邸で。
 こんなに長く一緒にいられたのは何日ぶりだろう。
 この間ちょっと意地悪な言い方したから気にしてくれたのかな。
 食事が終わると温室へ誘われた。
 夜に温室って珍しいと思ったらたくさんの蝋燭に火が灯され幻想的で美しくライトアップされていた。
 揺れる蝋燭の炎で花の影も揺れる。
「ステキ…。」
「気に入ったか?」
「はい。私の為に?」
「ああ、…座ろうか。」
 ラグマットにたくさんのクッションが並べられて、ローテーブルにワインや果物が並べられている。侯爵邸の皆さん頑張ってくれたのね。
「…その、…悪かったと思う。」
「何が?」
「あ…色々と、…謝らなければならないと…。」
 いつも口数は少ないけれど簡潔な答え方をなさるのに、歯切れが悪い。
「私が欲しいのは謝罪の言葉じゃないですよ。」
「どう言えば許してもらえるだろうか?」
「知らないっ、ふふふっ。」
 こんなに狼狽えているレイモンド様を見れたのだからもういいや。
「…リリアン…。」
 抱きしめられる。
「私を嫌わないでくれ。」
 嫌いだなんて思った事はない。
 唇を合わせ遠慮がちについばむ。
 背中に手を回して抱きつくと、更に強く抱きしめて今度は激しく唇を求めてきた。
 私もそれに応えるように舌を絡める。
 その時だった、何かが床に落ちる激しい音が。
 驚いて見ると両手で顔を覆うレティシア様が立ちすくんでいた。足元には水差しが。
「あ、ああっ…そんな…。」
 まるで浮気現場を目撃した妻のようなリアクション。
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