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続編 17
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アリエルはすっかりやつれてしまったダニエルとイデオンを比べて見ずにはいられなかった。
ダニエルもまたイデオンの変わりようを見て複雑な思いだった。
魔力の多いイデオンはクリスティアが祝福を与えずとも若く見えていただけだったのだ。そんな事は無いと否定しながらも、ほんのわずかだが世間の噂のように寵愛を与えているのではないかと疑念していた。
だが離婚式で祝福を与えられたイデオンの変化を見て、恥ずかしく思った。本当に二人の間には何もなかったのだと。
「クリスティア様の代理でまいりました。
没収には結婚以前の財産は含まれないはずですのに、元々のクリスティア様の領地まで名義が変わっているのはどういう訳でしょう?」
「すまない、こちらの手違いだろう。すぐに訂正させよう。」
「よろしくお願いいたします。
あの地はクリスティア様にとって思い入れの深い領地です。
多くの税収があるから欲しいのはわかりますが、これ以上クリスティア様を失望させませんように。」
「悪かった。
クリスティアはどうしている?」
「ふふっ、先ほどアリエル様にも同じ事を聞かれました。
お元気でいらっしゃいます。
あなた方は何一つご心配なさる必要はございません。」
「…イデオン、貴様変わったな。」
「大人になりましたから。
大切な方を守るために。
見た目は逆に若くなってしまいましたけどね。」
「後宮の部屋にも結婚前の私物が残っているのだが、持って行ってやってくれないか?」
「それはあなたからの贈り物でしょうか?ならばいらない物でしょう。
よろしければアリエル様にでも差し上げてください。」
イデオンは変わった。
こんなにこやかに嫌味を言う者ではなかった。
その嫌味もアリエルにはわからなかったようだが。見つめられ微笑まれ、ぽぅっとしていた。
皇帝の離婚は皇族の都合で皇后有責とされ、世継ぎを望む者や、妃を送り込みたい貴族達にとっては朗報だったが、一般の庶民や神殿派の貴族にとっては憤りを感じずにはいられなかった。
神殿は民と共にあり、女神の教えを説き、聖なる乙女達は訓練もかねて無償で治癒をする。
浄化なくしてはこの世界は存在しないという事は毎週礼拝に通う庶民のほうが信じていた。
神殿では誰もクリスティアを傷つける者はいない。
だが、日を追うごとにクリスティアはふさぎこむ事が多くなった。
誰にも会いたくないと結界内にこもるようになってしまった。
ダニエルもまたイデオンの変わりようを見て複雑な思いだった。
魔力の多いイデオンはクリスティアが祝福を与えずとも若く見えていただけだったのだ。そんな事は無いと否定しながらも、ほんのわずかだが世間の噂のように寵愛を与えているのではないかと疑念していた。
だが離婚式で祝福を与えられたイデオンの変化を見て、恥ずかしく思った。本当に二人の間には何もなかったのだと。
「クリスティア様の代理でまいりました。
没収には結婚以前の財産は含まれないはずですのに、元々のクリスティア様の領地まで名義が変わっているのはどういう訳でしょう?」
「すまない、こちらの手違いだろう。すぐに訂正させよう。」
「よろしくお願いいたします。
あの地はクリスティア様にとって思い入れの深い領地です。
多くの税収があるから欲しいのはわかりますが、これ以上クリスティア様を失望させませんように。」
「悪かった。
クリスティアはどうしている?」
「ふふっ、先ほどアリエル様にも同じ事を聞かれました。
お元気でいらっしゃいます。
あなた方は何一つご心配なさる必要はございません。」
「…イデオン、貴様変わったな。」
「大人になりましたから。
大切な方を守るために。
見た目は逆に若くなってしまいましたけどね。」
「後宮の部屋にも結婚前の私物が残っているのだが、持って行ってやってくれないか?」
「それはあなたからの贈り物でしょうか?ならばいらない物でしょう。
よろしければアリエル様にでも差し上げてください。」
イデオンは変わった。
こんなにこやかに嫌味を言う者ではなかった。
その嫌味もアリエルにはわからなかったようだが。見つめられ微笑まれ、ぽぅっとしていた。
皇帝の離婚は皇族の都合で皇后有責とされ、世継ぎを望む者や、妃を送り込みたい貴族達にとっては朗報だったが、一般の庶民や神殿派の貴族にとっては憤りを感じずにはいられなかった。
神殿は民と共にあり、女神の教えを説き、聖なる乙女達は訓練もかねて無償で治癒をする。
浄化なくしてはこの世界は存在しないという事は毎週礼拝に通う庶民のほうが信じていた。
神殿では誰もクリスティアを傷つける者はいない。
だが、日を追うごとにクリスティアはふさぎこむ事が多くなった。
誰にも会いたくないと結界内にこもるようになってしまった。
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