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39 魔王討伐裏話
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「魔王討伐の時も祝福したんですよね?」
「もちろんです。だから生きて帰れたのですよ。」
「あーまあ、そうだな。」
お互い顔を見合わせて気まずそうに苦笑いするハルトとメセテア神官長にお兄様が、
「これはぜひとも英雄の生きた伝説をお聞きしたいですね。」
「うーん…大変だったよ。で、世に知られているような格好いい話しじゃないよ。」
確かに世の中には魔王討伐物語として広く知られている、それはそれは勇猛果敢な武勇伝が。
しぶしぶと真実の魔王討伐物語を語りだした。
「まず、帝国の大神殿に行って聖剣を 借 り てきます。」
は?何?レンタルなの?
「昔は勇者が使い終わったらダンジョンや山頂に突き刺してきたんだけど、勇者じゃない人には抜けないからって腹いせに柄の宝石とか金箔剥がしてっちゃうんだよね。だから大神殿で保管することになったんだ。」
「ふ、ふーん。」
いきなり伝説とは違うんだ。
「次は仲間を集めます。
こちらにいらっしゃる神官様と魔法使いとタンク役の騎士二人と暗殺者のメィリィとステファンが仲間になってくれました。」
ステファン要る?
「ここでステファン要る?なんて疑問がわくかもしれませんが、ステファン大事ですよ!」
うっ、うん。
「ステファンはとっても大きな空間収納魔法が使えます。彼なしでは快適な旅ができません。そして彼はお茶も入れるし、料理もできます。」
なるほどな。快適な討伐だったんだ。
「肝心の戦闘ですが、まずメセテア神官が全員に祝福をします。これで戦闘力が上がり怪我もしにくくなります。
次はメィリィとその手下達が敵の所在を調べ、雑魚を片付けます。
大型のモンスターは聖剣じゃないと倒せないので、」
ここからがハルトの活躍か!
「タンクの騎士二人が引き付け痛め付けます。
魔法使いのシンディもテアとステファンを守りつつ攻撃します。弱りきった所で俺がとどめを刺します。
と、だいたいこんな流れで魔王も倒せちゃいました。最後に呪い貰っちゃったけどね。」
「「…。」」
「だっ、だってねレティ、死んだら生き返れないんだよ?この世界は勇者に優しくないんだよ?」
いや、いいさ。カッコ悪くても生きてる事が大事だ。
「そういえば、メィリィの体は傷だらけだったし、ハルトの呪いも解けなかったけど、魔物から受けた攻撃って特別なの?」
「いいえ、私は治癒とか解呪は苦手ですので。」
にこやかに答えるメセテア神官長様。
「そうそう、こいつは祝福以外はポンコツだから。」
同じくへらっと笑うハルト。
「神官ってさー危ない所へは行きたがらないんだよね。あのころはテアはまだ下っぱ神官で名声とお金が欲しかったから付き合ってくれたんだ。」
「ええ、おかげさまで今は神官長でこうして自由に王城にも遊びにこれます。」
なるほどね。物語はかなり脚色されているってことだ。でも子供たちの夢を壊さないように真実は知らされないほうがいいね。
魔法使い、いたんだ。本当ならそこはあたしのポジションだったのに。
「魔法使いさんや騎士さんはどうしてるの?」
「魔法使いのシンディは森に帰ったよ。普段は薬草の研究をしているんだ。いつから森にいるのかも何歳なのかも不明なんだ。前回も前々回の魔王討伐にも参加している。魔王という存在そのものに並々ならぬ恨みがあるらしい。」
不死?それとも代替わりしているのか。
そんな昔からの存在ならあたしが出る幕はなかったんだね。
「騎士のライオネルとリチャードはバカンスをかねて南の島のダンジョン巡りをしているよ。あの二人は実力はあるんだけど、二人の世界が濃すぎて周りには受け入れられにくくてね。」
「お互いの筋肉に惚れあっていましたからね。」
「筋肉以外信じていないからね。」
「暑苦しいんですよね。」
「でもダンジョン巡りいいなー。俺も身の丈にあった冒険がしたいよ。魔王相手じゃないやつ。」
「一人で行ってね。」
「お前は連れていかないよーあんまり役に立たないもん。」
「はぁ?俺が祝福したからみんな生きて帰ってこれたんだからなっ!」
「「あっ!…。」」
取り繕っても、もうこの二人の素はばれちゃってるよ。
「こほんっ…つまり、まあ、いろいろ大変だったって話だよね。」
あたしとお兄様がいるの忘れてたな。
二人が仲良しだって事はわかったよ。
それに、ハルトはなんにも変わってないね。呆れるけど、ちょっとホッとするよ。
リアルな冒険はやっぱりゲームみたいなわけにはいかないね。
「もちろんです。だから生きて帰れたのですよ。」
「あーまあ、そうだな。」
お互い顔を見合わせて気まずそうに苦笑いするハルトとメセテア神官長にお兄様が、
「これはぜひとも英雄の生きた伝説をお聞きしたいですね。」
「うーん…大変だったよ。で、世に知られているような格好いい話しじゃないよ。」
確かに世の中には魔王討伐物語として広く知られている、それはそれは勇猛果敢な武勇伝が。
しぶしぶと真実の魔王討伐物語を語りだした。
「まず、帝国の大神殿に行って聖剣を 借 り てきます。」
は?何?レンタルなの?
