16 / 134
16
しおりを挟む
聖女が表れて一年と半年が過ぎた頃、やっと婚約が解消された。
なぜだかイデオンがなかなか承諾しなかったけれど、これだけ世間が皇太子と聖女のラブロマンスを祝福していれば皇室としてはもう許すしかなかった。
こちらに非が無いにも関わらず、世間は私を悪女と呼んだ。
神殿が情報を操作しているのだろう。
王族に関わったせいでアストロイト侯爵家は散々だ。弟の怪我はもう治らない。聖女の治癒魔法があれば治るだろうけど、レミナは未だに治癒魔法が使えない。使えたところで怪我をさせた本人が治すとは思えない。
私は社交界には顔を出す事は無くなった。
上位貴族達は真実を知っているから同情はしてくれる。
でももう誰にも会いたくなかった。
そんな私になんの興味があるのかキリアン公爵からパートナーの申し込みが来るようになった。
からかっているのでもなさそうだけれど、彼は今年学園を卒業したばかりの19歳。私より5歳年下。何を企んでいるのかしら?
ダニエル・キリアン公爵は前世の記憶の小説では悪役。
王位継承権第3位の彼は継承権2位の父親が皇帝になれば皇太子となりいずれは皇帝になれる立場だ。
ダニエルは皇太子の暗殺を謀る。
もちろん失敗するが、イデオンを暗殺しようとするのは聖女が欲しかったから。
そんなダニエルが私を誘うのは企みがあるとしか思えないからずっと無視していた。
そしたらとうとう自宅にきやがった。
しかも婚約の申し込みに。
なぜ?
両親も戸惑いを隠せない。
「失礼を承知で申し込みいたします。」
「なぜ私なのですか?」
ダニエルは名前からして悪役だよね。
王族特有の金髪をとっても悪役っぽくオールバックにしている。
ガラス細工のような冷たい瞳に神経質そうなほっそりとした顔立ちで肌は陶器のように白い。
高身長で細い。
こんなにひょろひょろだけど魔導騎士。
腰の剣はほぼ飾り。
なぜなら使う必要が無いから。
水と風を操り、相手は剣を抜く前に首を切り落とされるという話で恐れられている。
だけど私などを選ばなくても若い公爵ならば相手はいくらでもいる。
「私は無駄が嫌いです。
今回の婚約解消にクリスティア様に非が無い事は上位貴族ならば皆知っている事です。
クリスティア様は城でお妃教育まで受けられた淑女。ましてや幼い頃より王族の監視下におかれ貞操も守られております。これ以上に完璧な女性がいるでしょうか?
ですが、失礼ながらクリスティア様に相応しい年相応な令息はもういらっしゃらないでしょう。
アストロイト侯爵家にとっても私との婚約は悪い話では無いはずです。」
確かにそうだ。
もしいたとしても下位貴族では神殿が怖くてアストロイト家には近寄らないだろう。
今の神殿はどうかしている。
大神官は先代聖女が亡くなって以来表だって姿を見せる事がなくなり、ディオニア神官長が代理で動いている。
その神官長がどうやら強硬派らしく、聖女を祭り上げ好きに神官達を操っているようだ。
なぜだかイデオンがなかなか承諾しなかったけれど、これだけ世間が皇太子と聖女のラブロマンスを祝福していれば皇室としてはもう許すしかなかった。
こちらに非が無いにも関わらず、世間は私を悪女と呼んだ。
神殿が情報を操作しているのだろう。
王族に関わったせいでアストロイト侯爵家は散々だ。弟の怪我はもう治らない。聖女の治癒魔法があれば治るだろうけど、レミナは未だに治癒魔法が使えない。使えたところで怪我をさせた本人が治すとは思えない。
私は社交界には顔を出す事は無くなった。
上位貴族達は真実を知っているから同情はしてくれる。
でももう誰にも会いたくなかった。
そんな私になんの興味があるのかキリアン公爵からパートナーの申し込みが来るようになった。
からかっているのでもなさそうだけれど、彼は今年学園を卒業したばかりの19歳。私より5歳年下。何を企んでいるのかしら?
ダニエル・キリアン公爵は前世の記憶の小説では悪役。
王位継承権第3位の彼は継承権2位の父親が皇帝になれば皇太子となりいずれは皇帝になれる立場だ。
ダニエルは皇太子の暗殺を謀る。
もちろん失敗するが、イデオンを暗殺しようとするのは聖女が欲しかったから。
そんなダニエルが私を誘うのは企みがあるとしか思えないからずっと無視していた。
そしたらとうとう自宅にきやがった。
しかも婚約の申し込みに。
なぜ?
両親も戸惑いを隠せない。
「失礼を承知で申し込みいたします。」
「なぜ私なのですか?」
ダニエルは名前からして悪役だよね。
王族特有の金髪をとっても悪役っぽくオールバックにしている。
ガラス細工のような冷たい瞳に神経質そうなほっそりとした顔立ちで肌は陶器のように白い。
高身長で細い。
こんなにひょろひょろだけど魔導騎士。
腰の剣はほぼ飾り。
なぜなら使う必要が無いから。
水と風を操り、相手は剣を抜く前に首を切り落とされるという話で恐れられている。
だけど私などを選ばなくても若い公爵ならば相手はいくらでもいる。
「私は無駄が嫌いです。
今回の婚約解消にクリスティア様に非が無い事は上位貴族ならば皆知っている事です。
クリスティア様は城でお妃教育まで受けられた淑女。ましてや幼い頃より王族の監視下におかれ貞操も守られております。これ以上に完璧な女性がいるでしょうか?
ですが、失礼ながらクリスティア様に相応しい年相応な令息はもういらっしゃらないでしょう。
アストロイト侯爵家にとっても私との婚約は悪い話では無いはずです。」
確かにそうだ。
もしいたとしても下位貴族では神殿が怖くてアストロイト家には近寄らないだろう。
今の神殿はどうかしている。
大神官は先代聖女が亡くなって以来表だって姿を見せる事がなくなり、ディオニア神官長が代理で動いている。
その神官長がどうやら強硬派らしく、聖女を祭り上げ好きに神官達を操っているようだ。
0
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
妹のアイミが、一人暮らしの兄の家に泊まりに来た。コンサートで近くを訪れたため、ホテル代わりに利用しようということだった。
兄は条件を付けて、アイミを泊めることにした。
その夜、条件であることを理由に、兄はアイミを抱く。
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる