黒い聖女

あさいゆめ

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「前回も、失ってから僕にとってクリスがどれだけ大切だったか思い知らされたよ。
 呆れた事に、死の直前に思ったのがクリスに会いたいだった。
 僕が殺したのに。
 さらに呆れたことに、また君に愛されたいなんて厚かましい事を願ったよ。
 そして、今回願いが叶ったのに、僕はまた同じ過ちを犯してしまったんだ。
 ごめんね、僕さえいなければ君は幸せになれたのに。」
「それは違うわ。
 私はあなたを愛する事が幸せだったのよ。
 恨んではいなかったわ。
 ただ悲しかっただけ。」
「ダニエル、ごめん。
 今晩だけクリスを抱きしめさせて。
 本当に愛していたんだ。
 前も、今も。
 僕はバカだから、そんなつもりは無くてもクリスを利用して傷つけてしまう。
 クリスはそんな僕を何度でも許してしまうんだ。
 だから離れよう。」
「ええ、そうね。
 私も、私の過ちに気がついたわ。
 私がいるからイディはいつまでたっても駄目な子なのよ。
 少し離れただけでもこんなに大人になったんだもの。ふふふ。」
 お別れなのに、とても穏やかな気持ち。
 きっとダニエルが後ろから抱きしめてくれているから。
 ダニエルは心穏やかではいられないかもしれないけれど。
「さっきの話しだと、イデオンがクリスティアを殺しただと?」
「どうかしていたんだ。
 僕はクリスを無実の罪で斬首刑にしたんだ。」
「それが本当ならまた愛するなど考えられん。」
「そうだね。
 その後、僕はダニエルに殺されたよ。」
 えっ?
「ああ、殺されて当たり前だ。
 なんなら今回も殺してやる。」
 本気じゃないよね?
 そうやってこの夜は二人に挟まれて眠りについた。
 翌朝目覚めると二人とも艶々していた。
 どうやら「寵愛」らしい。
 何もしていないのだけど「私達、何もしていませんから!」と言ってまわるのも余計にいやらしいので、黙っておく事にした。
 困ったものだわ、側にいるだけで寵愛が漏れているなんて。
 というかこの「寵愛」って言い方変えてほしい。
 三人で朝食をとっているとレミナが乱入してきた。
「どうしてっ?そこはレミィの場所なのに!」
 豪華だと思っていたらレミナの朝食だったのか。
「案内されたからいただいたのだけど?」
 給事をしているニコラスに目をやると、
「レミナ様のものは別にご用意いたしております。」
「案内して差し上げなさい。」
 フランシスが「こちらへ。」と案内しようとしたが、
「イディ!一緒に来てっ!」
「レミナ、悪いけど僕はもう君のいいなりにはならないよ。愛称で呼ぶのもやめてくれ。」
「どうしてっ?…はっ!」
 二人がやけに艶々しているのに気がついたようで、
「最低!この淫乱女!さっそく3pとか信じらんない!」
 やだわ、童貞二人に対してそんな破廉恥な事を言わないであげて。二人とも真っ赤になってうつむいてしまったじゃない。
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