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最終章

第265話 計画

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 私は自室の扉を小さく開け、隙間から外に誰もいないのを確認してから静かに話しはじめる。

「それでは今から計画の内容と役割を説明する。いいか──ベン、ロバート、ペトラ、ソフィ?」

 執事にメイド、文官──私の前に並ぶ四人は様々な恰好をしているが、同じ神妙な面持ちで小さく頷く。

「まず計画全体の説明だ。私が用意した三体のモンスターたちをこのマジックアイテムに封じ込め、Sランク冒険者がいる街で解き放つ──ここまではいいな?」

 手に持ったマジックアイテムを持ち上げて皆に見せる。このマジックアイテムは私の先祖が悪戯好きの妖精から貰ったと言われているものだ。

 見た目は中身をくり抜いて水筒に使う植物の実にしか見えないのだが、名前を呼んだ者を中に閉じ込めることができるようになっている。昔は数が多かったらしいのだが今は三つだけが私の代に伝わっている。

「はい。使うモンスターはバジリスク、ケルベロス、オーガの三体と聞いています」

 すぐに執事服を着ているベンが生真面目な顔で返事をする。

「その通りだ、ベン。三体ともしっかりと狂暴に改造してある。バジリスクにはレオン様の街を、ケルベロスにはサラ様の街を、オーガにはロンド様の街を襲わせるのだ。」

 地図を広げ、分かりやすいようにそれぞれの場所を押さえながら説明していく。

「個人に頼る現体制の改善を訴えるために、お三方のところにモンスターは差し向けるが、本命はロンド様のいらっしゃるラムハだ。ラムハは他に比べ戦力が圧倒的に少ないうえに、ここが危険に晒されれば商人を通してすぐに諸外国にも露呈する」

 本来、国防とは軍などの組織が担うものなのだ。にもかかわらずこの国の防衛体制は『個』に頼りきっているにも関わらず、国はそれを改善しようとしない。

 理由は戦力不足──そうは言っているが、それを言い訳にこの体制は何十年も続いている。若かったレオン様やサラ様ももうご高齢だ。冒険者会議で見せるお姿は元気そうだが、いつ何があってもおかしくはない。

その間にこの国は不足していた戦力を補えたか? 答えは否、だ。王国直属の部隊に所属している騎士や魔法師の人数は年々増加しているものの、Sランク冒険者の代わりを務めるほどの人員を捻出するには程遠い。
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