黒い聖女

あさいゆめ

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 我が家に帰り、久しぶりにゆっくりできたわ。
 身体がうっすら光るのはなんとか調整できるようになった。
 夜に光っていると落ち着かないし、廊下を歩いていると幽霊かと思われるわ。
 ダニエルはどうしているかしら?
 家族皆で話し込んでしまい、遅くなったので泊まってもらったけど、もう寝たかしら?
 二人きりになったらちゃんとお礼を言おうと思っていたのに。
 様子を…駄目よね。
 はしたない女だと思われるわ。
 ダニエルはきっとそういうのは好きじゃないわ。
 ん?
 窓の外に何か気配が。
「ティア…もうお休みですか?」
 ダニエル?
 窓づたいに移動してきたの?
 窓の鍵を開ける。
「意外と大胆なのですね。」
 月の光りを背に部屋に侵入する姿は昼間とはうって変わって悪魔のように美しい。
「どうしても逢いたくて。」
「私もお話ししたいと思っておりました。」
 ベッドに並んで座る。
「色んな事がありすぎて、まだちゃんとお礼を言ってませんでした。
 私を救って下さってありがとうございます。」
「いや…結果的に成功?というか、それ以上の効果はあったが、無謀だったと思うよ。
 だが、一緒に死んでも構わないと思ったのだ。」
「本当に無謀でした。
 少し怒っています。
 次にあんな事をしたら本当に怒ります。」
「怒ってくれ。
 どんな風に怒られるのか楽しみだ。」
「もうっ!」
 こんな風に二人で笑える日が来るとは思っていなかった。
 本当ならば私の寿命は尽きていたはず。
 かといってダニエルの命をもらった感覚は無い。
 そもそも命は長さで計れるものではない。
 変えられたのは長さではなく、死ぬはずだった運命。
 あの術式はパスワードのようなものだった。
 なぜあれが命を分け与える術式として王族に伝わっているのだろう。
 気になるけれど、今は生きている事を素直に喜ぼう。
「ティア、私は少し…いや、すごく嫉妬しているんだ。」
「なんですか?」
「あの…寵愛だ。」
「え?ダニエルも欲しかったのですか?でも、あれは、まさかあんな風になるとは知らなかったのです。」
「ティア…。」
 そっとベッドに押し倒された。
「どんな形であれ、他の男に快楽を与えたのだ。
 嫉妬しないはずないだろう?」
 快楽だったのかしら?皆、苦しんでいるみたいだったけど。
 それよりこの態勢は。
 とうとうするのかしら?
 キス?それ以上も?
「ティア…あなたを愛しています。」
 目を閉じると、そっと唇を合わせてくれた。
 何度も、軽くついばむように。
 優しく焦らすように…。
 ああそうか、寵愛が欲しかったんだったわ。
 私ったら気持ちいいからっていつまでもチュッチュして、焦らしていたのは私のほうね。
 お礼を込めてたっぷりして差し上げましょう。
「んっ…くはっ…ティア?ちょっと…あっああっ、駄目っ…!」
 まあ…なんていやらしい顔をするのかしら。
 苦悶を湛えた眉間に潤んだ瞳、悶絶する口元からは涎を垂らし、ぶるぶると身体を震わせて快感に耐えている。
 ああっ、ぞくぞくするわ。
 私、やっぱりSっけがあるのね。
「あっ、あっ…もう駄目だ…んっふうっ。」
 おとなしくなったかとおもうとあの異臭が漂う。
 不思議とダニエルのものだとおもえば汚いとは感じない。
「…ひどいです。」
「え?寵愛が欲しいとおっしゃるから…。」
 気持ちよさそうに見えたけど、やっぱり苦痛だったのかしら?
 
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