上 下
26 / 29
     第二十九章

久しぶりの土地で

しおりを挟む
 電車の中は家族連れが多く、とても賑やかだった。
僕達は、昔紀伊名と僕がお世話になった。孤児院に向かっている途中の電車内だ。紀伊名は、とても暗い顔をしてるが皆に迷惑をかけないようにと、笑顔を振舞っている。そして、電車を乗り継ぐ事二時間、やっとの思いで着いた。

「やっと着いた!二時間も座ってたら流石に疲れるわね」

「そうですね」

「とりあえず、予約した旅館に荷物を置こう。それからどこに行くか決めよう」

「賛成!荷物持ちながらは疲れるしね」

満場一致で、旅館に荷物を置くことにした。
僕と紀伊名は最初に行く所は決まっている。
もちろん、可奈さんのいる孤児院だ。まだあればいいんだけどな。可奈さん元気にやってるかな?

旅館には着いたが、写真とは大違いだった。
皆でどこに泊まるか、調べていたところ一番安く、ご飯も付いているという事でこの旅館にしたんだが、

「いかにも、幽霊が出そうな旅館ね…」

「大丈夫でしょ、幽霊なんて出るわけないって…」

美優は強がっていたが、絶対に怖がってる。
幽霊ね…
本当にいるなら見てみたいものだ。

「皆、行こうよ。先に行くよ?」

「「「ちょっと待ってーーー!」」」

「予約していた高野です」

「高野様と御一行様ですね。こちらへどうぞ」

ギシッ、ギシッ。大丈夫なのか、この廊下絶対に穴が空いてもおかしくないぞ?夜が危ないな、ライト持って来といて正解だった。

「こちらが高野様のお部屋になります。そして向かいが御一行様のお部屋になります。朝食とお夕飯の時間は七時三十分となっておりますので、下の食堂まで来てください」

「ありがとうございます」

「先輩、あの夜先輩の部屋に行ってもいいですか?」

「じゃあ私も」

「涼平、お願い!」

「涼ちゃんと寝るなんて久しぶりだね!」

なんの為に二部屋も予約したと思ってるんだよ。皆あの時、別部屋がいいって言うから向かいの部屋にしたのに無駄じゃないか!

「分かったから荷物置いてきたら?」

「さっすが涼平!」

そんな事いつもなら言わないくせに。こういう時だけ頼って来るんだから。

「じゃあ僕と紀伊名は孤児院に行ってくるから。集合場所はこの旅館に来る時通った商店街の前で」

「あんた何言ってんのよ?」

「何って何が?」

「私達も行くに決まってるでしょ?」

「なんで?思い出も何もないのに?」

「あんたがここでどんな生活していたか気になるからに決まってるでしょ?」

なぜこうなる!僕は可奈さんに挨拶に行こうと思ってたのに、かと言って美優は言い出したら止まらないからなぁ。しょうがないかな?

「分かった。でも変な事言わないでよ!」

「分かってるって!」

本当に分かってるのかな?なんか不安だな。

そうして、旅館から二十分歩いて、孤児院に着いた。

「お兄ちゃん達誰?」

「君、ここに可奈さんって人いるかな?」

「いるよ。でも今風邪引いてて困ってるの」

またか、なんでこういう時に限って風邪を引くかな。
とりあえず案内してもらおう。の前に、

「君、ここに料理を作れる人、いる?」

「可奈さん以外作れないよ」

なるほど、じゃあやるしかないか。

「可奈さんの所に案内してくれないかな?僕昔ここにいたから顔を見たら分かると思うから」

「そうなの?それじゃあ、こっちに来て!」

僕は小さい手に引っ張られて、可奈さんの部屋に案内してもらった。  

「可奈さん。昔ここにいたって人来てくれたよ」

「お久しぶりです。可奈さん」

「涼平君、久しぶりね!元気にしてた?」

「はい、ピンピンしてます。おかゆ作ってくるので待っていてください」

「そんな、悪いわよ」

「遠慮はなしです!」

そう言って、僕はキッチンに向かった。
そういえば可奈さんが風邪を引いた時も僕がおかゆ作って持って行ったな。あの時は、少し焦げたけど。

「可奈さん、出来ましたよ!はい口開けてください」

「涼平君、料理が昔より上手くなったんじゃない?」

「そうですか?」

「そうよー。昔のおかゆは焦げてたのに、今はこんなに美味しく出来てる」

僕は、部屋を出た。
すると紀伊名が心配した顔をして僕の所に来た。

「可奈さん大丈夫だった?」

「うん、明日には回復すると思うよ」

「良かったー」

とりあえず、こんなものかな。美優達にお使い頼んだけど、大丈夫かな?
心配だから、行ってくるか。
                      続く……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。

5度目の求婚は心の赴くままに

しゃーりん
恋愛
侯爵令息パトリックは過去4回、公爵令嬢ミルフィーナに求婚して断られた。しかも『また来年、求婚してね』と言われ続けて。 そして5度目。18歳になる彼女は求婚を受けるだろう。彼女の中ではそういう筋書きで今まで断ってきたのだから。 しかし、パトリックは年々疑問に感じていた。どうして断られるのに求婚させられるのか、と。 彼女のことを知ろうと毎月誘っても、半分以上は彼女の妹とお茶を飲んで過ごしていた。 悩んだパトリックは5度目の求婚当日、彼女の顔を見て決意をする、というお話です。

婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました

山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。  でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。  そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。  長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。 脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、 「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」 「なりすましヒロインの娘」 と同じ世界です。 このお話は小説家になろうにも投稿しています

異世界でも、とりあえず生きておく

波間柏
恋愛
 大学の図書室で友達を待っていたのにどうやら寝てしまったようで。目を覚ました時、何故か私は戦いの渦中に座っていた。 いや、何処よここは? どうした私?

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。

青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった) 妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。 そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。 その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。 私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。 誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・

騎士になれない人に婚約を破棄された私は騎士になりました

黒木 楓
恋愛
子爵令嬢ルミナは、婚約者であるナドクから「俺が騎士試験に落ち続けているのはお前のせいだ」と言われてしまう。 伯爵令嬢のキャサリンが傍にいる時は調子がいいから受かるはずと、ナドクはルミナとの婚約を破棄する。 ナドクが浮気をしている間にルミナは鍛え強くなっていたことも気に入らないようで、何を言っても無意味だった。 その後、婚約を破棄されたルミナは騎士試験を受けることにする。 試験は無事に合格し、婚約者を変えてもナドクは試験に落ちていた。

処理中です...