56 / 63
56 ホームパーティー(1)
しおりを挟む
アルフレート殿下がどっちのパーティーに行くか揉めていると、
「レティ~帰るよ。」
ハルトが教室まで迎えにきた。
もちろんざわつく。
もうちょっと自分の立場を教えたほうがいいね。
「何してるの?」
「あー、アルフレート殿下が家かお城かどっちのパーティーに行くかで話をしていました。」
「え?家はお城みたいなパーティーしませんよ?ご飯食べるだけですよ。」
「うん、そう言ったよ。ミーシャだけ連れて行くつもりだったんだよ。」
「じゃあ、時間もまだ早いし、家によってからお城に行けば?いいよね?ロズウェル侯爵令嬢。」
グロリア様は不服そうな顔をしているけど、公爵で理事長のハルトには逆らえない。
「かまいませんわ。」
「よし、決まりだね。
なら王様も来ますよね?」
王様わかりやすすぎ。ぱぁって笑顔になってハッとして真顔に戻した。
「行かせてもらうよ。」
結果、ミーシャと王様とアルフレート殿下と駄々をこねたテリーが来ることになった。
王様にはロレンス様がついてくるし、アルフレート殿下にはエルマーさんがついてくるから当初の予定よりかなり大人数になってしまった。厨房は大丈夫かな?
馬車の中でアルフレート殿下がハルトに、
「父からタッナーカ公爵に手紙を預かってまいりました。」
「ありがとうございます。
プライベートでは私の事はどうぞレオンハルトとお呼び下さい。」
「では、私の事はアルフレートと。
ところで疑問なのですが、なぜリノス男爵令嬢はレオンハルト様の邸にお住まいなのですか?」
そうだよね。普通は後見人をしていても家族のいる子供を自宅に住まわす事はしない。
「レティは昔、北部で療養中に世話になった家の令嬢でね。その時の礼として学園に通う間は私が世話をさせてもらっているのだよ。」
「リノス男爵令嬢が魔王の呪いを解いたからですよね。」
「いや、レティは治癒魔法が使えるから情報が混乱してそんな噂が流れてしまったようだね。
北部に行く前に高名な治癒師や神官に散々治療してもらっていたから、ほとんど治っていたのだよ。
けれど体力だけはなかなか元に戻らなかったのでしばらく北部で療養していたのです。」
アルフレート殿下は帝国の皇子だ。きっとあたしの事を何か探っている。
「では、幼い頃のカールセル国王陛下を治癒したというのも誤った情報なのですね。」
王様に向かって聞く。
「そうだね。僕にはこの国で最高の侍医がついているからね。
だけど、幼く虚弱だった僕にとって遊び相手になってくれた事は今でも懐かしい思い出だよ。」
事実を織り混ぜてなんとなくはぐらかした話をしている。
あたしの尋常じゃない能力は帝国に知られては面倒だから。
公爵邸に着くと執事のジュリアーノが出迎えてくれる。
「メセテア神官長が先にいらしてお待ちです。」
「ああ、来てくれたか。」
神官長まで呼んだの?
あたしの入学祝いにしちゃ、ちょっと顔ぶれが豪華すぎない?
客間へと皆を案内する廊下でふいに、エルマーさんが足を止めアルフレート殿下の前に出て剣を抜いた。
「何奴!」
振り下ろされた剣は軽くいなされエルマーさんの喉元に刃が当てられた。
「フッ、帝国の犬は躾がなっておらぬな。」
メィリィだ。
「エルマーさん。
その人、公爵夫人だから剣はしまって下さい。」
「え?」
「メィリィも、暗器はしまって。
もー、気配を消して近づくから誤解されるんだよ。」
顔面蒼白なエルマーさん。
「申し訳ございません!」
ハルトは、
「いいよ、どのような場所でも警戒を怠らないのは偉いよ。
家の奥さんも忍び寄るのは悪い癖だから。」
まったくだよ。
でも以前よりは貴婦人らしくなった。
ちゃんとドレスも着て動きも洗練されて。だから武器を構えると正直カッコいい。
ハルトも内心家の奥さんカッコいいとか思ってんだよ。嬉しそうな顔しちゃって。
だけどアルフレート殿下も失敗したと思っているようで、
「申し訳ございませんでした。
エルマーも新しい環境に緊張しているようで過剰に反応してしまったようです。」
ハルトとメィリィがちょっと変わっていることは皆知っているから本当に気にしていないのに。だけど、これが他の上位貴族だったら国際問題になるのだろうね。
ハルトは、
「本当に大丈夫ですよ。
家の奥さんはそれくらいの攻撃はなんとも無いですから。蚊ほどでも無く、そよ風程度だから。」
おい、それじゃエルマーさんの立つ瀬が無くなる。かわいそうに、しょぼんとしちゃったよ。
「あ、そう言えば皇帝陛下からの手紙に飼い犬が迷子になっているって書いてあったけど、メィリィ知らない?」
「どこの駄犬かは存じませんが、レティの回りを嗅ぎまわっていた変態ならば捕らえました。」
そんなの居たんだ。知らなかった。
「…始末してないよね?」
「身元を明かさないので犯罪奴隷として北部へ送りました。
優秀な間者ならば脱走してすぐに国へ帰ると思ったのですが、未だにノースエルデェルで開拓作業に従事しているそうです。」
リノス領の奴隷は待遇がいいからね。
軽度の犯罪者ならば奴隷紋も刻まないである程度自由に暮らせている。
「そうか。じゃあ帝国の密偵じゃなかったみたいだね。」
「そうですわ。
まさか帝国の密偵が貴婦人に捕らえられて奴隷生活に馴染んでいるなんてあり得ませんわ。おほほほほ!」
「レティ~帰るよ。」
ハルトが教室まで迎えにきた。
もちろんざわつく。
もうちょっと自分の立場を教えたほうがいいね。
「何してるの?」
「あー、アルフレート殿下が家かお城かどっちのパーティーに行くかで話をしていました。」
「え?家はお城みたいなパーティーしませんよ?ご飯食べるだけですよ。」
「うん、そう言ったよ。ミーシャだけ連れて行くつもりだったんだよ。」
「じゃあ、時間もまだ早いし、家によってからお城に行けば?いいよね?ロズウェル侯爵令嬢。」
グロリア様は不服そうな顔をしているけど、公爵で理事長のハルトには逆らえない。
「かまいませんわ。」
「よし、決まりだね。
なら王様も来ますよね?」
王様わかりやすすぎ。ぱぁって笑顔になってハッとして真顔に戻した。
「行かせてもらうよ。」
結果、ミーシャと王様とアルフレート殿下と駄々をこねたテリーが来ることになった。
王様にはロレンス様がついてくるし、アルフレート殿下にはエルマーさんがついてくるから当初の予定よりかなり大人数になってしまった。厨房は大丈夫かな?
