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レイモンド視点
忌々しい。
クラウディアの結婚式でなぜ私がアステローゼ公爵令嬢をエスコートしなくてはならない?
皇帝命令だと?
レティシア・エメリフィナ・アステローゼは皇帝の姪にあたる。おおかた皇帝に泣きついたのだろう。
アステローゼ公爵は度々事業に失敗するが、公爵家という事もあり回りの貴族が捨て置くわけにもいかず助けを出す。それをあり前のように受け取っていたが、ついに誰も手を貸さなくなってしまった。
レティシア嬢の婚約者の家からも融資を受けていたが、度重なる無心にとうとう「我が家を破産させる気か!」と婚約を破棄された。
頼る所の無くなった公爵家を立て直すために、ザカリーがこれが最後という事で条件付きで融資する事になった。
アステローゼ公爵夫妻には隠居していただき、分家筋で優秀だと評判の子爵家の次男を養子に迎え、今後いっさいをその者にまかせるというものだ。アステローゼ公爵家にも嫡男はいたが、公爵家を任せられる器では無いと宰相である父も私も判断した。
当然、アステローゼ夫妻はレティシア嬢を養子と結婚させるつもりでいたが、その養子にはすでに妻がいて妻と別れるくらいなら養子にはならないと拒否された。
当然だ。これから立て直していかなくてはならない面倒な公爵家を押し付けられた上、なんの役にも立たない公女まで面倒をみるなどお断りだろう。
そこでアステローゼ夫妻も皇帝もレティシア嬢の嫁ぎ先を探しているという訳だ。
だが、誰が好き好んで地雷つき花嫁をもらいたがる?
レティシア嬢には気の毒だが、娘の嫁ぎ先にアステローゼ夫妻が無心に来ない保証は無い。
栗色の髪にエメラルドの瞳、広い額には知性が伺える。
私に手を取られ頬を染め恥じらう姿は回りの思惑など何も知らない無垢な令嬢といったところだろう。まだ学園に通う17歳だそうだ。
だがそんな事は私には関係無い。
他の令嬢をエスコートする所などリリアンには見せたく無かったから、来るなと言ったのに!
遠くに見えるピンクの頭はリリアンだろう。
ただでさえ視力はいいが、私は無意識に大勢の中から彼女を探してしまう。
…なんという顔をしているのだ。
絶望?悲しみ?怒り?
あれは私に向けられたものか?
違う。
カイル殿下とクラウディア?
まだカイル殿下を想っているのか?
テラスに背を向け、トゥーイと人混みをかき分け帰ってゆく小さな後ろ姿はすぐに見えなくなった。
忌々しい。
クラウディアの結婚式でなぜ私がアステローゼ公爵令嬢をエスコートしなくてはならない?
皇帝命令だと?
レティシア・エメリフィナ・アステローゼは皇帝の姪にあたる。おおかた皇帝に泣きついたのだろう。
アステローゼ公爵は度々事業に失敗するが、公爵家という事もあり回りの貴族が捨て置くわけにもいかず助けを出す。それをあり前のように受け取っていたが、ついに誰も手を貸さなくなってしまった。
レティシア嬢の婚約者の家からも融資を受けていたが、度重なる無心にとうとう「我が家を破産させる気か!」と婚約を破棄された。
頼る所の無くなった公爵家を立て直すために、ザカリーがこれが最後という事で条件付きで融資する事になった。
アステローゼ公爵夫妻には隠居していただき、分家筋で優秀だと評判の子爵家の次男を養子に迎え、今後いっさいをその者にまかせるというものだ。アステローゼ公爵家にも嫡男はいたが、公爵家を任せられる器では無いと宰相である父も私も判断した。
当然、アステローゼ夫妻はレティシア嬢を養子と結婚させるつもりでいたが、その養子にはすでに妻がいて妻と別れるくらいなら養子にはならないと拒否された。
当然だ。これから立て直していかなくてはならない面倒な公爵家を押し付けられた上、なんの役にも立たない公女まで面倒をみるなどお断りだろう。
そこでアステローゼ夫妻も皇帝もレティシア嬢の嫁ぎ先を探しているという訳だ。
だが、誰が好き好んで地雷つき花嫁をもらいたがる?
レティシア嬢には気の毒だが、娘の嫁ぎ先にアステローゼ夫妻が無心に来ない保証は無い。
栗色の髪にエメラルドの瞳、広い額には知性が伺える。
私に手を取られ頬を染め恥じらう姿は回りの思惑など何も知らない無垢な令嬢といったところだろう。まだ学園に通う17歳だそうだ。
だがそんな事は私には関係無い。
他の令嬢をエスコートする所などリリアンには見せたく無かったから、来るなと言ったのに!
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ただでさえ視力はいいが、私は無意識に大勢の中から彼女を探してしまう。
…なんという顔をしているのだ。
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あれは私に向けられたものか?
違う。
カイル殿下とクラウディア?
まだカイル殿下を想っているのか?
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