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最終章

第314話 里帰り 其の二

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 懐かしい扉を開けると、小麦の香ばしい匂いがふわっと広がる。

「ただいま」
「──おかえり、マリー」

 パパは私が帰ってきたことに驚いて目を丸くしていたが、すぐに微笑んでおかえり、と言ってくれた。パパを一人置いて村を出た私が言うのもなんだけど、元気そうで安心した。

 店内のパンが並んでいる棚は私が手伝っていたときと比べて減っていたが、パンの艶は増している気がした。当たり前だけど、私がいない間も毎日パンを焼いていたからだろう。

「今日帰ってくるとは思ってなくて……とりあえず荷物置いたら、手を洗っておいで。余りのパンを食べながらゆっくり話そう」
「分かった。店番は──しながら話せばいっか」

 二年間レネさんのもとで修行をして、回復魔法は見違えるほどに上達した。その成果を早く見せたいし、話したいことだって数えきれないほどある。

 私はパンを取りに奥へと引っ込んでいったパパの背中をしばらく眺めてから、手を洗いに行った。



 昨晩は俺たちの後には誰も来なかったらしいので、結局アドレアは孤児院に泊まったようだった。

こちらは昨日は寝る前まで持ってきたカードゲームで三人で遊びながら、騎士団の生活やダンジョンの話をしていたが、二人もゆっくりと家で過ごせただろうか。

 宿屋で朝食を摂り冒険者ギルドで待っていると、すぐにアドレアとマリーがやってきたので、今日受けるクエストを決めに掲示板に向かう。

「パーティのランクは評価不能って言われたけど、Sランク冒険者様が二人もいるからここにある大抵のクエストは受けられちゃうね。いっそのこと全部受けるのもありかも」
「もう、マリーったら」

 マリーの冗談に笑うアドレア。昨日登録を済ませたときに、ランクは評価不能と言われたのだ。

 Sランク冒険者が二人入っているパーティなど前代未聞な上に、だからと言ってパーティ内での実力差があるので、そのままBやAなどの高いランクと認定することもできないらしい。そのため、とりあえずここにある討伐クエストはどれも受けていいということになったというわけだ。

「再結成一発目はやっぱり討伐クエストがいいかな。どれも簡単そうなものばかりだけど……数があるから迷うね」
「久しぶりだから最初は簡単なのにするか、それとも初めだからこそ景気よく高いランクのにするか──どっちもありかなぁ。そうだ、ここは発起人のジャンに決めてもらうのはどうかな?」

 エミルがジャンの方をパッと見ると、ジャンは迷わず一つの張り紙を指差す。

「これで……どうかな」

 ジャンの指の先にはこのギルドの最高ランクであるDランク相当のクエストがあった。
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