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 僕は諦めない!
 皆、僕が何も出来ない皇子だと思っているんだろう。
「アノニマス、出でよ。」
「はっ、御前に。」
 僕には従者は付けてくれなかったが、皇族には常に影に潜む者はついている。
「ストラディアの王族に関する秘密を調べてくれ。どうせ何人かはストラディアに潜んでいるのだろう?」
「ジュリアス殿下、それは私の任務ではございません。」
 アノニマスは通常姿を見せる事はない。ましてや言葉を交わすなどもっての他。
 主の護衛すらしない。
 ただ記録するのだ、主が何をしたかとか誰に何をされたか。本当の敵を見定めて対策と報復をするために、生き残るのが任務。本来は主にその存在すら気づかれてはならない存在。
 だけど僕は幼いころから刺客に狙われていたため感が鋭い。
 何人ものアノニマスを見つけてその度に交代させられたものだから僕だけは特例で見つかっても拝め無しという事になったらしい。
 それをいいことに困りごとができたらアノニマスを使っている。
 ストラディアに来て最初から感じた違和感。
 この際だから全部暴いてやる。
 レナード本人が言うこと聞かないなら、回りから攻めてやる。
 アンジェリカから聞こうとしたが、国家機密は話してはくれない。彼女はとても愛国心がつよい。
 彼女のアローズ公爵家は王族にもっとも近い。
 彼女自身も継承権を持つほどだ。
 ストラディアは王権が弱い。
 王の首などすぐにすげ替えられる。
 そうやって排除されて王族は減っていった。
 そして政権を握っているのはアローズ公爵家だ。
 だがそれは悪い事でもない。
 事実そのおかげでストラディアは安定しているのだから。
「アンジェリカ、君はレナード以外ならば誰と結婚したい?」
「そうですね…コストナー公爵家の長男かエディルグレイ公爵家の長男ですわね。」
 コストナー公爵家ね長男は8歳エディルグレイ公爵家の長男は12歳。年下すぎるが、共に継承権をもつ。
「すなわち君と結婚した者が王位につくと言うことか。」
「その確率は高いですわね。」
「君自身の気持ちはどうなのだ?」
「…望むことは出来ません。
 夢見た事はありますが、叶わない事です。」
「そんな事はないだろう?」
「結婚はしたくないのです。
 出来る事なら世界中を旅してみたい。ですが、女性の身でそれは出来ない。
 安全な国だけ少し旅行して結局はストラディアに帰ってくることになるでしょう。そしてその後は好奇の目に晒されて厄介者扱いです。」
 これか!
 アンジェリカはミシェルが嫌いで結婚したくない。
 この言葉を聞いて僕は彼女を不憫に思い連れて行くのか。
 だけど、僕はアンジェリカの将来に責任が持てるのか?
 こんなに国を大切に思っているアンジェリカがストラディアを捨てる事も難しいと思うし。
 小説の中の僕はちょっと無責任じゃないか?
「女性も国の大使になれたらいいのにね。」
「本当に…。」
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