戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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     近衛隊の騎士視点

 ほんの出来心だったんだ。
 俺達、近衛の騎士は女にもてる。
 一晩の慰みに抱くことなど誰でもやっている。
 町娘の格好はしていたが貴族の娘が変装して男漁りをしているのだと思った。
 清潔な服装に綺麗な手足をしていたから。
 女は清楚な佇まいとは裏腹にベッドの上では飢えた獣のように求めた。
 一晩限りの遊びのはずが次の約束までしてしまった。
 次に会った時は街角の路地でもう待てないとドレスの裾をめくり上げ尻をつき出す。
 それならばとそのまま後ろから突き上げればひぃひぃと喘ぎよがった。まだ足りないとその後も連れ込み宿で何度となく絶頂を果たした。
 何度かの夜を過ごしたがあくまでも遊びの女だ。本気で付き合うにはあばずれが過ぎる。
 そう思っていたのに思いもしない場所で女と会ってしまった。
 皇帝陛下の側室であるビアンカ様の後ろに楚々として立つ侍女。別人かと思ったがすれ違い様目配せをしてニヤリと笑った。
 その口元を見てゾクリと悪寒が走った。
 ベッドではあんなにセクシーに見えた口元がなんと邪悪に。 
 後宮の侍女は特別なのだ。
 彼女らはすべて陛下の女。
 手を出すということは陛下のものを盗むということ。
 絶対に知られてはならない。
 だがあんな事になるなんて。
 侍女はある日そっと手紙をよこした。
 狩猟大会の日、マティアス殿下よりも第2皇子ユリシーズ殿下に多く護衛を付ける事とフィリップ隊長を殿下から引き離す事。
 それが何を意味するのかはすぐにわかる。
 その日、なんらかの事をおこすということだ。
 大丈夫だ。それとなく第2皇子が狩りに慣れていない事を申し上げ近衛の人数を増やした。人手不足な為必然的にマティアス殿下の護衛は減る。
 運良く自然にマティアス殿下とアレクシオン様二人を残してその場を離れられた。
 フィリップ隊長が、途中引き返そうとなさったけれどもう遅かった。
 振り返ると竜巻が見え、何事かが起こっていた。
 あわてて引き返すともう辺りは斬り倒された賊の血で濡れていた。
 さすがは元隊長だったアレクシオン様。
 だがお顔が真っ青だ。無理をされたのだろう。
 そういえばアレクシオン様についてもあの女はしつこく聞いてきた。あまりにも他の男のことを気にかけるのに腹が立ち「最近やっと食事でナイフを持てるようになったお姫様だよ。」などと貶めた。恥ずかしい事だ。
 マティアス殿下は?よかったご無事だ。
 殿下に対しての忠誠心は変わっていない。
 つもりだ。
 だが裏切りには違いない。
 そうだ近衛隊を辞めよう。
 実家に帰れば働き口くらいみつかる。
 だが、簡単にはいかなかった。
 女からまた手紙が。
「すぐに姿を消すなど愚かな事はなさらないで下さい。怪しまれるに決まってますから。また連絡いたします。熱い夜をお忘れにならないでね。」 …忘れたい。
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