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小説で私に毒をくれた人がいた。
毒に詳しい人は薬にも詳しいはず。
彼は侯爵家お抱えの薬剤師。
ロイド・ストーレン。
「化粧品ですか?専門外ですけど、あんなもの身体にいいわけが無いですよ。」
聞くと、口に入れるものではないからあまり規制が厳しく無いのだとか。
「じゃあ逆に肌に良いものだけで化粧品つくったら売れるんじゃない?」
「おもしろそうですね。」
そこからロイドと化粧品作りを始めた。
前世でよく聞いたヘチマ水の化粧水や紅花からの口紅、その他も植物由来のものだけで作ってみた。
結果はまだわからないけど、前よりはカサカサしなくなった気がする。
あとはこの太らない体質。
胃腸が弱いのかな?
これもロイドに相談所して漢方薬を毎日飲むようにした。
それにコラーゲン。何に含まれているんだっけ?スッポンはいるかいないかわからないけど、確か鳥の皮とか牛スジなんかにも含まれていたはず。
とにかく色々試した。
そのおかげかどうか、現在二十歳の私はなかなかいい身体に成長した。
すらりと伸びた長い手足にはほどよく肉がつき、ささやかながらも胸がある。
顔だって小説に書かれていた魔女みたいではない。相変わらず地味ではあるが、肌は潤いシミは無い。やっぱり原因は化粧品だったんだ。
クリスティアは幼い頃から人前に出る事が多かった為化粧をしていた。
顔にコンプレックスがあったから化粧も濃かったし、荒れた肌を隠す為に更に厚くするという悪循環。
ドレスもブティックを一店買い取って自分に似合うデザインを作らせた。
これまでのドレスはコルセットでウエストを絞り、胸を強調させたいかにも女性らしいものばかりだった。袖もふっくらさせて、スカートは木の枠組みを使ってまでも膨らませていた。
私はそんなのは似合わない。
シンプルで袖もスカートも胸の膨らみも無くした(胸は元から無いか)。
露出も無くしたが上半身は身体にぴったりしているので逆にセクシーだ。
スカートはAラインかマーメイド。
せっかくスレンダーなボディに生まれたんだから見せつけたいじゃない。
流行にこだわらないデザインを着てやるわ。
ただここで思いがけない問題が発生している。
イディが色気づいてきやがった。
子供だ子供だと思っていたらいつのまにか13歳。
身長は私よりまだ頭半分くらい低いが、めっきり男らしくなってきた。
ついこの間まで私の膝の上でうさぎみたいにモソモソおやつを食べていたのに。
パーティーでダンスを踊れば、頬を赤らめて。
二人きりになれば手を握り無言になる。
極めつけに他の令息とダンスを踊ると嫉妬して邪魔する始末。
まあ、そういうお年頃よね。
イディから見たら私はちょっとくらいなら手を出してもいい年上のお姉さんだ。
ダンスを邪魔したあげく手を引いてバルコニーに連れ出す。
ご婦人方は微笑ましくクスクス笑って見ている。
「もうっ、イディったらマナーが悪いわよ。
マダム達に笑われちゃったじゃない。」
後ろから抱きつき、
「クリスが悪い!」
振り返ろうとすると、
「こっち見るな!」
もうっ、思春期まっただ中ね。
「クリスはひどい、自分だけ大人になって。」
それはしょうがないじゃない。
でも良かった。
本当ならこの時期のイディは私の事が嫌で仕方がない頃だ。
自分が美しいことを自覚し、その婚約者が醜い事に憤りを感じる。
仕方ない事だと思う。人は皆誰でも綺麗な人が好きだ。
私はこの状況を楽しんでいる。
来年になれば聖女が現れる。
もうしばらくだけ、この愛しい人に好かれていたい。嫉妬されていたい。
私はあんなに愛さないと誓ったのに、イデオンを愛してしまった。
毒に詳しい人は薬にも詳しいはず。
彼は侯爵家お抱えの薬剤師。
ロイド・ストーレン。
「化粧品ですか?専門外ですけど、あんなもの身体にいいわけが無いですよ。」
聞くと、口に入れるものではないからあまり規制が厳しく無いのだとか。
「じゃあ逆に肌に良いものだけで化粧品つくったら売れるんじゃない?」
「おもしろそうですね。」
そこからロイドと化粧品作りを始めた。
前世でよく聞いたヘチマ水の化粧水や紅花からの口紅、その他も植物由来のものだけで作ってみた。
結果はまだわからないけど、前よりはカサカサしなくなった気がする。
あとはこの太らない体質。
胃腸が弱いのかな?
これもロイドに相談所して漢方薬を毎日飲むようにした。
それにコラーゲン。何に含まれているんだっけ?スッポンはいるかいないかわからないけど、確か鳥の皮とか牛スジなんかにも含まれていたはず。
とにかく色々試した。
そのおかげかどうか、現在二十歳の私はなかなかいい身体に成長した。
すらりと伸びた長い手足にはほどよく肉がつき、ささやかながらも胸がある。
顔だって小説に書かれていた魔女みたいではない。相変わらず地味ではあるが、肌は潤いシミは無い。やっぱり原因は化粧品だったんだ。
クリスティアは幼い頃から人前に出る事が多かった為化粧をしていた。
顔にコンプレックスがあったから化粧も濃かったし、荒れた肌を隠す為に更に厚くするという悪循環。
ドレスもブティックを一店買い取って自分に似合うデザインを作らせた。
これまでのドレスはコルセットでウエストを絞り、胸を強調させたいかにも女性らしいものばかりだった。袖もふっくらさせて、スカートは木の枠組みを使ってまでも膨らませていた。
私はそんなのは似合わない。
シンプルで袖もスカートも胸の膨らみも無くした(胸は元から無いか)。
露出も無くしたが上半身は身体にぴったりしているので逆にセクシーだ。
スカートはAラインかマーメイド。
せっかくスレンダーなボディに生まれたんだから見せつけたいじゃない。
流行にこだわらないデザインを着てやるわ。
ただここで思いがけない問題が発生している。
イディが色気づいてきやがった。
子供だ子供だと思っていたらいつのまにか13歳。
身長は私よりまだ頭半分くらい低いが、めっきり男らしくなってきた。
ついこの間まで私の膝の上でうさぎみたいにモソモソおやつを食べていたのに。
パーティーでダンスを踊れば、頬を赤らめて。
二人きりになれば手を握り無言になる。
極めつけに他の令息とダンスを踊ると嫉妬して邪魔する始末。
まあ、そういうお年頃よね。
イディから見たら私はちょっとくらいなら手を出してもいい年上のお姉さんだ。
ダンスを邪魔したあげく手を引いてバルコニーに連れ出す。
ご婦人方は微笑ましくクスクス笑って見ている。
「もうっ、イディったらマナーが悪いわよ。
マダム達に笑われちゃったじゃない。」
後ろから抱きつき、
「クリスが悪い!」
振り返ろうとすると、
「こっち見るな!」
もうっ、思春期まっただ中ね。
「クリスはひどい、自分だけ大人になって。」
それはしょうがないじゃない。
でも良かった。
本当ならこの時期のイディは私の事が嫌で仕方がない頃だ。
自分が美しいことを自覚し、その婚約者が醜い事に憤りを感じる。
仕方ない事だと思う。人は皆誰でも綺麗な人が好きだ。
私はこの状況を楽しんでいる。
来年になれば聖女が現れる。
もうしばらくだけ、この愛しい人に好かれていたい。嫉妬されていたい。
私はあんなに愛さないと誓ったのに、イデオンを愛してしまった。
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