黒い聖女

あさいゆめ

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続編 24

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   クリスティア視点

 ダニエルがアリエルと謝罪にに来たそうだ。
 謝罪?護衛を四人も引き連れて?ダニエル一人だけでも怖いのに。
 エメラルダは以外と気が弱い。普通の女の子なのに頑張って聖女を演じている。
 おまけに側近を置きたがらない。
 生涯を共にしなければならないと教えたので慎重になってしまった。
 イデオンは隣町の神殿まで行っていて夕方にならないと帰って来ない。
 仕方ない、援護しにいくしかないわ。
 浄化をやらない責任は私にもあるのだから。
「セゼル、ルシェルをよろしくね。
 結界内にいれば問題はないだろうけど。」
 転移して霊廟の前に安置されている、イザベラ(黒猫)とアマンダ(白兎)に声をかける。
「起きなさい。」
「yes ma,am!」
 二体を携えエメラルダと共に来客室へ。
 久しぶりに見たダニエルは年相応に老けていた。それはそれで渋さが増し、いい男に。
「お座りになって。」
 私が来た事に少し驚いたようだ。
 座る前に、
「この度の事、誠に申し訳なかった。アリエルも反省している。」
「…申し訳ありませんでした。」
 仕方なく言っているようね。
 さっさと椅子に座り、
「何が悪かったか言ってごらんなさい。」
「…。」
 答えを用意して来なかったようね。
 ダニエルが答る、相変わらず甘いわ。
「アリエルはまだ帝国に対しての知識が…。」
「もう三年ですわよ?私の用意した教師陣ならばすっかり淑女になっていなければならないはずよ?
 アリエル、このようにあなたの無知で皇帝が頭を下げる事などあってはならない事です。」
 かっとなったように、身を乗りだし、
「あなたに言われる筋合いはないわ!」
 言うか言わない間にアマンダが喉元に暗器を突きつける。
 帝国の護衛が剣を抜く。
「やめなさい、お前達が敵う相手ではない。」
 ダニエルが制する。
「ごめんなさいね、私に危害を加えようとすると、反射的に防衛するのよ。」
「すまなかった。とにかく、早々に浄化をしてくれないか?」
 これでもう謝った事になったわけ?
「皇帝陛下、あなたも聖女を侮っておりませんか?
 以前ならばあなたに頼まれれば大概の事は叶えてあげました。
 ですが、今は他人ですのよ?
 私がこの場に来なかったらどうするつもりでしたの?
 そのように騎士を引き連れていらして、エメラルダを脅して言う事をきかせるおつもりでしたの?」
「そんなつもりでは…。」
「あなたのほうこそ陛下に失礼じゃない!」
 アリエルが叫ぶ。
 まだわかっていないようね。
「アリエルもそこの若い騎士達もわかってはいないようよ、皇帝陛下。まさかあなたも?」
 ダニエルは床にひざまづき礼をとった。
 比べられるものではないが、皇帝と大神官は同等な地位とされている。
 聖女に地位は無いが、それは特別な存在だから。
 だが、大神官はその聖女に仕える者。
 という事は必然的に皇帝よりも上の地位と考えてよい。
 それなのに長い間、私が皇后であったばかりに皇帝の下のように見られてしまっていた。
 さらにエメラルダは側近を侍らしてはいない。
 私より前の歴代聖女達は大神官と側近を大勢従え女王のようにふるまっていた。
 それが良いとは言えないが、少なくとも威厳は保たれていた。

 
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