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アルテモーゼ侯爵視点
忌々しいブランシェールめ。
広大な領地を持つ元は王国であった由緒正しい貴族。
とはいえ、今はガルシアンに仕える侯爵として我アルテモーゼとは同等のはずだ。
なのに常に私を見下している。
陛下は勿論、他の貴族も奴を贔屓にしている。
私がどれだけ国に貢献し権力を手にしても奴に対する皆の畏敬の念には及ばない。
私が他の貴族を差し置いて国のトップに君臨出来たのは愛娘ヴァイオレットのおかげだ。
ヴァイオレットがいなければ私は戦もない平和な今でも武器商人として細々と売れもしない武器を売っていたことだろう。
ブランシェールは貴族の中でも特に権威や財力がある。その頃の私はブランシェールに取り入るためにヴァイオレットを嫁がせる事にしていたが、娘は8歳になった頃だったかに、
「ブランシェールに媚びを売っても無駄です。
サミュエルはもうすぐ死にます。婚約は無効になるでしょう。
それよりブランシェールより上になりたくはないですか?
お父様はしがない武器商人で終わる器では無いはずです。
宰相となり、この国を牛耳りましょう。」
およそ8歳の少女とは思えない口調でそんな事を言ってのけた。
その時私はまるで天啓を受けたかのように目が覚めた。
それからもヴァイオレットは私に良きアドバイスを与え続けた。
「貴族は国に多く貢献しているのです。恩恵も多くもらうのは当たり前です。
そんな貴族と平民が同じ人であるなどあり得ないと思いませんか?」
まったくそのとおりだ。
「税金を上げるには理由が必要です。
税金は世の中を良くするために使われるお金でなければなりません。
公共事業を拡大しましょう。
景気も良くなります。」
その通りだった。
そして金が動けば動くだけ貴族の懐が膨らんだ。
貴族達も喜んでいたはずだ。
なのに近頃は何やら世論がおかしな事になってきている。
平民の味方になる貴族が増えてきている気がする。
なぜだ?
皇国からの特使は来るし、ブランシェールは未だに歯向かうし、エドウィン殿下の婚約者であるヴァイオレットにはライバルが現れた。
あのトスカリナはもういないのに。
あの時、子供だと情けをかけたのが間違いだったか。
トスカリナ伯爵の娘がエドウィン殿下に取り入って何やら入れ知恵をしたようだ。
トスカリナの思想は危険だ。
愚かな庶民どもがつけあがり貴族に牙をむくようになる予感がする。
まったく頭が痛い。
「ヴァイオレット、なんとかならんか?」
「私も頭を悩ませているところですわ。」
「やはりあのトスカリナの娘が悪いのか?」
「それだけではありませんわ。」
「だがお前がエドウィン殿下の気持ちを掴んでおけばこのようには、」
「あーっ!もうっ、うるさいわね!」
なんだと?
常に知的で粛々としている我が娘が声を荒げるとは。
お知らせ
毎日読んで下さっている方々には大変感謝いたしております。
申し訳ございませんが、所用につき連休中は少しお休みさせていただきます。
忌々しいブランシェールめ。
広大な領地を持つ元は王国であった由緒正しい貴族。
とはいえ、今はガルシアンに仕える侯爵として我アルテモーゼとは同等のはずだ。
なのに常に私を見下している。
陛下は勿論、他の貴族も奴を贔屓にしている。
私がどれだけ国に貢献し権力を手にしても奴に対する皆の畏敬の念には及ばない。
私が他の貴族を差し置いて国のトップに君臨出来たのは愛娘ヴァイオレットのおかげだ。
ヴァイオレットがいなければ私は戦もない平和な今でも武器商人として細々と売れもしない武器を売っていたことだろう。
ブランシェールは貴族の中でも特に権威や財力がある。その頃の私はブランシェールに取り入るためにヴァイオレットを嫁がせる事にしていたが、娘は8歳になった頃だったかに、
「ブランシェールに媚びを売っても無駄です。
サミュエルはもうすぐ死にます。婚約は無効になるでしょう。
それよりブランシェールより上になりたくはないですか?
お父様はしがない武器商人で終わる器では無いはずです。
宰相となり、この国を牛耳りましょう。」
およそ8歳の少女とは思えない口調でそんな事を言ってのけた。
その時私はまるで天啓を受けたかのように目が覚めた。
それからもヴァイオレットは私に良きアドバイスを与え続けた。
「貴族は国に多く貢献しているのです。恩恵も多くもらうのは当たり前です。
そんな貴族と平民が同じ人であるなどあり得ないと思いませんか?」
まったくそのとおりだ。
「税金を上げるには理由が必要です。
税金は世の中を良くするために使われるお金でなければなりません。
公共事業を拡大しましょう。
景気も良くなります。」
その通りだった。
そして金が動けば動くだけ貴族の懐が膨らんだ。
貴族達も喜んでいたはずだ。
なのに近頃は何やら世論がおかしな事になってきている。
平民の味方になる貴族が増えてきている気がする。
なぜだ?
皇国からの特使は来るし、ブランシェールは未だに歯向かうし、エドウィン殿下の婚約者であるヴァイオレットにはライバルが現れた。
あのトスカリナはもういないのに。
あの時、子供だと情けをかけたのが間違いだったか。
トスカリナ伯爵の娘がエドウィン殿下に取り入って何やら入れ知恵をしたようだ。
トスカリナの思想は危険だ。
愚かな庶民どもがつけあがり貴族に牙をむくようになる予感がする。
まったく頭が痛い。
「ヴァイオレット、なんとかならんか?」
「私も頭を悩ませているところですわ。」
「やはりあのトスカリナの娘が悪いのか?」
「それだけではありませんわ。」
「だがお前がエドウィン殿下の気持ちを掴んでおけばこのようには、」
「あーっ!もうっ、うるさいわね!」
なんだと?
常に知的で粛々としている我が娘が声を荒げるとは。
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