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第十章 Aランク昇格編
第206話 トレント
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ニザヘナで師匠とスイーツ巡りをした次の日、ぐっすり眠って疲れがすっかり取れたので、討伐クエストに向かうことにした。
今日の目標はトレントだ。トレントは木によく似たモンスターで、マンドラゴラと同様に普段は木に擬態している。
しかし今回はマンドラゴラのように探す必要はない。木の幹に大きな顔があるため、トレントは人間が見れば一目で分かるのだ。
顔は木目にも見えなくはないので、他のモンスターからしたら見分けがつかないのかもしれないが、人間から見れば明らかに不自然な木目が顔の形に並んでいるのだ──容易に見分けることができる。
ニザヘナでベリー、レクタムで小麦の栽培が盛んなことから分かるように、ここら一帯は昔から作物を育てるのに適した土地だ。だから居心地がいいのか植物系のモンスターも多い。
手早くギルドで討伐クエストを受け、早速山に入る。倒した後の討伐部位の回収用にノコギリも借りた。ニザヘナの山には多くの実のなる木が自生していると聞いていたが、本当にまだ青い実がそこかしこについている。
実が熟れる頃にクエストを受ければ木の実を取って食べることも可能かもしれないが、毒のあるものも相当数あるらしい。俺はそういうことには詳しくないので、食べない方がよさそうだ。
しばらく歩いているとそれっぽい木を見つける。こちら側には顔はついていないようだが、同じ色をした同じような枝ぶりの木を先ほど見た気がする。
トレントは本物の木のように太陽の方向に伸びるわけではないので、枝の生え方がほとんど変わらない。
ぐるっと後ろに回り込んでみるとやはり顔があった。バレていると勘付かれないようにちらりと見て確認した後は目線を逸らしつつ、何事もなかったかのようにもう一度顔のない方へと移動する。
基本的にトレントは擬態がバレていると思っていない限りは襲ってこないが、いざ襲ってくるとなるとめちゃくちゃ強い。Cランク以下の冒険者や冒険者以外の人は、もし出会ったら絶対に顔を見てはいけないと言われている。
気付かれないように静かに剣を抜き、氷魔法を纏わせる。トレントの討伐が氷系統の魔法がほぼ必須だ。たくさんの木々が生えている中で炎系統を使えば山火事の危険性があるし、
他の系統のうち一般的な魔法はトレントにダメージを与えることはできない。
また、本物の木と遜色ない硬さに剣は傷を与える程度で、致命傷には程遠い。
剣がしっかり冷えるのを少し待ってから、トレントに一気に斬りかかる。
「ンオオオオオオオオオオオ」
剣を伝って氷魔法がトレントを侵食する。剣が触れている周りからトレントの体表をゆっくりと氷が覆っていく。攻撃されていることに気付いたトレントは低い悲鳴を上げ、こちらを向かずに枝で剣が刺さっているあたりをガサガサと葉を揺らしながらはたいてくる。
そのスピードはさすがBランク相当だけあって、見た目によらず速い。剣が折れてしまう可能性も十分にある。少し食い込んでいた剣を抜き、今度は別の場所を切りつける。
そうすると、またそこからトレントの表面が凍りついていく。トレントが攻撃してくる。また別の場所を切りつける──この繰り返しだ。
表面がまだ白くなっていないところを埋めるように氷魔法を使っていくと、最初は薄茶に白の斑模様だったのが、白の方が多くなっていく。
それとともにトレントの動きもだんだんと鈍くなり、トレントに近づくと周りの空気も寒いくらいになってきた。
やがて全身が氷に覆われたトレントはピクピクとしばらく動いていたが、それも長くは続かず、動かなくなる。
念のためもう少し待ってから討伐部位である一番上の枝をノコギリで切れば、討伐完了だ。もう一体も不意打ちをきちんと決められれば、時間はかかるが苦戦はしなさそうだ。
今日の目標はトレントだ。トレントは木によく似たモンスターで、マンドラゴラと同様に普段は木に擬態している。
しかし今回はマンドラゴラのように探す必要はない。木の幹に大きな顔があるため、トレントは人間が見れば一目で分かるのだ。
顔は木目にも見えなくはないので、他のモンスターからしたら見分けがつかないのかもしれないが、人間から見れば明らかに不自然な木目が顔の形に並んでいるのだ──容易に見分けることができる。
ニザヘナでベリー、レクタムで小麦の栽培が盛んなことから分かるように、ここら一帯は昔から作物を育てるのに適した土地だ。だから居心地がいいのか植物系のモンスターも多い。
手早くギルドで討伐クエストを受け、早速山に入る。倒した後の討伐部位の回収用にノコギリも借りた。ニザヘナの山には多くの実のなる木が自生していると聞いていたが、本当にまだ青い実がそこかしこについている。
実が熟れる頃にクエストを受ければ木の実を取って食べることも可能かもしれないが、毒のあるものも相当数あるらしい。俺はそういうことには詳しくないので、食べない方がよさそうだ。
しばらく歩いているとそれっぽい木を見つける。こちら側には顔はついていないようだが、同じ色をした同じような枝ぶりの木を先ほど見た気がする。
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ぐるっと後ろに回り込んでみるとやはり顔があった。バレていると勘付かれないようにちらりと見て確認した後は目線を逸らしつつ、何事もなかったかのようにもう一度顔のない方へと移動する。
基本的にトレントは擬態がバレていると思っていない限りは襲ってこないが、いざ襲ってくるとなるとめちゃくちゃ強い。Cランク以下の冒険者や冒険者以外の人は、もし出会ったら絶対に顔を見てはいけないと言われている。
気付かれないように静かに剣を抜き、氷魔法を纏わせる。トレントの討伐が氷系統の魔法がほぼ必須だ。たくさんの木々が生えている中で炎系統を使えば山火事の危険性があるし、
他の系統のうち一般的な魔法はトレントにダメージを与えることはできない。
また、本物の木と遜色ない硬さに剣は傷を与える程度で、致命傷には程遠い。
剣がしっかり冷えるのを少し待ってから、トレントに一気に斬りかかる。
「ンオオオオオオオオオオオ」
剣を伝って氷魔法がトレントを侵食する。剣が触れている周りからトレントの体表をゆっくりと氷が覆っていく。攻撃されていることに気付いたトレントは低い悲鳴を上げ、こちらを向かずに枝で剣が刺さっているあたりをガサガサと葉を揺らしながらはたいてくる。
そのスピードはさすがBランク相当だけあって、見た目によらず速い。剣が折れてしまう可能性も十分にある。少し食い込んでいた剣を抜き、今度は別の場所を切りつける。
そうすると、またそこからトレントの表面が凍りついていく。トレントが攻撃してくる。また別の場所を切りつける──この繰り返しだ。
表面がまだ白くなっていないところを埋めるように氷魔法を使っていくと、最初は薄茶に白の斑模様だったのが、白の方が多くなっていく。
それとともにトレントの動きもだんだんと鈍くなり、トレントに近づくと周りの空気も寒いくらいになってきた。
やがて全身が氷に覆われたトレントはピクピクとしばらく動いていたが、それも長くは続かず、動かなくなる。
念のためもう少し待ってから討伐部位である一番上の枝をノコギリで切れば、討伐完了だ。もう一体も不意打ちをきちんと決められれば、時間はかかるが苦戦はしなさそうだ。
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