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しおりを挟む翌朝は身体中の筋肉が悲鳴をあげて起き上がれない。
朝、起こしにきたハルは目を真っ赤に泣き腫らした私を見て心配気に何かと世話をやきたがった。
クッションを重ねて痛くないように優しく抱き起こし、何も聞かずに瞼に濡れた布をあててくれた。
「ソフィアお嬢様、朝食はお部屋にお持ちしますね。それと、あとで旦那様がお話に来られるとのことです。」
「わかったわ。ハルありがとう。」
朝食を食べ終えた頃お父様がやって来た。
「ソフィア、体調はどうだい?」
「筋肉痛以外は大丈夫です。」
と、微笑んで見せるも瞼が腫れているせいで目が半分しか開かない。
「昨日はずぶ濡れのソフィアを見た途端気が動転してそのまま連れて帰ってしまったが......その......マーガレット様と何かあったのか?」
『ダイキライ』って言われた......なんて言えないよね。
「いいえ、マーガレット様は王妃様主催のお茶会が初めてで不慣れな私をボートに誘って下さいました。それなのに私ったら舞い上がって池に落ちて、みなさんにご迷惑をかけてしまって......」
「王妃様には私の方で謝罪しておくからソフィアは気にしなくていいよ。」
そう言うとお父様は心配しながらも王宮へと慌ただしく出掛けて行った。
お父様と話して少し気持ちが軽くなる。
もしお父様に前世記憶の話しをしたら信じてくれるだろうか?
その前に今だに自分でも信じられない気持ちでいるのにちゃんと話せるのだろうか?
コンコン
「ソフィアお嬢様、シリウス殿下よりお見舞いの花束とカードが届いてますよ。」
ハルがそう言いながら色とりどりの花で可愛くアレンジされた花束を差し出す。
「なんてかわいいの!あー、いい匂い」
思い切り花の匂いを吸い込んでいるとハルの冷たい目が。
「ソフィアお嬢様っ!もう少し淑女らしく!」
上質な紙の封筒からカードを取り出す。
私の初めてのお茶会に急務の用事が入ってエスコート出来なかったことへのお詫びと、池に落ちたことを心配していること、あと来週王立学園に入学してくることを楽しみに待っていると締め括られていた。
そう来週は王立学園の入学式だ。この王国の貴族の子女はもちろん、裕福な商人の息女、また成績優秀な特待生枠の庶民が15歳から三年間学ぶ。
マーガレット様も今年入学する。
『ダイキライ』......私、何かしちゃったかな?少し不安。いや不安しかない。
シリウス殿下は最高学年で生徒会長をされると聞いている。生徒会は学年ごとに優秀な生徒が数名づつで構成されているらしいからまず私に声がかかることはない。
美しい容姿と明るく優しい性格で社交界の華だったお母様と、この国一番の知性と言われている侯爵で宰相のお父様の子供なのに......容姿も平凡、学力も中の中の私。
もしかして前世で流行っていた、ここはゲームの世界でゲームの強制力により私が悪役令嬢でシリウス殿下の婚約者になっているとか......なんて考えてみるもゲーム自体やったことないから先手必勝なんて出来ないし。そんなことを思いながら書いたシリウス殿下へのお礼の手紙は前世の私に思い切り振り切ったようで......ハートと星マークが所々にちりばめられ、池にダイブした話しの最後にはぼうだの涙を流し両肩にカエルと魚を乗せた私のイラストまで!
『ぴえん』と泣いてるし。
前世の私はピアノとこんな落書きばかりして勉強しなかったのだろう。
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