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最終章
第281話 それから
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俺が目覚めてから数日が経ち、街は徐々にではあるが元の様相を取り戻しつつあった。
中心部の通りを埋めつくしていた瓦礫はもう除けられて、見慣れた石畳が見える状態になっているが、半壊した建物が倒れてくる危険性から通行はまだ禁止されている。
師匠はまだ包帯を巻いて生活しているが、傷に響くためにゆっくりとしていた動きも少しずつ以前のように戻ってきている気がする。
何もかもが元通りに戻りつつあったが、今回のテロを受けた国の対応は未だ発表されていなかった。
巷では犯人は捕まっただとか捕まっていないだとか、他国からの侵略だとか様々な噂が飛び交っているが、どれが本当なのかは分からない。
結局なぜあんなに大きなオーガが一瞬にして街に出たのかも、誰の仕業によるものなのかも分からないまま毎日を送っていると、王宮からの馬車がやってくる。
「こちらはロンド様宛、こちらはコルネ様宛でございます」
馬車から降りてきた使いの人はそう言って二つの封筒を俺と師匠に手渡してくる。俺宛の書状は初めてなので緊張するな。
隣で強張った表情のままペーパーナイフで封を切っている師匠は、俺とは別の意味で緊張しているようだ。
「偽物の使者に騙されラムハを離れてしまい、そのうえ自分は深手を負って何もできなかったという大失態──Sランク冒険者の称号をはく奪されるかもしれない」とここ最近戦々恐々としていたから、封筒の中にはそのお達しが入っているんじゃないかと思っているのだろう。
使い終わった師匠からペーパーナイフを受け取り、ズズズと封を開ける。師匠と違い、俺への書状はおそらくオーガを倒したことへの褒賞だろうから比較的安心して見られるのだが──それよりも師匠が気になって、自分の書状を読み始める前に隣を見る。
師匠はすごいスピードで目を動かしていき、読み終えると眉尻をへにゃりと下げる。よかった……少なくともSランク冒険者ではいられるようだ。
続いて俺も封筒から中身を取り出し、読み進めていく。やはりこの間のオーガを倒したことに対する褒賞らしい──がその文の下に書いてある文字に俺は目玉が飛び出そうになった。
「え、え、Sランク──!?」
並んでいる褒賞の中に「Sランク冒険者への昇格」という文字があったのだ。
中心部の通りを埋めつくしていた瓦礫はもう除けられて、見慣れた石畳が見える状態になっているが、半壊した建物が倒れてくる危険性から通行はまだ禁止されている。
師匠はまだ包帯を巻いて生活しているが、傷に響くためにゆっくりとしていた動きも少しずつ以前のように戻ってきている気がする。
何もかもが元通りに戻りつつあったが、今回のテロを受けた国の対応は未だ発表されていなかった。
巷では犯人は捕まっただとか捕まっていないだとか、他国からの侵略だとか様々な噂が飛び交っているが、どれが本当なのかは分からない。
結局なぜあんなに大きなオーガが一瞬にして街に出たのかも、誰の仕業によるものなのかも分からないまま毎日を送っていると、王宮からの馬車がやってくる。
「こちらはロンド様宛、こちらはコルネ様宛でございます」
馬車から降りてきた使いの人はそう言って二つの封筒を俺と師匠に手渡してくる。俺宛の書状は初めてなので緊張するな。
隣で強張った表情のままペーパーナイフで封を切っている師匠は、俺とは別の意味で緊張しているようだ。
「偽物の使者に騙されラムハを離れてしまい、そのうえ自分は深手を負って何もできなかったという大失態──Sランク冒険者の称号をはく奪されるかもしれない」とここ最近戦々恐々としていたから、封筒の中にはそのお達しが入っているんじゃないかと思っているのだろう。
使い終わった師匠からペーパーナイフを受け取り、ズズズと封を開ける。師匠と違い、俺への書状はおそらくオーガを倒したことへの褒賞だろうから比較的安心して見られるのだが──それよりも師匠が気になって、自分の書状を読み始める前に隣を見る。
師匠はすごいスピードで目を動かしていき、読み終えると眉尻をへにゃりと下げる。よかった……少なくともSランク冒険者ではいられるようだ。
続いて俺も封筒から中身を取り出し、読み進めていく。やはりこの間のオーガを倒したことに対する褒賞らしい──がその文の下に書いてある文字に俺は目玉が飛び出そうになった。
「え、え、Sランク──!?」
並んでいる褒賞の中に「Sランク冒険者への昇格」という文字があったのだ。
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