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 あーやらかしたわ。
 ど田舎の修道院に追いやられるみすぼらしい馬車の中であたしは反省していた。
 さほど裕福でもない子爵家の庶子として生まれ、下町で育ったあたしは、母が死んで子爵家に引きとられた。
 そこで神聖魔法が使えるとわかると今度は家の名誉の為と、神殿に売られた。
 どうやら聖女だったらしい。
 神殿からは学園にも通わせてもらえたが、卒業すれば一生神様に仕えなくてはならないんだという。
 聖女にも色々あって、上位貴族やなんかに聖女の証が現れた場合は還俗したまま神殿に通ってお祈りするだけでいいらしい。
 上位貴族と結婚が決まっている場合もそうなる。
 あたしは必死で結婚相手を探したよ。
 だって一生を、神様になんか捧げたくはない。神様があたしになんかしてくれたわけでもないのに。
 そこで出会ったのが王子様。
 エドウィン・ジークハルト・ガルシアン皇太子殿下だった。
 一目で恋に落ちたよ。
 金髪にサファイアの瞳でとろけるような笑顔。
 だけど当然の事ながら婚約者がいるんだよね。
 黒髪にアメジストの瞳の陰気な女。
 ヴァイオレット・アルテモーゼ侯爵令嬢。
 才女だかなんだか知らないけど、ずっとエディの事をバカにしてて、あっ、エディってのは皇太子の愛称ね。
 とにかく、エディの事ないがしろにしてたくせに、あたしと仲良くしはじめたら急に悲劇のヒロインぶっちゃってさ、他の令嬢も味方につけてあたしの噂をあることないことでっち上げて。
 そんな中でもエディだけはあたしの事信じてくれてさ、卒業パーティーで婚約破棄してあたしを選んでくれたのに、何故だかエディは廃嫡されて、何故だか第二王子がヴァイオレットに結婚申し込んで、何故だかエディは隣国のババアの王配にされて、そして何故だかあたしはど田舎の修道院行き。
 あたしはいいんだよ、お祈りする場所が神殿から修道院に代わっただけだから。食事がちょっと質素になって、服がちょっと地味になるだけだから。
 だけどエディは大丈夫かな。
 隣国の言葉はわからないだろうし、ババアの夜の相手はしなくちゃいけないし。
 エディは可愛くて優しいだけのポンコツだから、本当に心配。
 あたしが好きになんかならなかったら今頃はヴァイオレットと結婚してゆくゆくは王様になれたのかな。悪い事しちゃったな。
 でも放っておけなかったんだよ。
 優秀な婚約者とか優秀な第二王子とかと比べられてばっかりで、自信がなくて孤独でさみしそうで。
 エディにはエディのいいところがいっぱいあるってのに。
 でもこんな事になるならやっぱり間違ってたのかな。
 そんな堂々巡りな考え事をしていたら、馬車が止まった。
 まだ森の中だよね?
 あー…やられたわ。
 馭者は静かにいなくなって、馬車の回りにはいかにもな感じの男達。
「ただ殺す?
 犯してから殺す?」
 やっぱ後者だわな。
「どうせ死ぬんだから教えなさいよ。
 アルテモーゼ侯爵令嬢の差し金か?」
 男達はそうだと答えた。
 そして口々にあたしが悪いと言いやがった。
 エディを好きになったのがそんなに悪い事か?
 犯されながらそんな事ばかり考えた。
 ただエディと笑っていたかっただけなのに。
 最後は身体中痛くていつ死んだのかもわからなかった。
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