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ダニエル視点
開けろととは言ったものの、中を見るのが怖い。
「クリスティア?…開けますよ。」
『…駄目。』
この声は?
『開けないで下さい。』
クリスティアの声ではない、聞こえないくらい小さく不自然なかすれ声。
「失礼いたします。」
扉を開けた。
冷えきった馬車の中、毛布もなく膝をかかえる人影。
「クリスティア?」
『駄目です、来ないで。』
恐る恐る抱きしめた。
細い…骨があたるほどに痩せ細っている。
『お願い…見ないで。』
「どうして…こんな。」
強く抱けば折れてしまいそうな身体は震えている。
「この声はどうされたのですか?」
「薬です。」
セゼル神官が答えた。
「どういう事だ?」
「まずは協力者の方を休ませて下さい。」
手を離し、いったん馬車を降り、扉を閉めた。
「ハッ、こんな所で休ませるだと?ずっと馬車に閉じ込めていたのか?」
一人の神官が前に進み出て、
「お、お許しください、私達が閉じ込めておりました。」
「誰の命令だ?」
…。
「同じ事を二度言わせるな。」
「…聖女様です。」
「薬とは?」
「それも…キリアン公爵に助けを求めないようにと。」
地面に額を擦り付けている神官が増えていた。
全部の頭を蹴り倒したい衝動を必死で抑えた。
「なぜ、こんなに痩せているのだ?」
…。
誰がポソッと呟いた。
「魔力喰い。」
「馬鹿なっ!魔力喰いに魔力を与えただと?
なぜそんな事が許されるのだ?」
「それしか方法がなかったのです。」
セゼル神官が答える。
「この方しか聖女に魔力を与える事が出来ないのです。でなければイデオン殿下やあなた様がこうなる運命でした。いや、あなた様では一回の浄化にも耐えられなかったことです。」
ではクリスティアは我々王族の身代わりになったという事なのか?
もっと詳しく聞く必要があるが、それよりもまずこんな所ではない所でクリスティアを休ませてやらないと。
馬車に戻りクリスティアを抱き上げた。
『…降ろして…どこに連れていくの?』
「黙って抱かれていなさい。」
これ以上言葉を発せれば私が泣いているのがばれてしまう。
軽い…これは人の重さか?
服の布ごしでもわかるほど痩せ細った骨の感触が手に伝わる。
「お…お待ち下さい、勝手なこ…げふっ!」
蹴り倒し、他の神官達を睨み付けた。
クリスティアを自分の天幕に連れていき、ベッドに寝かせた。
神官服を脱がせようとしたが、
『駄目…フードをとらないで。誰にも見られたくないの。』
「わかった。」
季節は晩秋、この北部ではもう冬の寒さだ。
なのにあんな寒い馬車で毛布さえ与えられないとはどういう事だ。
クリスティアがいったい何をしたというのだ。
ベッドの中でも震えている。
「失礼いたします。」
背中から抱きしめた。折れてしまわないように、優しく。
『暖かい。』
苦しい。
いったいどうしてこんな事に。
どこまで時を遡ればクリスティアを助ける事が出来たのだろう。
衰弱するのがあまりにも早い。
魔力喰いを相手にしているからか?
そもそも助ける事など出来なかったか。
彼女がやらなければ帝国は瘴気に飲まれる。
クリスティアは最初からこうなる事を知っていて…知っていて私の元を去ったのか?
あまりにも悲しい。
開けろととは言ったものの、中を見るのが怖い。
「クリスティア?…開けますよ。」
『…駄目。』
この声は?
『開けないで下さい。』
クリスティアの声ではない、聞こえないくらい小さく不自然なかすれ声。
「失礼いたします。」
扉を開けた。
冷えきった馬車の中、毛布もなく膝をかかえる人影。
「クリスティア?」
『駄目です、来ないで。』
恐る恐る抱きしめた。
細い…骨があたるほどに痩せ細っている。
『お願い…見ないで。』
「どうして…こんな。」
強く抱けば折れてしまいそうな身体は震えている。
「この声はどうされたのですか?」
「薬です。」
セゼル神官が答えた。
「どういう事だ?」
「まずは協力者の方を休ませて下さい。」
手を離し、いったん馬車を降り、扉を閉めた。
「ハッ、こんな所で休ませるだと?ずっと馬車に閉じ込めていたのか?」
一人の神官が前に進み出て、
「お、お許しください、私達が閉じ込めておりました。」
「誰の命令だ?」
…。
「同じ事を二度言わせるな。」
「…聖女様です。」
「薬とは?」
「それも…キリアン公爵に助けを求めないようにと。」
地面に額を擦り付けている神官が増えていた。
全部の頭を蹴り倒したい衝動を必死で抑えた。
「なぜ、こんなに痩せているのだ?」
…。
誰がポソッと呟いた。
「魔力喰い。」
「馬鹿なっ!魔力喰いに魔力を与えただと?
なぜそんな事が許されるのだ?」
「それしか方法がなかったのです。」
セゼル神官が答える。
「この方しか聖女に魔力を与える事が出来ないのです。でなければイデオン殿下やあなた様がこうなる運命でした。いや、あなた様では一回の浄化にも耐えられなかったことです。」
ではクリスティアは我々王族の身代わりになったという事なのか?
もっと詳しく聞く必要があるが、それよりもまずこんな所ではない所でクリスティアを休ませてやらないと。
馬車に戻りクリスティアを抱き上げた。
『…降ろして…どこに連れていくの?』
「黙って抱かれていなさい。」
これ以上言葉を発せれば私が泣いているのがばれてしまう。
軽い…これは人の重さか?
服の布ごしでもわかるほど痩せ細った骨の感触が手に伝わる。
「お…お待ち下さい、勝手なこ…げふっ!」
蹴り倒し、他の神官達を睨み付けた。
クリスティアを自分の天幕に連れていき、ベッドに寝かせた。
神官服を脱がせようとしたが、
『駄目…フードをとらないで。誰にも見られたくないの。』
「わかった。」
季節は晩秋、この北部ではもう冬の寒さだ。
なのにあんな寒い馬車で毛布さえ与えられないとはどういう事だ。
クリスティアがいったい何をしたというのだ。
ベッドの中でも震えている。
「失礼いたします。」
背中から抱きしめた。折れてしまわないように、優しく。
『暖かい。』
苦しい。
いったいどうしてこんな事に。
どこまで時を遡ればクリスティアを助ける事が出来たのだろう。
衰弱するのがあまりにも早い。
魔力喰いを相手にしているからか?
そもそも助ける事など出来なかったか。
彼女がやらなければ帝国は瘴気に飲まれる。
クリスティアは最初からこうなる事を知っていて…知っていて私の元を去ったのか?
あまりにも悲しい。
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