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イデオン視点
一睡も出来ないまま朝をむかえた。
儀式の前に話があるとセゼル神官がレミナを連れて訪れた。
レミナはいつもにも増して不機嫌だった。
それもそのはず、神官達はレミナから離れて怪訝な視線を向けている。魔力喰いを恐れているのだろう。
いつもはぞろぞろと付いてくる側近達もいない。
「これまで通り浄化が出来るのはこれが最後かもしれません。
今後は聖女様に努力していただき、魔力喰いを克服しなくてはなりません。」
「努力っていったってどうしていいかわかんないっ!」
「あの方が魔力提供をしながら聖女様の気脈を整えて下さいました。」
バン、とテーブルを叩き立ち上がり、
「はあっ?レミィの身体の中、勝手にいじったって事?信じらんない!キモい!」
「…そう言われると思い、勝手になさったのでしょう。
ですが聖女様はご自分ではどうすることもできませんでしょう?
後はご自分で気の流れを感じられるようになれば魔力喰いは治まるはずです。
どうしても出来ないのであればこの薬をお飲み下さい。」
あれは例の薬?
「それもあの女が用意したんでしょ?
そんなの毒に決まってる!」
セゼル神官は首を横に振り、険しい表情で、これまでに聞いた事のない怒り声を上げた。
「あなたという人は!
どこまで性根が腐っているのですか?
私は一時でもあなたをお慕いした事を恥じています!
あのお方は、あなたのような人の事さえ心配しているというのに!」
セゼル神官の目からは涙が流れていた。
「セゼル神官…クリスはもう…。」
「はい…おそらく今日が最後です。」
「やめさせる事は?」
「あのお方が望んではおりません。
最後の一欠片までも帝国とあなたの為に使いたいと。
仮に止めたとしても、あの身体では長くは持たないでしょう。」
やっぱり僕の為だった。
僕のせいでクリスは死んでしまう。
それでもクリスはきっと僕を恨んだり責めたりしないんだ。
「しょうがないですね。」って少し困った顔をして笑うんだ。
僕はクリスに何が出来る?
溢れるほどの愛と返しきれない恩を貰い、償いきれない罪を犯した。
苦しい…。
「僕が代わりに死ねばいい…。」
セゼル神官が肩に手を乗せる。
慰めているつもりなのだろうか。
それに反してレミナはますます怒り、
「なんで皆あの女ばっかり?
こんなのおかしい!
レミィがヒロインなのにっ!」
一睡も出来ないまま朝をむかえた。
儀式の前に話があるとセゼル神官がレミナを連れて訪れた。
レミナはいつもにも増して不機嫌だった。
それもそのはず、神官達はレミナから離れて怪訝な視線を向けている。魔力喰いを恐れているのだろう。
いつもはぞろぞろと付いてくる側近達もいない。
「これまで通り浄化が出来るのはこれが最後かもしれません。
今後は聖女様に努力していただき、魔力喰いを克服しなくてはなりません。」
「努力っていったってどうしていいかわかんないっ!」
「あの方が魔力提供をしながら聖女様の気脈を整えて下さいました。」
バン、とテーブルを叩き立ち上がり、
「はあっ?レミィの身体の中、勝手にいじったって事?信じらんない!キモい!」
「…そう言われると思い、勝手になさったのでしょう。
ですが聖女様はご自分ではどうすることもできませんでしょう?
後はご自分で気の流れを感じられるようになれば魔力喰いは治まるはずです。
どうしても出来ないのであればこの薬をお飲み下さい。」
あれは例の薬?
「それもあの女が用意したんでしょ?
そんなの毒に決まってる!」
セゼル神官は首を横に振り、険しい表情で、これまでに聞いた事のない怒り声を上げた。
「あなたという人は!
どこまで性根が腐っているのですか?
私は一時でもあなたをお慕いした事を恥じています!
あのお方は、あなたのような人の事さえ心配しているというのに!」
セゼル神官の目からは涙が流れていた。
「セゼル神官…クリスはもう…。」
「はい…おそらく今日が最後です。」
「やめさせる事は?」
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苦しい…。
「僕が代わりに死ねばいい…。」
セゼル神官が肩に手を乗せる。
慰めているつもりなのだろうか。
それに反してレミナはますます怒り、
「なんで皆あの女ばっかり?
こんなのおかしい!
レミィがヒロインなのにっ!」
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