パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第294話 再戦

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 最奥部の巨大な魔力結晶であろう輝きに、四人とも同時に思わず叫んでしまう。

 王国最大にして百年近く前から存在しているトレトのダンジョンの核となっている魔力結晶──その大きさはどれほどなのだろうか。

 トレトのダンジョンのものでも一人で抱えるのが難しいほどだった。それの何倍、いや何十倍もの規模のダンジョンの核となれば超巨大なのだろうか。それとも百年もの間モンスターを生み出しつづけた本体は、もう擦り減って小さくなってしまっているのだろうか。

 いずれにせよ、この目で確かめたい。そしてそれは皆同じ思いなのだろう、三人の攻撃がさきほどよりも苛烈になっていく。

 俺ももうマップを作っている場合ではないので闘いに参加したいのだが、レオンさんと師匠は流れるように次から次へとモンスターを斬っているし、サラさんはゲヘナではない炎系統の魔法をいくつも使って轟轟とモンスターを燃やしていて入る隙がない。

 ならばせめて後ろから追いかけてきたモンスターの相手をしようかと構えていると、マーナ・ガルムが勢いよく突っ込んでくる。角を曲がってきて視界に捉えた瞬間に土魔法を発動させ、ひとまず勢いのまま突っ込まれるのを阻止する。

 やってきたのがマーナ・ガルムでよかった。後ろからのモンスターと闘おうと思ったものの、初めて闘うモンスター相手では心もとなかったからな。この闘いでサラさんの道場で不覚をとったリベンジをさせてもらおう。

 土壁が地面から出てきたが、マーナ・ガルムの足音は止まらない。おそらく土壁を飛び越えるつもりなのだ。たくさんの音の中から壁の向こうから聞こえてくるマーナ・ガルムの足音のみに集中する。

 壁を飛び越えるのならそろそろ地面を蹴るはずだ──そう考えて耳を澄ませていると、ひと際大きい音がした後に足音が途切れる。

 来る──すでに完全に盛り上がった土壁のすぐ上を睨んでいると、マーナ・ガルムの頭が出てくる。それを確認するとすぐさま俺も地面を蹴り、全速力でマーナ・ガルムに斬りかかる。

 相手が俺を認識して攻撃態勢に入る前にこちらから攻撃を当てに行くのだ。空中にいるマーナ・ガルムは俺と違って身動きがとれないはず──この一撃で仕留める。

「──ハッ!」

 素早く炎を魔法剣に纏わせ、地面を蹴った勢いのまま剣を振りぬく。やはり本物のマーナ・ガルム同様にそう簡単に斬れるわけではないが、しっかりと手ごたえがある。

 少ししてマーナ・ガルムの姿が灰のように散り、剣を伝う手ごたえもフッと消える。

 バランスを崩して土壁の向こう側にボトリと落ちるが、風の魔法で衝撃を和らげたのでダメージはさほどない。素早く起き上がり、新たなモンスターが来ないのを確認してからマーナ・ガルムの魔力結晶を拾う。

 手でしっかりと握れるほどの大きさで、今日俺が採った中では一番のサイズだ。袋に入れてしっかりと口を閉めてから、土壁を元に戻す。師匠たちの方はどうなっているだろうか。
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