馬車の中でアルフレート殿下がハルトに、
「父からタッナーカ公爵に手紙を預かってまいりました。」
「ありがとうございます。
プライベートでは私の事はどうぞレオンハルトとお呼び下さい。」
「では、私の事はアルフレートと。
ところで疑問なのですが、なぜリノス男爵令嬢はレオンハルト様の邸にお住まいなのですか?」
そうだよね。普通は後見人をしていても家族のいる子供を自宅に住まわす事はしない。
「レティは昔、北部で療養中に世話になった家の令嬢でね。その時の礼として学園に通う間は私が世話をさせてもらっているのだよ。」
「リノス男爵令嬢が魔王の呪いを解いたからですよね。」
「いや、レティは治癒魔法が使えるから情報が混乱してそんな噂が流れてしまったようだね。
北部に行く前に高名な治癒師や神官に散々治療してもらっていたから、ほとんど治っていたのだよ。
けれど体力だけはなかなか元に戻らなかったのでしばらく北部で療養していたのです。」
アルフレート殿下は帝国の皇子だ。きっとあたしの事を何か探っている。
「では、幼い頃のカールセル国王陛下を治癒したというのも誤った情報なのですね。」
王様に向かって聞く。
「そうだね。僕にはこの国で最高の侍医がついているからね。
だけど、幼く虚弱だった僕にとって遊び相手になってくれた事は今でも懐かしい思い出だよ。」
事実を織り混ぜてなんとなくはぐらかした話をしている。
あたしの尋常じゃない能力は帝国に知られては面倒だから。
公爵邸に着くと執事のジュリアーノが出迎えてくれる。
「メセテア神官長が先にいらしてお待ちです。」
「ああ、来てくれたか。」
神官長まで呼んだの?
あたしの入学祝いにしちゃ、ちょっと顔ぶれが豪華すぎない?
客間へと皆を案内する廊下でふいに、エルマーさんが足を止めアルフレート殿下の前に出て剣を抜いた。
「何奴!」
振り下ろされた剣は軽くいなされエルマーさんの喉元に刃が当てられた。
「フッ、帝国の犬は躾がなっておらぬな。」
メィリィだ。
「エルマーさん。
その人、公爵夫人だから剣はしまって下さい。」
「え?」
「メィリィも、暗器はしまって。
もー、気配を消して近づくから誤解されるんだよ。」
顔面蒼白なエルマーさん。
「申し訳ございません!」
ハルトは、
「いいよ、どのような場所でも警戒を怠らないのは偉いよ。
家の奥さんも忍び寄るのは悪い癖だから。」
まったくだよ。
でも以前よりは貴婦人らしくなった。
ちゃんとドレスも着て動きも洗練されて。だから武器を構えると正直カッコいい。
ハルトも内心家の奥さんカッコいいとか思ってんだよ。嬉しそうな顔しちゃって。
だけどアルフレート殿下も失敗したと思っているようで、
「申し訳ございませんでした。
エルマーも新しい環境に緊張しているようで過剰に反応してしまったようです。」
ハルトとメィリィがちょっと変わっていることは皆知っているから本当に気にしていないのに。だけど、これが他の上位貴族だったら国際問題になるのだろうね。
ハルトは、
「本当に大丈夫ですよ。
家の奥さんはそれくらいの攻撃はなんとも無いですから。蚊ほどでも無く、そよ風程度だから。」
おい、それじゃエルマーさんの立つ瀬が無くなる。かわいそうに、しょぼんとしちゃったよ。
「あ、そう言えば皇帝陛下からの手紙に飼い犬が迷子になっているって書いてあったけど、メィリィ知らない?」
「どこの駄犬かは存じませんが、レティの回りを嗅ぎまわっていた変態ならば捕らえました。」
そんなの居たんだ。知らなかった。
「…始末してないよね?」
「身元を明かさないので犯罪奴隷として北部へ送りました。
優秀な間者ならば脱走してすぐに国へ帰ると思ったのですが、未だにノースエルデェルで開拓作業に従事しているそうです。」
リノス領の奴隷は待遇がいいからね。
軽度の犯罪者ならば奴隷紋も刻まないである程度自由に暮らせている。
「そうか。じゃあ帝国の密偵じゃなかったみたいだね。」
「そうですわ。
まさか帝国の密偵が貴婦人に捕らえられて奴隷生活に馴染んでいるなんてあり得ませんわ。おほほほほ!」
0
お気に入りに追加
320
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる