戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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      リタ視点

 戴冠式を前に貴族の親睦を深めるため狩猟大会が行われる。
 今日わたくしは婚約者候補として公にお披露目されるのだが朝から慌ただしい。
 ヴァイオレット侯爵夫人の手先達が訪れ身支度を手伝ってくれている。
 コルセットで締め上げ上品な淡い若草色のドレスを着せられて、髪を結い上げる。
「ああっ、前髪は上げないで!」
「どうしてでございます?大変綺麗な形の額ですのに。」
 実はわたくし左右の眉の形が不揃いなのです。
 子供の頃からのコンプレックスなのでいつも前髪で隠していたのです。
「眉でございますか?剃って描けばよろしいのですわ。(ゾリッ)」
「ぎゃー!」
 有無を言わさず剃り落とされた。
 それからあれよあれよという間に化粧と髪のセットは終わったのだが…これがわたくし?
 さすが侯爵夫人の侍女達。
「リタ様はお顔の配置は理想的なのでございますよ。それぞれの主張が足りないだけで。」
 地味でしょぼいってことね。
 ヴァイオレット侯爵夫人と共に狩猟会場へ向かう。
 狩猟大会は男性のエスコートは無い。
 狩の為の準備があるから。
 女性は仲の良い女友達や保護者と会場入りする。会場といっても貴族の社交の場なのでガーデンパーティー形式だ。狩よりもこっちがメインかも。
 女性達は応援したい男性にリボンを贈る。
 恋人や夫、家族だけでなくこの時ばかりは只のファンでも贈る事ができる。
 リボンが多ければそれだけ人気があるという事。
 でも上位貴族は別区画の天幕に控えているため、親しい関係の女性からのみ受け取る事ができる。
 皇太子殿下の天幕に招待された。
 侯爵夫人と深々とカーテシーをする。
「「皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」」
 そこには殿下と側近のフィリップ卿とトーマス卿。
 なんとアレクシオン様とテリオス卿までいらっしゃるとは。
 神々しい!この天幕はわたくしなんかが足を踏み入れてはいけない聖域。
 マティアス殿下が、
「よく来てくれた、ヴァイオレット侯爵夫人。…ところでリタ嬢は?」
 ?ここにおりますが?
「まあ、嫌ですわ殿下ったら。おほほほほ。」
 …。
「…失礼した。ヴァイオレット侯爵家には魔法使いがいるのでしたね。見違えました。」
 はあ?失礼ね。
 まあ、わたくしも魔法かと思いましたけどっ。
「マティアス殿下失礼です。」
 アレクシオン様がたしなめると、
「初めましてリタ嬢、とてもお美しい。」
 わたくしの手を取り挨拶してくれる。
 ステキ!なんなのこの中性的な色気は。
 いつも遠くから眺めるだけの方でしたのにこんなに間近に。
 アレクシオン様ほど薔薇とフリルが似合う人はいないわ。
 ぽーっとしているわたくしの隣で殿下は顔をそむけてプルプルしてる。何がそんなにおかしいんですの!
 
 
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