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第一章、魔王を粛清するまで 

第9話・2階に現れた小鬼

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俺は剣と盾を装備したゾンビ20体を召喚することに成功し、数の暴力でフロアボスの討伐に成功。ボス討伐後に階段を見つけたので次のフロアへ向かうことに。





 俺を先頭に次のフロアへあがる。
 階段を上がった先には、日の光が眩しく、青々とした木々が太陽に照らされて、颯爽と吹く風がとても心地いい・・・
 
 
 なんて言ってみたかった、絶と望の言葉しか思い浮かばない。

 あんなにも汚い場所を、体感で何十日もがんばってがんばってがんばってやっと攻略して、2階へ行ったらまたも同じような場所だ。当然汚い。
 この状況に絶望しているはずなのに居心地がいいと思うことに、さらに絶望。俺・・・ゾンビだもんな。

 「マスター、心中お察しします」

 2号からも元気だせよと優しくパンチされる。そういう意味だよね?

 「主、醜くて汚くて醜いんだから気にならないだろ?」

 シュラ、お前は許さん。
 その言葉を代弁するかのようにクロがシュラを叱りつけ、シュラは怒られながら俺を睨み、さらに叱られる。シュラは主という言葉の意味を勉強したほうがいいぞ。
 
 
 俺達は召喚したゾンビを合わせると24人、廊下を歩くには大所帯だ。そうなってくると隊列をどのように組むか考えなくてはならないな、ゾンビを半分ずつに分けて10人が前衛→俺達→10人が後衛といった具合に組むのがいいかな。
 前衛にゾンビを多く配置すると前方が見えにくくなるため、もう少し減らしたいところだが強い敵と戦闘する場合、壁となる人数が必要になってくるだろうからこんな感じでいいかな。
 欲を言えば、ゾンビを指揮するリーダーゾンビが何人かいて別動隊を作ってみたい。いや、それなら軍隊を作りたい。俺だけの軍隊、カッコイイな。

 「主の頭はどこまでお花畑なんでしょうか?」

 「愚昧、丁寧に侮辱すれば許されるとでも?」

 もう何も言うまい。
 

 
 ゾロゾロと歩き部屋に入ると、このフロアで初めてのモンスターに出会う。
 
 みるからにゴブリンだ。薄緑色をしていて身長は1m程度で小柄、装備は短剣のみで3体いる。
 フロアボス以外で複数体と戦闘になるのは初めてなわけだが、従えているゾンビの数が20体という事もあり全く不安はない。不足の事態があれば、俺と2号も参戦すれば問題ないはずだ。
 
 「「ギャギャ」」

 ゴブリン同士で顔を合わせて声を上げるとこちらに3体とも走ってくる。
 ゾンビよりゴブリン達の動きのほうが早い、こちらは数の暴力で黙らせる。前衛ゾンビ10体で迎え撃ちつつ、後衛5体も念のためにゴブリンへ向かわせる。
 
 ゴブリン達は10体ものゾンビが迫ってきているにもかかわらず、邪悪な笑みを浮かべながら短剣でゾンビに斬りかかる、斬られそうになったゾンビ達は盾を使って器用に短剣を弾いた。ゴブリン達は弾かれた短剣に体を振り回されたたらを踏む、その隙にゾンビ達がゴブリン達に接近して剣を振り下ろす、何度も何度も。
 ゴブリンの悲鳴やらなんやらの音が聞こえてくるが、ゾンビ達は容赦なく剣を振り下ろす。そして、完勝だといわんばかりに俺の元に戻ってくる。

 うーん、ゴブリン3体では敵にならないな。このフロアの敵は俺よりLvが低いのだろう、またLv上げに時間がかかってしまうなとガックリしてしまう。

 ゴブリンを倒して歩きながら考える。
 先ほどのゴブリン達は俺が目覚めたフロアの敵よりは強かった、というか目覚めたフロアはチュートリアルだったと思う。ということは目が覚めた場所が最下層の1階?するとここが2階か。この建物は上にいけば行くほど強い敵が出現すると。
 最上階まで到達したあかつきにはなにが待ち受けているのやら、この建物から脱出できるとかなら世界を見て歩くのも楽しそうだな。



