黒い聖女

あさいゆめ

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続編 14

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 クリスティアの離婚の提案は思いの外すんなりと受け入れられた。ダニエル以外は。
 周りも離婚には賛成だったという事だろう。
 上位貴族の離婚は多くの関係者の立ち合いの元に行われる。
 社会に影響を与える者の離婚は双方の有責を明らかにさせる為に。
 離婚式に赴くクリスティアは少しグレーにくすんだ飾り気のない白のドレスを選んだ。
 まるで罪人のようではあるが、どのような意見を聞かされても真摯に受け入れようという気持ちの現れだった。
 ネックレスを手に取り身につけてみる。
 初めてダニエルにもらったアイスブルーダイアとアメジストで作られたもの。
 それをもらった日から二人の関係は始まった。
 結婚を申し込みに来た日、ダニエルはクリスティアを「幼い頃から城の管理下で貞操を守られ、お妃教育を受けた淑女」と完璧さを評価した。
 一方、アリエルは街中で育った無教養。
 ダニエルにはなんの利点も価値も無い。
 ならばその本質を愛したのだろうと、尚更さみしくなった。
 一度は着けてみたが、外した。
 さすがに嫌味だし、ダニエルが覚えていなかったらそれはそれで悲しい。
 
 離婚式は城の外にある離宮のホールで行われた。
 一番奥の上座の壇上で大神官であるイデオンが立ち合い、その前にダニエルと向かい会うクリスティア。
 参列者の中には側妃アリエルの姿もあった。
 通常神殿からの立ち合いは一人で良いのだが、なぜか10人余りもの神官と聖女エメラルダまで来ていた。
「今回の離婚にあたり、皇后クリスティアは無責任にも皇后の責務を放棄したとし、婚姻後に得た財産は全て没収とする。
 また聖女という立場を理由に風紀を乱し社会に悪影響を与えた。
 さらには後宮において、側妃アリエルに対する嫌がらせなども耳に入っている。」
「異議あり!」
 ダニエルが審議官の言葉を遮る。
「噂には根拠も証拠もない!」
「確かに。皇后が嫉妬からそのような事を犯したとしても酌量の余地もごさいましょう。」
「異議あり!皇后は嫉妬もしなければ、嫌がらせもしていない。」
 ダニエルの憤りに参列者がざわめく。
 離婚審議にあたり、相手を擁護するなど異例。
 だがそれは聞き入れられない。
 皇帝の離婚は皇帝有責では成立しない。
 少しでも妃の罪状を多くし、皇帝の正当さを記録しなければならないから。
「これを持って廃后クリスティアの貴族籍を剥奪する!」
「馬鹿な…。」
 クリスティアは皇后であった期間の財産の没収に加え貴族籍も剥奪されてしまった。
 ダニエルはそこまでされるとは予想もしていなかった。棄てられるのは自分のほうだとばかり思っていたから。
 会場からは拍手が沸き起こる。
 まるで正しい者が勝ったかのように。
 アリエルも満面の笑みだ。
 クリスティアの「あなたは悪くないわ。」と言った言葉が胸に刺さる。
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