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56  ホームパーティー(1)

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 アルフレート殿下がどっちのパーティーに行くか揉めていると、
「レティ~帰るよ。」
 ハルトが教室まで迎えにきた。
 もちろんざわつく。
 もうちょっと自分の立場を教えたほうがいいね。
「何してるの?」
「あー、アルフレート殿下が家かお城かどっちのパーティーに行くかで話をしていました。」
「え?家はお城みたいなパーティーしませんよ?ご飯食べるだけですよ。」
「うん、そう言ったよ。ミーシャだけ連れて行くつもりだったんだよ。」
「じゃあ、時間もまだ早いし、家によってからお城に行けば?いいよね?ロズウェル侯爵令嬢。」
 グロリア様は不服そうな顔をしているけど、公爵で理事長のハルトには逆らえない。
「かまいませんわ。」
「よし、決まりだね。
 なら王様も来ますよね?」
 王様わかりやすすぎ。ぱぁって笑顔になってハッとして真顔に戻した。
「行かせてもらうよ。」
 結果、ミーシャと王様とアルフレート殿下と駄々をこねたテリーが来ることになった。
 王様にはロレンス様がついてくるし、アルフレート殿下にはエルマーさんがついてくるから当初の予定よりかなり大人数になってしまった。厨房は大丈夫かな?
 馬車の中でアルフレート殿下がハルトに、
「父からタッナーカ公爵に手紙を預かってまいりました。」
「ありがとうございます。
 プライベートでは私の事はどうぞレオンハルトとお呼び下さい。」
「では、私の事はアルフレートと。
 ところで疑問なのですが、なぜリノス男爵令嬢はレオンハルト様の邸にお住まいなのですか?」
 そうだよね。普通は後見人をしていても家族のいる子供を自宅に住まわす事はしない。
「レティは昔、北部で療養中に世話になった家の令嬢でね。その時の礼として学園に通う間は私が世話をさせてもらっているのだよ。」
「リノス男爵令嬢が魔王の呪いを解いたからですよね。」
「いや、レティは治癒魔法が使えるから情報が混乱してそんな噂が流れてしまったようだね。
 北部に行く前に高名な治癒師や神官に散々治療してもらっていたから、ほとんど治っていたのだよ。
 けれど体力だけはなかなか元に戻らなかったのでしばらく北部で療養していたのです。」
 アルフレート殿下は帝国の皇子だ。きっとあたしの事を何か探っている。
「では、幼い頃のカールセル国王陛下を治癒したというのも誤った情報なのですね。」
 王様に向かって聞く。
「そうだね。僕にはこの国で最高の侍医がついているからね。
 だけど、幼く虚弱だった僕にとって遊び相手になってくれた事は今でも懐かしい思い出だよ。」
 事実を織り混ぜてなんとなくはぐらかした話をしている。
 あたしの尋常じゃない能力は帝国に知られては面倒だから。
 公爵邸に着くと執事のジュリアーノが出迎えてくれる。
「メセテア神官長が先にいらしてお待ちです。」
「ああ、来てくれたか。」
 神官長まで呼んだの?
 あたしの入学祝いにしちゃ、ちょっと顔ぶれが豪華すぎない?
 客間へと皆を案内する廊下でふいに、エルマーさんが足を止めアルフレート殿下の前に出て剣を抜いた。
「何奴!」
 振り下ろされた剣は軽くいなされエルマーさんの喉元に刃が当てられた。
「フッ、帝国の犬は躾がなっておらぬな。」
 メィリィだ。
「エルマーさん。
 その人、公爵夫人だから剣はしまって下さい。」
「え?」
「メィリィも、暗器はしまって。
 もー、気配を消して近づくから誤解されるんだよ。」
 顔面蒼白なエルマーさん。
「申し訳ございません!」
 ハルトは、
「いいよ、どのような場所でも警戒を怠らないのは偉いよ。
 家の奥さんも忍び寄るのは悪い癖だから。」
 まったくだよ。
 でも以前よりは貴婦人らしくなった。
 ちゃんとドレスも着て動きも洗練されて。だから武器を構えると正直カッコいい。
 ハルトも内心家の奥さんカッコいいとか思ってんだよ。嬉しそうな顔しちゃって。
 だけどアルフレート殿下も失敗したと思っているようで、
「申し訳ございませんでした。
 エルマーも新しい環境に緊張しているようで過剰に反応してしまったようです。」 
 ハルトとメィリィがちょっと変わっていることは皆知っているから本当に気にしていないのに。だけど、これが他の上位貴族だったら国際問題になるのだろうね。
 ハルトは、
「本当に大丈夫ですよ。
 家の奥さんはそれくらいの攻撃はなんとも無いですから。蚊ほどでも無く、そよ風程度だから。」
 おい、それじゃエルマーさんの立つ瀬が無くなる。かわいそうに、しょぼんとしちゃったよ。
「あ、そう言えば皇帝陛下からの手紙に飼い犬が迷子になっているって書いてあったけど、メィリィ知らない?」
「どこの駄犬かは存じませんが、レティの回りを嗅ぎまわっていた変態ならば捕らえました。」
 そんなの居たんだ。知らなかった。
「…始末してないよね?」
「身元を明かさないので犯罪奴隷として北部へ送りました。
 優秀な間者ならば脱走してすぐに国へ帰ると思ったのですが、未だにノースエルデェルで開拓作業に従事しているそうです。」
 リノス領の奴隷は待遇がいいからね。
 軽度の犯罪者ならば奴隷紋も刻まないである程度自由に暮らせている。
「そうか。じゃあ帝国の密偵じゃなかったみたいだね。」
「そうですわ。
 まさか帝国の密偵が貴婦人に捕らえられて奴隷生活に馴染んでいるなんてあり得ませんわ。おほほほほ!」
 
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