247 / 328
第十一章 サラの魔法道場編
第240話 サラの魔法道場 其の五
しおりを挟む
「ルカくん、あのさ──魔力結晶って知ってる?」
「もちろん知ってるけど……あのダンジョンから採れて魔法が使いやすくなるアレだよね?」
突然の質問にキョトンとするルカくん。部屋の案内をしていたのに全く関係ないことを訊かれたらびっくりもするか。
魔力結晶は基本的にダンジョンで直接採ってくる他に入手方法はない。ここの道場でもきっと持っている人は少ないはず。だとしたら、他のお弟子さんの目がない場所で渡した方がよさそうだ。
このタイミングを逃したらいつ二人きりになれるか分からない。渡すなら今ここでだろう。
「こないだ師匠とトレトで採ってきたんだけど、ルカくんに合いそうなのがあったからあげようと思って」
ほら、と鞄から持ってきた紫色の魔力結晶を取り出すと、ルカくんが固まる。
「な、なな……」
「な?」
ルカくんは俺の手の上でキラキラと輝く魔力結晶をプルプルと震えながら指差している──と思えば胸に手を当てて深呼吸を始める。何回か吸って吐いてを繰り返して落ち着きを取り戻したのかルカくんはゆっくりと話しだす。
「……なんでそんなもんが鞄から出てくるんだよ。コルネ……ま、魔力結晶といえばダンジョンでしか手に入らない──き、貴重品じゃないか!」
ひそひそ声でルカくんが驚いている。やはり壁越しに会話が隣の部屋に聞こえてしまうのを気にしているのだろうか。
「そうなんだけどこの魔力結晶は俺には合わないみたいだし、宝の持ち腐れになるよりは相性のよさそうなルカくんにと思って」
「たしかに毒系統メインの俺に合いそうなら逆にコルネには合わないかも…………それで、いくら払えばいい?」
ごくりと唾をのみながらスッと財布を取り出すルカくん。
「お金はいいよ。こないだの怒濤の討伐クエストでそれなりにあるからさ」
「いやいやいや、いくらお金を積んでも買えないようなものをタダでって──まあ俺もそんなに持ってるわけじゃないけどさ」
「じゃあ出世払いでいいよ。それにもうルカくんのお世話になってるわけだし」
「そ、そう? じゃあありがたくもらっておくよ」
丁寧に魔力結晶を受け取り、どこにしまうか悩んだ結果、そっと上着のポケットに入れるルカくん。さっきからずっと狼狽えっぱなしで見ていて面白いな。
「そういえば、どさくさに紛れて俺のことコルネって呼んでたよね?」
「え、あー…………言われてみればそうかも……じゃあ俺のことも呼び捨てでいいよ」
「そっか。荷物を置いたら食堂に行くんだっけ、ルカ」
久しぶりに会ったと思ったらいきなり呼び捨てで呼ぶことになるとはね、と笑いながら荷物を置いて俺たちは食堂へと向かった。
「もちろん知ってるけど……あのダンジョンから採れて魔法が使いやすくなるアレだよね?」
突然の質問にキョトンとするルカくん。部屋の案内をしていたのに全く関係ないことを訊かれたらびっくりもするか。
魔力結晶は基本的にダンジョンで直接採ってくる他に入手方法はない。ここの道場でもきっと持っている人は少ないはず。だとしたら、他のお弟子さんの目がない場所で渡した方がよさそうだ。
このタイミングを逃したらいつ二人きりになれるか分からない。渡すなら今ここでだろう。
「こないだ師匠とトレトで採ってきたんだけど、ルカくんに合いそうなのがあったからあげようと思って」
ほら、と鞄から持ってきた紫色の魔力結晶を取り出すと、ルカくんが固まる。
「な、なな……」
「な?」
ルカくんは俺の手の上でキラキラと輝く魔力結晶をプルプルと震えながら指差している──と思えば胸に手を当てて深呼吸を始める。何回か吸って吐いてを繰り返して落ち着きを取り戻したのかルカくんはゆっくりと話しだす。
「……なんでそんなもんが鞄から出てくるんだよ。コルネ……ま、魔力結晶といえばダンジョンでしか手に入らない──き、貴重品じゃないか!」
ひそひそ声でルカくんが驚いている。やはり壁越しに会話が隣の部屋に聞こえてしまうのを気にしているのだろうか。
「そうなんだけどこの魔力結晶は俺には合わないみたいだし、宝の持ち腐れになるよりは相性のよさそうなルカくんにと思って」
「たしかに毒系統メインの俺に合いそうなら逆にコルネには合わないかも…………それで、いくら払えばいい?」
ごくりと唾をのみながらスッと財布を取り出すルカくん。
「お金はいいよ。こないだの怒濤の討伐クエストでそれなりにあるからさ」
「いやいやいや、いくらお金を積んでも買えないようなものをタダでって──まあ俺もそんなに持ってるわけじゃないけどさ」
「じゃあ出世払いでいいよ。それにもうルカくんのお世話になってるわけだし」
「そ、そう? じゃあありがたくもらっておくよ」
丁寧に魔力結晶を受け取り、どこにしまうか悩んだ結果、そっと上着のポケットに入れるルカくん。さっきからずっと狼狽えっぱなしで見ていて面白いな。
「そういえば、どさくさに紛れて俺のことコルネって呼んでたよね?」
「え、あー…………言われてみればそうかも……じゃあ俺のことも呼び捨てでいいよ」
「そっか。荷物を置いたら食堂に行くんだっけ、ルカ」
久しぶりに会ったと思ったらいきなり呼び捨てで呼ぶことになるとはね、と笑いながら荷物を置いて俺たちは食堂へと向かった。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる