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第九章 ルミーヴィアへの旅編

第184話 レネとの邂逅 其の三

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 師匠がペラペラと俺のここがすごいなどと喋り、レネさんがそれにひたすら相槌を打ち、レネさんの中での俺の評価が青天井で上がっていく。それを聴いて恥ずかしくなっている俺を兄さんとマリーがニヤニヤしながら眺める──という状態はご飯を食べ終わるまで続いた。

 レネさんは師匠の言うことを全肯定するので、お皿が空っぽになったことに気付くまで師匠の流れるような話は全く止まらなかったのだ。

 師匠の話の中には魔法に関して俺が理解できないようなものがままあったが、レネさんは全てを理解しているようだった。きっとある境地に至らないと分からないものなのだろう。

 ご飯を食べ終えて、レネさんが回復魔法を見せてくれるというので、お店を出て宿屋のレネさんがとっている部屋に案内される。

 何もしていない状態では効いているか分からないので、少し手前から宿屋までみんなで全力疾走してきた。

「では、僭越ながら──ヒール、ヒール、ヒール」

 マリーに立て続けにヒールをかけていくレネさんに気負った様子はなく、気軽に喋るように言葉を紡いでいく。

 多少の差はあれど、どの魔法も例外なく集中力を必要とするはずだ。それなのにリラックスしきったかのような状態で三回も連続で魔法を発動させる──これだけでも、もうすでに彼女が異質であることが分かる。

 かけられたマリーは驚いて目を見開いている。マリーの感想を今か今かと待ち構えていると、驚きすぎたためになかなか言葉がまとまらないのだろう、少し間を置いてから話し始める。

「一回目のヒールで疲れが嘘みたいに消えて、二回目以降は特に変化はありませんでした。つまり一回目だけで回復したってことですよね……私のじゃ何回やってもこんなにスッキリとは取れないのに……」

 たしかに道中でマリーにかけてもらったときは体が軽くなった感覚はあったが、完全に疲れが吹っ飛ぶといったものではなかった。おそらくこれが力量の差なのだろう。

 この後、兄さんがマリーに便乗して回復魔法をかけてもらっていたので、俺と師匠も便乗してかけてもらった。

 すると全力疾走した疲れも、今日一日歩いてきた染み付いたような疲れも、まるで最初からなかったかのように消えてしまった。

 目の前でかけてもらったのにも関わらず、人間の業の範疇を超えた奇蹟としか思えなかった。しかも初級の「ヒール」をたった一回かけただけで──間違いなく、彼女も師匠のように俺より一つ上の景色を見ている人間なのだと確信した。
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