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第十一章 サラの魔法道場編

第236話 サラの魔法道場

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 Aランク昇格からひと月が経った。密かに期待していたエミルからの連絡は未だにない。

 もうどこかで死んでしまっているのか、それとも忙しくて会えないのか──案外、半年後くらいにひょっこり顔を出すかもしれない。生きていると信じて気長に待つとしよう。

 Aランクに上がったのはいいが、俺の生活は相変わらずでヴィレア以外のギルドには行っていない。そろそろAランクモンスターと闘わないとせっかくBランクモンスターと連戦して磨いた腕が鈍ってしまう。

「──というわけで、どこかにAランク相当のモンスターを倒しに行きたいんですが」
「たしかに冒険者にブランクは致命的だからね。でもAランクのモンスターが出るところはどこもすでにパーティが常駐してるから勝手に倒すと揉めるかもな……」

 ふむ、と考え込む師匠。常駐しているパーティは自由と引き換えにAランクモンスターの高額の討伐報酬を得ているわけだから、対価だけを掠め取られるのは面白くないだろう。

 そもそも事前に話を通したとしても向こうからすればモンスターの討伐を譲るメリットが何一つない。いきなり現れて完全な善意で譲ってくれというのはあまりに酷だ。

 そうなると最初から知り合いでもないと頼みづらい。他の常駐していないAランクパーティはどうしているのだろうか。

「そうだ、サラさんの道場に行ってみるのはどうかな?」

 サラさんの道場か。そういえば昔サラさんがここに来たことはあるが、こちらからは行ったことがない。

 サラさんの魔法道場といえば、レオンさんの剣術道場と双璧をなす一流の魔法使いしか入れないと名高い道場だ。そんなところに行けるチャンスとなれば逃すわけにはいかない。

 しかしなぜAランクモンスターの話をしていたのに、いきなりサラさんの道場が出たのだろうか。おそらく道場の近くにAランクモンスターが出るのだろうが、それなら別のパーティが常駐しているんじゃ……

「レオンさんとサラさんの道場はもともとAランク相当のモンスターの対応も兼ねて作られたんだ。だから二人の道場の近くにはAランクモンスターが出る場所があるけど、他のパーティはいないよ」

 不思議そうな顔をしていた俺から察したのか師匠が説明してくれる。なるほど、大きな道場を作るなら当然戦力が集まる。Aランクモンスターの対応も兼ねているというわけか。

「どうする? サラさんの道場に行くかい? 行くなら今から手紙書くけど──」
「行きます」
「う、うん──分かった。書いてくるね」

 しまった……楽しみすぎて、つい食い気味に答えてしまった。

 サラさんの道場にはきっと一流の魔法使いがたくさんいるのだ。山を丸ごと焼いたり、川ができるほど大量の水を出したりする人もいるんだろうか。そんなすごい魔法が見られると思うと今からワクワクが止まらない。
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