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第一章、魔王を粛清するまで 

第14話・大天使という輩を粛清

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 ゾンビの祝福という不死の何かになるスキルを手に入れた俺は大天使を召喚することを決意する。召喚した大天使は金色すぎて、残念成金の匂いがする。





 召喚された大天使はものすごく動揺している。

 「えぅ!?わ、私を、し、召喚したのは・・・あ、あなた?」

 「そ、そうですが」

 「ア、アンデッドではないのですか?」
 
 大天使は、自分を召喚したものがアンデッドだと一目で見抜いていたが、青年の容姿に加え丁寧な言葉を話すために思わずアンデッドなのかを聞いてしまっていた。

 俺は大天使が心底戸惑っていることに、その気持ちよく分かるよぉと心の中で頷く。
 なんで闇属性に振り切ったアンデッドの俺が光属性に振り切った大天使を召喚できているのかだろ?俺も聞きたい。にしてもやはり天使様なだけあってアンデッドの俺とも話をしてくれそうだ。
 清廉潔白という言葉を具現化したような上位の存在であろう大天使様は、たとえ醜くて汚くて醜いアンデッドだとしても寛容な気持ちで話してくれるってものよ。

 「そうなんです、私はアンデッドでしッッ」

 ソルがアンデッドだと答えている最中に大天使は瞬時に接近、金色の槍をソルへ突き刺す。
 突き刺さった槍はとてつもない力を秘めており貧弱なソルの身体は爆散した。

 大天使はソルを爆散させながら思う、何故アンデッドが私を召喚できたのだろう?
 いや、何かの間違いで召喚できるようになったとしても、何故アンデッドが召喚しようと思ったのだろう。

 
 私は召喚された際、清く正しいものになら仕えてもいいと思っていた。
 だが、明らかに悪意を持った不浄な存在であるアンデッドが召喚したとなれば話は別だ。生かしておけば生者に不幸をまき散らすのは確実と判断し殲滅したのだけど・・・もちろんアンデッドを倒したことに後悔ない、それでも話も聞かずに殺してしまったことに少しだけ罪悪感が募る。





 背後から、何者かの手が大天使の肩に置かれた。

 「!?」

 大天使の肩がビクッと跳ねる。
 私が気配すら感じることなく背後を取られ、ましてや肩に手を置かれている。魔王軍幹部とも戦ったことがあり、雑兵ならば数千を一人で屠る自信さえあるこの私が背後をとられているなんて、どのような存在が現れたのかと硬直しながら冷や汗をかく。

 「会話すらできないクズが」

 とても威圧的で低い声がする。
 その声は私を虫けらだと思っているように聞こえた。

 「身の程を分からせてやる」

 大天使は危機感からか体が動くようになり、この状況を脱しようとする。

 「生贄召喚」

 ソルが呟くと大天使の足元に魔法陣が展開し、大天使は一瞬のうちに魔法陣へ沈んでいく。そして、その魔法陣から大天使が片膝をついた状態で召喚される。その身体はガタガタと震え、真っ青な顔で過呼吸のような状態となっている。

 ソルは再度召喚された大天使の肩に手を置きながら口を歪める。
 こいつの状態を見るに生贄召喚は相当酷い目に合うらしい。さすが生まれてきたことを後悔させるというだけはある、会話すらできないクズには当然の報いだな。
 
 「大天使、ゾンビの俺に忠誠を誓え」
 
 大天使は極度に衰弱しなにも考えられない状態ではあったが、ソルの言葉で我に返る。
 このアンデッドは異常、いや、異常などという言葉で収まるような存在ではない。ここで確実に殲滅しなければ世界に大きな災いをもたらすのは目にみえている、大天使の目に使命感という火が灯り邪悪な化身を滅ぼそうとする。

 「生贄召喚」

 ソルは大天使が行動を起こそうとした瞬間に生贄召喚を執行する。大天使の足元へ再度魔法陣が展開し、大天使は一瞬のうちに魔法陣の中に沈んだ。
 その後、その魔法陣から召喚された大天使は前回と同じかそれ以上に衰弱した状態で召喚された。
 俺は当然のように魔法陣から出てきた大天使の肩に手を置く。

 「大天使、ゾンビの俺に忠誠を誓え」

 大天使はビクッとして身体を震わせながら怯える。
 2度目の生贄召喚を味わった事により身体の芯から恐怖に支配され、正義感や使命感などといったものが沸き上がってこない。ひたすらに逃げ出したい、もうあれを味わいたくない、それだけが頭を支配する。

 「分かるだろ、お前が助かる道はゾンビの俺に忠誠を誓うしかない。あ、お前なんかに時間をかけるのも勿体ないし、ここで忠誠を誓わないなら10回ぐらい連続で味わってみるか?」


 ソルからこの苦しみに終わりがないと言われたことで、大天使の心は完全に折れる。
 現状、私にはアンデッドに忠誠を誓う以外の選択を与えられていない。だが忠誠を誓ってしまえば天使達から恥さらしやクズだと蔑まれる人生を送る事になる。大天使としてアンデッドに仕えることだけは・・・
 
 大天使の目から光が消えた。
 私が大天使だからいけないんだ。
 私はもう死にたい。死にたいと願った時点で大天使としての私は死んだのと同義、なにものでもない私になったのならアンデッドに忠誠を誓ったとしても問題はない。と自身を正当化することで、この苦しみから逃げる道を選ぶ。

 「ち、忠誠、を、誓い、ます」

 生贄召喚の影響からか声を出すことも苦しいため、絞り出すような声でソルへ伝える。

 「よし、お前は今から俺の配下だ。よろしく頼む」

 「え?」
  
 ソルは先ほどの声と打って変わり優し気な声で大天使へ話しかけ、手を差し出す。大天使はその変わりように戸惑いながらもその手を握る。

 「よ、よろ、し、く、お願い、し、ます」




 実はこのときソルは心の中で狼狽していた。
 
 ど、どうしてしまったんだ俺は!
 確かに問答無用で殺されそうになった事には腹が立つ。腹が立ったのは分かるが、いきなり豹変し大天使を虫けらのように扱う鬼畜野郎のような振る舞いをするか?先ほどの自分が未だに信じられず悶える。記憶を失う前の俺はどんなやつだったんだぁ!!!

 と苦悩し終えて大天使を見ると俺に怯えている、ものすごく。
 いや、それはそれでおかしくない?大天使が俺を殺そうとしたんだよ?
 殺されそうになったから仕返しをしたら怯えられるってどういうこと?と言いたいんだけど、それぐらい怖い思いをしたと言われれば・・・いや、問答無用で殺されそうになったんだから正当防衛待ったなしでしょ!

 「大天使・・・大天使って呼ぶの面倒だな、名前は?」

 「ガ、ガブリ、エ、エル」

 「ガブリエルね、俺の名前はソル。召喚主は俺だけど必要以上に畏まる必要はないから、できれば仲良くしていきたいし」

 ガブリエルって聞いたことある名前だな、有名な天使の名前だったような?うーん、同名という線もあり得るし関係ないよな。

 「あ、あり、がと、う、ござ、います」

 ガブリエルはソルの仲良くするという言葉に怯えていた。
 このアンデッドは私をモルモットか捨て駒にするのが目に見えている・・・私にはなにもなくなってしまった。
 




 ソルの予定では大天使を無事に召喚できたら他も召喚したいと思っていたのだが、殺されたり相手を拷問したりと殺伐な事になり気が滅入りそうだったので辞めておくことにした。あぁ、疲れたなあと思う。
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