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43 帰郷

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ロズウェル侯爵令嬢は質素倹約に努めているそうだが、今はその時期じゃない。
 魔王の脅威が無くなった今は、経済を発展させたほうがいい。
 貴族の華々しい生活を庶民が憧れ、少しでも近づきたいと金を稼ぐ。
 貴族の消費が増えればそれだけ生産も増やさなきゃならなくなる。生産者達の収入も増える。そして税収も増える。
 ふえた税収で公共事業をする。また庶民の収入は増える。
 そうやって経済成長をする。
 そして懐かしのバブル期よ!
 貴族も庶民もみんな弾け飛ぶ。
 なんてね。
 そこまではいかなくてもいいけど、未来に希望が持てる時代にしたいじゃないか。

 王都からノースエルデェルに帰る日がきた。
 なんとドラゴンに乗って帰るのだ。
 ウキウキが止まらない。
「レティ…楽しそうだね。」
 しまった。
 ドラゴンのいる中庭に向かう廊下を後ろからついてくる、昨日からメソメソなウィル。
 引き留めはしないけど、ぶつぶつ文句を言っている。
「またすぐに会えますって。」
「すぐって?」
「んー…高等学校に通うのは7年後?」
「そんなのすぐじゃないじゃないか!」
 あー年寄りは一年たつのが早いからね。
「あ、でもドラゴンに一人で乗れるようになったらちょくちょく来るから。」
「ドラゴンは叔父上しか乗れないんじゃないの!なんでレティは乗れるの?」
「仲良くなったから?」
 暇な時に遊んであげたらリザードンとはかなり仲良くなった。
 動物は力関係に敏感だ。
 ハルトよりあたしが上だと認識しているらしい。
「…行かないで。」
 手をにぎる。
「王様…。」
「行っちゃ嫌だ!」
 やっと言った。
「それはわがままですよ。」
「え?」
「ちゃんとわがままが言えるようになったじゃないですか!」
「あれ?…これがわがまま?」
「そうですよ。王様はもっとわがままになって下さい。」
「そうか!自分の本当の気持ちを言うんだ!」
「そう!生きるって事は欲の塊なんだから!
 食べて、寝て、遊んで!やりたい事をやりたいって言うんです。」
 もう死んだ目をした無気力な王様じゃない。
「レティ!僕はさみしい!レティがいなくなるのがさみしいんだ!」
 泣きながら笑っている。
「さみしいも嬉しいも楽しいも、全部レティが教えてくれた。
 ありがとう…さみしいけど、ありがとう!」
 強く抱きしめられた。
 おそらく誰かと強くふれ合ったのもこれが初めてなのだろう。
 人の温かさも忘れないように。そう思いながらあたしも強く抱きしめて頭を撫でた。

 中庭ではハルトとドラゴンが待つ。
「お別れはすみましたか?」
 鼻水を垂らした王様に聞く。
「ああ、レティシア、世話になった。
 元気でな。(ズビッ)」
「はい、王様もお元気で。」
 最後に思いっきり回復をかけてさよならした。
 ハルトと二人でドラゴンの背にに乗る。
 これよ、これ!
 いかにも異世界の冒険って感じ。
 あっという間に王都は小さくなり野山を越えてノースエルデェルへ。
 だけど、
「…ハルト、思ってたのと違う。」
 寒い!耳がちぎれそう!鼻水が凍る!
 上空の冷たい風をまともに受けている。
「だろ?この世界は勇者に優しくないんだよ。」
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