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残るはカシオンをはじめとする神官達とレミナ。
「な、何をしている!結界は解かれたぞ、攻撃せんか!」
ディオニアが神官達に命じるが、
「できません!
あの方が本物ではございませんか!」
一人二人とひざまづき、許しを乞う。
「どうかお許し下さい!
私はカシオン大神官…いや、カシオンめに騙されたのです!」
「私もです!」
「お許し下さい!」
ほとんどはイグリッドに仕えていた神官のようだ。
本来ならばイグリッドと共に年をとり、彼女に尽くして生涯を終えたはずだった。
あまりに早くイグリッドを失い、地位も役割も生き甲斐も無くしてしまった人達。
哀れではあるけれど、許す訳にはいかない。
「あなた方はイグリッドに仕える前に女神イレーネの神官です。その事を忘れてしまっていたようですね。
その意は無くとも、反逆に加担した事実はかわりません。
グラディアスでの裁判に従いなさい。
カシオン、あなたもレミナも同じく裁判にかけられるでしょう。」
「なんで?
なんでなの?
本物はレミィだって言ったじゃないっ!」
カシオンに掴みかかる。
「ああ、そうだ!
初代と同じ地球から召喚された黒目黒髪の聖女が、なぜいつまでたっても使い物にならないんだ!
初代聖女の力を借りてもなぜイグリッド様の気に入らなかった醜い女に勝てないのだ?」
イグリッドの気に入らなかった醜い女?
それは私の事?
「イグリッド様から何を聞いたか知らないけど、アサコ様とレミナは同じではありませんよ。
アサコ様は肉体の無い霊体でした。
レミナは生きたまま召喚されたのでしょう?
肉体がこの世界の物質ではないため魔力が適合しないのかと思われます。
魔力が通過する気脈を使い、魔法は使えるけれど、魔力を身体に留める事はレミナにとっては毒となるはずです。
今はアサコ様の力を借りて覚醒したかのように見えますが、そのまま使い続けて果たしていつまで肉体が耐えられるでしょうか?
レミナ、あなた気づいているのでしょう?
化粧で隠しているけれど、染みやシワが増えているのではなくて?」
「そんな…そんな…。」
両手で顔を覆い、膝をつく。
「では、私はどうなるのだ?」
カシオンが私にすがりつく。
「た、頼む!私が悪かった!なんでもする!私を寵愛してくれ!」
どの面下げて?
「嫌です。」
「頼む!このまま年老いて醜い姿になるなど耐えられぬ!」
結局この男はイグリッドを愛していたわけではなかった。
自分だけを愛する哀れな人。
「な、何をしている!結界は解かれたぞ、攻撃せんか!」
ディオニアが神官達に命じるが、
「できません!
あの方が本物ではございませんか!」
一人二人とひざまづき、許しを乞う。
「どうかお許し下さい!
私はカシオン大神官…いや、カシオンめに騙されたのです!」
「私もです!」
「お許し下さい!」
ほとんどはイグリッドに仕えていた神官のようだ。
本来ならばイグリッドと共に年をとり、彼女に尽くして生涯を終えたはずだった。
あまりに早くイグリッドを失い、地位も役割も生き甲斐も無くしてしまった人達。
哀れではあるけれど、許す訳にはいかない。
「あなた方はイグリッドに仕える前に女神イレーネの神官です。その事を忘れてしまっていたようですね。
その意は無くとも、反逆に加担した事実はかわりません。
グラディアスでの裁判に従いなさい。
カシオン、あなたもレミナも同じく裁判にかけられるでしょう。」
「なんで?
なんでなの?
本物はレミィだって言ったじゃないっ!」
カシオンに掴みかかる。
「ああ、そうだ!
初代と同じ地球から召喚された黒目黒髪の聖女が、なぜいつまでたっても使い物にならないんだ!
初代聖女の力を借りてもなぜイグリッド様の気に入らなかった醜い女に勝てないのだ?」
イグリッドの気に入らなかった醜い女?
それは私の事?
「イグリッド様から何を聞いたか知らないけど、アサコ様とレミナは同じではありませんよ。
アサコ様は肉体の無い霊体でした。
レミナは生きたまま召喚されたのでしょう?
肉体がこの世界の物質ではないため魔力が適合しないのかと思われます。
魔力が通過する気脈を使い、魔法は使えるけれど、魔力を身体に留める事はレミナにとっては毒となるはずです。
今はアサコ様の力を借りて覚醒したかのように見えますが、そのまま使い続けて果たしていつまで肉体が耐えられるでしょうか?
レミナ、あなた気づいているのでしょう?
化粧で隠しているけれど、染みやシワが増えているのではなくて?」
「そんな…そんな…。」
両手で顔を覆い、膝をつく。
「では、私はどうなるのだ?」
カシオンが私にすがりつく。
「た、頼む!私が悪かった!なんでもする!私を寵愛してくれ!」
どの面下げて?
「嫌です。」
「頼む!このまま年老いて醜い姿になるなど耐えられぬ!」
結局この男はイグリッドを愛していたわけではなかった。
自分だけを愛する哀れな人。
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