「昔は勇者が使い終わったらダンジョンや山頂に突き刺してきたんだけど、勇者じゃない人には抜けないからって腹いせに柄の宝石とか金箔剥がしてっちゃうんだよね。だから大神殿で保管することになったんだ。」
「ふ、ふーん。」
いきなり伝説とは違うんだ。
「次は仲間を集めます。
こちらにいらっしゃる神官様と魔法使いとタンク役の騎士二人と暗殺者のメィリィとステファンが仲間になってくれました。」
ステファン要る?
「ここでステファン要る?なんて疑問がわくかもしれませんが、ステファン大事ですよ!」
うっ、うん。
「ステファンはとっても大きな空間収納魔法が使えます。彼なしでは快適な旅ができません。そして彼はお茶も入れるし、料理もできます。」
なるほどな。快適な討伐だったんだ。
「肝心の戦闘ですが、まずメセテア神官が全員に祝福をします。これで戦闘力が上がり怪我もしにくくなります。
次はメィリィとその手下達が敵の所在を調べ、雑魚を片付けます。
大型のモンスターは聖剣じゃないと倒せないので、」
ここからがハルトの活躍か!
「タンクの騎士二人が引き付け痛め付けます。
魔法使いのシンディもテアとステファンを守りつつ攻撃します。弱りきった所で俺がとどめを刺します。
と、だいたいこんな流れで魔王も倒せちゃいました。最後に呪い貰っちゃったけどね。」
「「…。」」
「だっ、だってねレティ、死んだら生き返れないんだよ?この世界は勇者に優しくないんだよ?」
いや、いいさ。カッコ悪くても生きてる事が大事だ。
「そういえば、メィリィの体は傷だらけだったし、ハルトの呪いも解けなかったけど、魔物から受けた攻撃って特別なの?」
「いいえ、私は治癒とか解呪は苦手ですので。」
にこやかに答えるメセテア神官長様。
「そうそう、こいつは祝福以外はポンコツだから。」
同じくへらっと笑うハルト。
「神官ってさー危ない所へは行きたがらないんだよね。あのころはテアはまだ下っぱ神官で名声とお金が欲しかったから付き合ってくれたんだ。」
「ええ、おかげさまで今は神官長でこうして自由に王城にも遊びにこれます。」
なるほどね。物語はかなり脚色されているってことだ。でも子供たちの夢を壊さないように真実は知らされないほうがいいね。
魔法使い、いたんだ。本当ならそこはあたしのポジションだったのに。
「魔法使いさんや騎士さんはどうしてるの?」
「魔法使いのシンディは森に帰ったよ。普段は薬草の研究をしているんだ。いつから森にいるのかも何歳なのかも不明なんだ。前回も前々回の魔王討伐にも参加している。魔王という存在そのものに並々ならぬ恨みがあるらしい。」
不死?それとも代替わりしているのか。
そんな昔からの存在ならあたしが出る幕はなかったんだね。
「騎士のライオネルとリチャードはバカンスをかねて南の島のダンジョン巡りをしているよ。あの二人は実力はあるんだけど、二人の世界が濃すぎて周りには受け入れられにくくてね。」
「お互いの筋肉に惚れあっていましたからね。」
「筋肉以外信じていないからね。」
「暑苦しいんですよね。」
「でもダンジョン巡りいいなー。俺も身の丈にあった冒険がしたいよ。魔王相手じゃないやつ。」
「一人で行ってね。」
「お前は連れていかないよーあんまり役に立たないもん。」
「はぁ?俺が祝福したからみんな生きて帰ってこれたんだからなっ!」
「「あっ!…。」」
取り繕っても、もうこの二人の素はばれちゃってるよ。
「こほんっ…つまり、まあ、いろいろ大変だったって話だよね。」
あたしとお兄様がいるの忘れてたな。
二人が仲良しだって事はわかったよ。
それに、ハルトはなんにも変わってないね。呆れるけど、ちょっとホッとするよ。
リアルな冒険はやっぱりゲームみたいなわけにはいかないね。
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