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第十一章 サラの魔法道場編

第245話 サラの魔法道場 其の十

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「そろそろ自分たちの修行に戻りな!」

 いろんな系統の魔法剣を何度もせがまれてさすがにそろそろ鬱陶しくなってきた頃、サラさんがどこからともなくやってきてパンパンと手を叩くと、俺の周りに集まっていたお弟子さんたちが散っていく。

「魔法剣の尖端には芯となる剣がない部分がある……ということは魔法剣は芯に魔法を纏わせているのではなく、実際は我々魔法使いと同じように座標を指定してそれを剣と同時に動かしている……?」

 気を取り直して研究の続きをしようかとエリックを見ると、何やらぶつぶつと呟いていた。俺はこのままでは何もできないので話しかけるべきかとエリックの方を見ていると、彼は俺の視線に気付いたようだった。

「コルネ、もう一回風の魔法剣を見せてくれない?」

 軽く頷き、風魔法を剣に纏わせると、エリックは剣の切先を凝視してくる。そういえば先ほどの呟きにも尖端がどうとか言っていたな。何かヒントを得たんだろうか。

「魔法の部分をもうちょっと長くできる?」

 剣から目を離さずにエリックが言うのでぐぐっと魔法を延ばし、魔法の部分を長くする。

「そのままゆっくり動かしてみて」

 言われるままに剣をエリックに当たらないようにゆっくりと動かす。ゆっくり動かすのは少しきついが、この剣ではプルプルと震えたりなどはしない。

「ゆっくり動かしたとき、魔法が剣についてくるような動きをしてる……ということは剣と一緒に魔法が動くのではなく、完全に剣と一体化してるのか? もしかすると何か芯になるものがあると魔法が安定しやすくなる……?」

 難しい顔をしてぶつぶつ言っていたかと思うとハッと何かに気付いたような顔をして、「ちょっと待ってて」とだけ残してエリックはどこかに駆けだしていく。

 後ろ姿が壁の向こうに消えた後、周りが何かをしている中でぽかんとただ待っているのもなんだと思い素振りをしていると、しばらくしてエリックは帰ってきた。手には枝を持っているから、おそらく寮の裏手にある森に行ってきたのだろう。

 戻ってくると、エリックは息を弾ませたまま取ってきた枝に魔法を纏わせようとする。魔法剣の真似をしているのだろうか。

 しかしそれはかなり難しいことをしていると思う。俺の剣のように魔力結晶が使われているわけでもないただの枝に、初心者が何かに魔法を纏わせるのはかなりハードルが高い。

 俺も昔、普通の剣で魔法剣を使っていたのできっと出来ないことはないだろうが。

「コルネ、これに風魔法を纏わせられる?」

 何回か挑戦してはみたがどうすればいいのか分からないといった様子のエリックが俺に手本を見せてほしいと頼んでくる。俺も実戦では使えないような貧弱なものしか纏わせられないと思うが、やってみる。

 魔力を流すと、うっすらと枝が風魔法を纏う。それを近くまで寄ってじっくりと眺めた後、エリックは再び練習を始める────が、そう簡単には出来るようにはならず、二十回三十回と練習を繰り返した。

「もし物に魔法を纏わせることができたら、魔法の威力を底上げできると思うんだ。俺はこの後も一人で練習してみるから、ルカのところに行ってあげて。いろいろありがとな、コルネ」

 ただ練習を見守ることしかできず、手持無沙汰になった俺に気付いたエリックにそう言われ、俺はルカのところに行くことにした。
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