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最終章

第296話 使い道

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 存分に最奥部の魔力結晶を眺めた後、俺たちは来た道を辿っていく。最奥部手前で大量のモンスターを殲滅したため、魔力結晶でみんなの抱えている袋はザクザクだ。

 序盤からたくさん狩っていた師匠の袋に入りきらなくなった分を、俺の袋に入れているためほとんど戦闘に参加していない俺の袋でさえ半分ほどのかさがある。

 師匠と二人で来たときと同じように後ろからマップを見ながらどっちに進むかを指示していく。たまに出くわすモンスターも前にいる師匠かレオンさんがサクッと倒していき、時間はかかったがスムーズに出口まで戻ってこれた。

「おひさまが眩しいねぇ」

 突然ダンジョンの中から現れた俺たちに並んでいる人がギョッとするのも構わず、サラさんが手で庇を作りながら呟く。

 ダンジョンの中では炎の灯りだけの環境に目が慣れていたので、たしかにいつもの日光が眩しく感じる。マップを見ながら走ることに集中していたせいで気付かなかったが、かなりお腹も空いているし今はちょうどお昼時だろうか。

 すると隣を歩く師匠のお腹から小さく、ぐぅ、という音が聞こえてくる。レオンさんとサラさんは前を歩いているし、ダンジョン待ちの列からは離れているので、聞こえたのはきっと俺だけだろう。

「帰る前にお店に入って何か食べようか」

 こっちを向いてそう告げる師匠は少し恥ずかしそうだった。



 二人もやはりお腹が空いていたようなので、解散する前にお昼を摂ることにした。考えてみれば朝から歩きづめで、加えて戦闘もしているのにお腹が空かないわけがない。

「で、ロンドはその魔力結晶はどうするんだい?」

 熱々のお肉を頬張りながらサラさんが師匠に訊ねる。注文で結構な量を頼んだときには驚いたが、パクパクと食べ進めるサラさんの手は止まることを知らない。どうやら見た目からは全く分からないがかなりの健啖家らしい。

「やっぱりコレクションですかね……でもこれだけの資源を独り占めするのは気が引けるというか有効活用した方がいいんだろうとは思うんですよね。でも渡す人もいませんし、結局毎日眺めるだけになりそうです」
「そうかい。じゃあこれからの弟子たちのために今半分くらい私に──というわけにもいかないだろうねぇ。きっとロンドも分けるにしても綺麗なのは手元に置いておきたいだろう?」
「そうですねぇ」

 また二人が食事に戻ると、今度はレオンさんが口を開く。

「わしはどうするか考えてなかったのう。うちは弟子たちが必要なわけでもないし……あ、魔力操作を使うのだったらあった方がいいかもしれんな。やっぱり魔力操作にも魔力結晶は効果があるんじゃろうか」
「あるね。魔力操作も魔法も魔力を動かすところまでは一緒だから、やるんだったらあった方がいいさね」
「そうかい。まあそれでもこの量だと余るだろうから、その分は知り合いに渡すとするかのう」

 なるほど──俺が行ってからレオンさんの道場では魔力操作を巧みに操る剣士が現れたらしいから、その助けになるかもということか。俺の魔力結晶は……数は少ないが今回は大きいのがいくつか採れた。次会ったときにアクスウィルのローランたちに渡そうかな。
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