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第十章 Aランク昇格編

第216話 Aランクに昇格したら 其の二

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「きっと疲れてるだろうとは思うけど、ちょっとだけ──ちょっとだけ帰る前にAランク相当のモンスターと戦ってみない?」

 Aランク相当……たしかトレトのダンジョンにはAランク相当のモンスターがうじゃうじゃいると聞いた気がする。Aランク昇格直後の腕試しといったところか。

 しかしモンスターを全部倒してからAランクと認定されるまでには時間がかかるはず──冒険者証はBランクのままだが、それでもトレトのダンジョンには入れるんだろうか。

「Aランクの認定までには時間がかかると思うんですが……」
「あ、そこは大丈夫だよ。トレトのダンジョンには誰でも入れるから。死んでも自己責任っていう誓約書は書かされるけどね」

 聞けば、トレトのダンジョンは観光のために訪れる人も多いんだとか。入り口から少しだけ奥に入ってモンスターが出てきたらすぐ逃げる──ダンジョン内にいるモンスターがダンジョンから出てこられないのを利用してスリルを味わうらしい。

 スリルのために命まで懸けるとは物好きもいたものだ。相手がDランクくらいなら怪我だけで済むかもしれないが、Aランク相当ともなれば一撃でも死ぬ可能性は十分にある──まあ、だからこそ本物のスリルが味わえるわけだが。

「行きましょうか、トレトのダンジョン」
「やったあ! クエストと違って達成できるかを気にしなくてもいいし、腕試しにはもってこいだよね」
「でも師匠、目的は俺の腕試し以外にもあるんじゃないですか? ──魔力結晶とか」

 そう言いながら俺はニヤリと口の端を上げて、師匠の方を見る。

「ま、まあね。あそこのモンスターはみんな強いから奥まで行かなくてもでかいのが落ちるんだよね。今回はコルネくんがいるから奥まで入れるだろうし、きっとザクザクだろうね」

 まだ見ぬ魔力結晶を想像して、ウヘヘとお金を数える商人のような笑みを浮かべる師匠。ハッ──もしかして俺の最後の討伐クエストがトレトに決まったところから計画は始まっていたというのか?
いや、あれは二人でしっかりと話し合って決めたはず──待てよ、知らず知らずのうちにそうなるように誘導されていた可能性もある。俺は師匠の手のひらの上で踊らされていたというのか……! 師匠、恐るべし……

「それに、いつか行きたいってラムハのダンジョンに潜ったときに話しただろ? ちょうどトレトに行くんならこの機会にと思って」

 ……どうやら単なる俺の考えすぎだったようだ。
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