戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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「…そうですね信じましょう、記憶を失っていたとしても私の知っているアレクシオン様ならそのような冗談はおっしゃられません。」
 良かった、信じてもらえた。
「ですが、困りました。このような事態、誰に相談すれば…。」
「ごめんなさい、私も誰に話せばいいかわかんなくて、一番信用出来そうなテリオス君に頼ちゃって…。」 
「そんなっ!」
 うつ向く私の手を取り、
「私を信用してくださり嬉しく思います。あっ…すみません、アレクシオン様ではないとおっしゃられても、アレクシオン様に頼りにされたよう感じてしまって。
 しばらく、人に話すのは止めませんか?本来なら私ごときの一存では決めてはならないのですが、事実を公表すればかなりの混乱をきたすと思われます。
 戦は勝利に終わりましたが、まだまだジグリアの抵抗は続くと思うのです。アレクシオン様の戦力と聖女の影響力があるからこそ無駄な抵抗は控えてくれるでしょうが、アレクシオン様の脅威が無くなればどうなるか。
 アレクシオン様は敵も味方にもうこれ以上血を流させたくはないとおっしゃられていました。
 どうか、落ち着くまでアレクシオン様のふりをして下さいませんか?」
 魔物相手でも優しい人だったんだな。
 私も、アレクシオンじゃないって言ってもこの先どう生きて行けばいいかわからないし、しばらくこのままがいいかも。
「わかった。でもこの世界の事何もわからないから助けてね。」
「もちろんでございます。」
 しばらくは記憶を無くしたアレクシオンとして生活することにした。
 毒のせいで体を動かすのもまだ無理だから、その間にこの世界の事を覚えよう。
 まずは気になる聖女との関係だ。
「私の知るかぎりでは聖女セレスティーナ様とは恋愛関係ではございません。
 大きな声では言えませんが、むしろ不信感をいだいておられました。
 聖女にというよりは神殿、「光神聖教」に対してですが。
 此度の戦も、神殿が押しきるかたちで始まりましたから。非道なジグリアを摩族と呼び、神の名の下に制圧すべきだと。」
 摩族と呼び?
「あの、ジグリアは魔物なんですよね?」
 小説ではそうだった。
「ジグリア人は皆、褐色の肌に赤茶色の髪、真紅の瞳をしております。
 定住を嫌い、狩猟生活をしながら生活している者が多い為、野蛮な民族とされていますが、れっきとした人間です。」
 人間?ジグリア人は人だというの?
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