黒い聖女

あさいゆめ

文字の大きさ
上 下
64 / 134

64

しおりを挟む
「前回も、失ってから僕にとってクリスがどれだけ大切だったか思い知らされたよ。
 呆れた事に、死の直前に思ったのがクリスに会いたいだった。
 僕が殺したのに。
 さらに呆れたことに、また君に愛されたいなんて厚かましい事を願ったよ。
 そして、今回願いが叶ったのに、僕はまた同じ過ちを犯してしまったんだ。
 ごめんね、僕さえいなければ君は幸せになれたのに。」
「それは違うわ。
 私はあなたを愛する事が幸せだったのよ。
 恨んではいなかったわ。
 ただ悲しかっただけ。」
「ダニエル、ごめん。
 今晩だけクリスを抱きしめさせて。
 本当に愛していたんだ。
 前も、今も。
 僕はバカだから、そんなつもりは無くてもクリスを利用して傷つけてしまう。
 クリスはそんな僕を何度でも許してしまうんだ。
 だから離れよう。」
「ええ、そうね。
 私も、私の過ちに気がついたわ。
 私がいるからイディはいつまでたっても駄目な子なのよ。
 少し離れただけでもこんなに大人になったんだもの。ふふふ。」
 お別れなのに、とても穏やかな気持ち。
 きっとダニエルが後ろから抱きしめてくれているから。
 ダニエルは心穏やかではいられないかもしれないけれど。
「さっきの話しだと、イデオンがクリスティアを殺しただと?」
「どうかしていたんだ。
 僕はクリスを無実の罪で斬首刑にしたんだ。」
「それが本当ならまた愛するなど考えられん。」
「そうだね。
 その後、僕はダニエルに殺されたよ。」
 えっ?
「ああ、殺されて当たり前だ。
 なんなら今回も殺してやる。」
 本気じゃないよね?
 そうやってこの夜は二人に挟まれて眠りについた。
 翌朝目覚めると二人とも艶々していた。
 どうやら「寵愛」らしい。
 何もしていないのだけど「私達、何もしていませんから!」と言ってまわるのも余計にいやらしいので、黙っておく事にした。
 困ったものだわ、側にいるだけで寵愛が漏れているなんて。
 というかこの「寵愛」って言い方変えてほしい。
 三人で朝食をとっているとレミナが乱入してきた。
「どうしてっ?そこはレミィの場所なのに!」
 豪華だと思っていたらレミナの朝食だったのか。
「案内されたからいただいたのだけど?」
 給事をしているニコラスに目をやると、
「レミナ様のものは別にご用意いたしております。」
「案内して差し上げなさい。」
 フランシスが「こちらへ。」と案内しようとしたが、
「イディ!一緒に来てっ!」
「レミナ、悪いけど僕はもう君のいいなりにはならないよ。愛称で呼ぶのもやめてくれ。」
「どうしてっ?…はっ!」
 二人がやけに艶々しているのに気がついたようで、
「最低!この淫乱女!さっそく3pとか信じらんない!」
 やだわ、童貞二人に対してそんな破廉恥な事を言わないであげて。二人とも真っ赤になってうつむいてしまったじゃない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

処理中です...