戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 皆には反対されたけど、ジグリアの王子に会いに行くことにした。
 ただでさえ差別を受けているだろうに、私のせいで憎まれているのはかわいそうだからね。
 王子は10歳。
 クク・ルカ・アナ・モ・ジグリアこれが帝国で呼ばれてる名前。本当はもっと長いらしい。
 褐色の肌に赤茶色の髪、真紅の瞳が特徴のジグリア人だが、王族だけは肌は象牙色なのだそうだ。王子は焦げ茶色の髪に真紅の瞳。実は王族は本来のジグリアではなく、他民族がこの土地を治めているのではないかという説もある。
 貴賓室に通された。一応貴賓とされてはいるのね。
 「アンカレラ公爵様。クク・ルカ・アナ・モ・ジグリアでございます。ご挨拶申し上げます。」
 丁寧に帝国式の挨拶をしてくれた。
 美少年キタよ。美少年!
 野性味溢れる美少年だよ。
 例えて言うなら狼の子供がおりこうにお座りして顔色伺っているような。
 大丈夫だよー怖くないよーちょーっと撫でていいかな?ハァハァ…。
「あ…の、公爵様?」
 はっ、いかんいかん!
 この世界の男どもの顔面偏差値どうなってんの?美形多すぎ。
「はじめまして、ではないよね?実は私、記憶が混濁していてあなたの事も覚えてないんだ。ごめんね。」
 にわかに顔が曇り、バッと頭を下げた。
「申し訳ございません!自国の民があなた様を射たと聞きました。こうして生かしていただけているのも公爵様のおかげだというのに。」
 私を射たのはジグリア人ではないというのはまだ調査中で公表はできない。
「あなたのせいではないよ。」
 かわいそうに。こんなに萎縮して。
 味方が誰もいない中、ずっと責められていたのかもしれない。
 ぶるぶると震える肩に手を置くと、びゅんと後退りしゃがみこんだ。
 え?私そんなに怖い?
 あっ、そうか。この子が知っている私は「戦鬼」だ。
「あの…怖くないよ?今の私は何も出来ないんだ。歩くのがやっとで、服も自分で着れないんだよ。はははっ。」
「うっ…うっ…申し訳ございませんっ!毒のせいですよね…うっ…うえ。」
 泣き出してしまった。
 安心させようとしたのが逆効果だったよ。
 ええいもう!抱きしめちゃえ。
 ビクッとしたが、まだ小さい身体はアレクシオンの腕にすっぽりと入った。
「大丈夫。あなたを傷つけるために来たんじゃないから。ククと呼んでもいい?」
 泣きじゃくりながら頷いた。
 もっと早くに会いに来るべきだった。
 味方も知り合いもいない中さぞかし不安だった事だろう。
 
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