黒い聖女

あさいゆめ

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 セゼルが戻ってきた。
「大変です!アサコ様の遺骨がございません!」
 やっぱり。
 アサコの遺骨は骨ではない。
 アサコは自分の肉体を自ら作った。
 その身体は、いわば魔力の結晶なのだ。骨もしかり。
 それは魔法石などとは比べ物には出来ないほどの魔力を秘めている。
「なぜか「イザベラ」と「アマンダ」の石像もなくなっていました。」
「なんですって?」
 まずいわ。
 あの石像達はただの石ではない。
 ゴーレムなのだ。
 アサコの死と共に動く事はなく、石像として霊廟の前に安置されていたのに。
 アレが動いたですって?
 とにかく急がなくては。
 アサコの遺骨が神殿に無いとなると、結界はそう長くはもたない。
 有事の際には魔力源として用いて結界を張り続ける事が出来たのだが、それは覚醒した聖女しか知らない事。
 先代聖女イグリッドがカシオンに教えたのか?
 とにかくアサコの遺骨を回収しなくては。アレを悪用させてはならない。
 クラストが集めた魔導師達にも「祝福」を与えた。
「セゼル!今を持ってあなたは大神官を名乗りなさい。」
「畏まりました!慎んで務めさせていただきます。」
「皆、聞きなさい。
 聖女クリスティアとして皆に謝らなければなりません。
 今回の事は私が神殿を避けていたために起こった過ちです。
 皆には迷惑をかけますが、力を貸して下さい。
 神殿と聖女は何があっても国家間の問題や政治に関与してはならないのです。
 女神イレーネは大陸全てのものに対して等しく恩恵を与えます。
 神殿はそれに倣わなくてはなりません。
 我々大神殿は、女神イレーネの意に反し反逆に手を貸したカシオン元大神官と聖女レミナを討伐しなければなりません。
 異議のある者は引き留めません、今すぐ離脱しなさい。
 セゼルはここで首都を守り、郊外の民の受け入れを手助けして下さい。
 クラストは魔導師と共に騎士団と合流し、指示を受けて下さい。
 治癒師の半分はここで待機、不測の事態に備えて下さい。残りの三名はクラストと共に騎士団に付いて下さい。
 私は一旦城に戻り、先にトラキアへ向かいます。」
 クラストが慌てて、
「そんな!危険です。私をお連れ下さい!」
 クラストは祝福を与えてから、雷撃を使えるようになった。
「いいえ、中から結界を破壊しますから、なるべく早く助けに来て下さい。」
 結界は外からの攻撃には強いが、中はもろい。
 普通ならば敵とみなされる私は転移したくても結界に弾かれるのだが、アサコの魔力を借りたものなら侵入できるはず。
「皆、我々の信念の為闘うのです。
 決してむやみに傷つけたり殺さぬよう。
 治癒師は敵であっても等しく治療しなさい。
 よろしいですね。」
「畏まりました!」
 
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