 俺、2号、シュラ、クロに加えて、召喚したゾンビ達は余裕をもって突き進む。
 このフロアで相対したモンスターは最初に戦ったゴブリン、犬の顔で2足歩行をする石の棍棒を持ったコボルト、青色のスライムより攻撃力と耐久力が上昇してそうな赤色スライム、文字通りに小さい悪魔の小悪魔だ。

 2階のモンスター達は複数かつ近接物理の攻撃をしてくる。俺のゾンビ部隊は複雑な動きはできないが、兵隊としては有能なために無敵の状況だ。それもゾンビ部隊にモンスターがいれば倒せと指示を与えておくだけで、自分で考え行動するため基本的にはなにもすることがない。
 圧倒的強さを振りかざすのはカッコイイと思うのだが、ゾンビ達に戦わせている事に加え観客もいないので退屈だ。今の時代、召喚士も幅広い事ができると面白いと思います!

 「こいつ、誰に向かって話してるんだ」

 シュラがクロに聞こえないような小さな声でつぶやく、俺には聞こえてる。
 声に出していないことぐらいはスルーしてくれよ。



 生死をかけて戦っているのに楽勝すぎるという贅沢な悩みを持ちつつ進んでいると、今までに会ったことのないモンスターと出会った。
 
 「人間が、どうしてここに」

 子供のような声でつぶやいたのは赤い髪に角を生やした少女。小さい鬼の小鬼だ。
 初めて会話できそうなモンスターとの遭遇だ、ハエはハエ叩きにあったからノーカン・・・!?咄嗟にシュラを見ると我関せずの姿勢。全ての話せるモンスターをハエ叩きするわけではないと。
 
 俺は喋ることがままならないため、俺の言葉をクロに喋ってもらう。
 俺達はなぜかこの場所に閉じ込められていて脱出するために彷徨っている事を伝えたところ、小鬼も同じ境遇との事。
 同じ境遇なんてありえるのか?俺達は一番弱いフロアだったと思われる1階で目覚めたため、なにものかが意図して閉じ込めたのかと思ったが、小鬼は2階で目覚めたと言っている。閉じ込められたものが全員1階からスタートするわけではないのか。
 
 小鬼はこのフロアでモンスターを倒しつつ彷徨っていたら、ゾンビを連れた人がいたから声をかけたと。小鬼が俺達に嘘を言っている可能性も捨てきれないが、本当の事を言っているように思える。
 小鬼にLvを聞いてみると16だそうだ。一人で複数体のモンスターと戦えるのか?と聞くと、腕力と頑丈さには自信があるとの事。鬼という種族は脳筋なのか?さらに軽い怪我ぐらいなら一瞬で塞がる再生能力も備えていると、ゾンビの俺とポテンシャルが違いすぎませんか。

 「というか、あなたがゾンビを使役しているんじゃないの?」

 「いえ、私達はマスターに召喚されたもの達なのです」

 「マスター・・・って、そのゾンビ!?」

 はい、そのゾンビです。

 「ゾンビが人を召喚することなんて奇怪な事もあるのね」
 
 小鬼とやらは一段階柔軟な頭になったようだ。

 「もう一人のゾンビは召喚されていないの?」

 「はい、1階で仲間になったそうです」

 お互いの自己紹介もかねてクロが小鬼と話を続ける。
 小鬼も俺と同じく過去の記憶がないようで、名前をルナとしたとの事。

 何故ルナなのかと聞くと可愛いから。その流れで俺達にも名前を聞いてくる・・・そうだ、名前を必要としていなかったから1号2号としかつけてないわ、流石に1号2号はダサすぎる。
 クロがどう答えますか?と聞いてくる。ルナは俺が召喚したわけじゃないから、マスターとか主と呼ばすわけにはいかないよな。
 悩んだ結果、俺の名前はソルとした。今から俺はソルだ!由来は当然ルナの名前から連想した。
 2号は言葉をしゃべれないから”ユニ”とした。由来は・・・お察しだ。

 「ソル、よろしく」
 
 「あ”あ”」(よろしく)

 俺達のパーティーに新しく小鬼のルナが入った。
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